盆踊り・花火大会の日は売上が急増する一方で、店内オペレーションは崩れやすい日でもあります。現場で学んだ「やることの単純化・明確化」「飲料/酒/氷の集中補充」「種類を絞った店頭販売」など、実務のコツをまとめました。
夏の風物詩――盆踊りや花火大会。お祭り会場の近くにあるコンビニは、普段では考えられないほどの急激な売上増が見込めます。一方で、やみくもに手を広げるとオペレーションがパンクして、せっかくのチャンスを取りこぼすことにも。ここでは、私が現場で試行錯誤して掴んだ「夏祭り対応」の実務を共有します。
大前提:やることを単純化・明確化する
「売れるから何でもやる」は、お祭りの日ほど危険。最初からやることを絞り、担当を固定します。
- 担当の固定化:補充(飲料/酒/氷)・レジ・店頭販売・バックヤード(氷開封/予冷)に分割。
- 指示を一文に:「あなたは“飲料と氷”だけ」「あなたは“レジ待機のみ”」――迷わない言い方に統一。
- ムダ動線を断つ:可動什器を入口側へ、バックヤード⇄店頭の導線は最短で。
売上の柱は「飲料・お酒・氷」――ここに戦力を集中
お祭りのピークは飲料/お酒/氷に集中します。ここを落とすと全体が崩れます。
- 補充は専属:補充担当はレジに入りません。面(フェース)を空けないことが仕事。
- 氷の扱い:店頭に大きなバケツ氷+保冷剤。バックヤードは「開封済み氷のプール」を準備し回転を上げる。
- ビールは絞る:銘柄増やし過ぎは在庫と動線を悪化。定番を2〜3銘柄に絞って“冷えている量”を担保。
- 価格表示は大きく:氷・ドリンク・ビールの価格はA4札で店外から見える位置に。
ホットスナック/軽食は種類を絞る――スピード≒満足度
「フルラインナップ」は魅力的ですが、忙しい日ほど逆効果。種類を絞ると提供速度が上がり、結果的に満足度が上がります。
- 注力商材:フランク類、焼きそば、おにぎり(定番のみ)。
- 在庫リスク低減:絞ることで廃棄と在庫滞留を防ぐ。
- 動線短縮:店頭テーブルに「箸・おしぼり・ソース」一括配置。“取りに戻る”をゼロに。
店頭販売のコツ:見える・届く・すぐ買える
- 見える:のぼり/提灯/ジャイアントPOPで“氷/ドリンク/ビールあります”を遠目で訴求。
- 届く:店外クリップボードで臨時レジ(現金/QR簡易対応)を用意。レジ待ち回避で離脱ゼロへ。
- すぐ買える:ショッパー(袋)・保冷袋は手の届く位置。まとめ買いPOP(例:「ビール+氷で¥◯◯OFF」)で客単価UP。
声かけスクリプト(現場で使える短文)
- 「冷えてます!ビールと氷、すぐお渡しできます!」
- 「焼きそばできたてです。列の最後尾こちらです!」
- 「保冷袋あります。帰り道も冷たいままですよ!」
価格競争より“すぐ手に入る”価値が勝ちます。活気のある声かけは、そのまま購買意欲に直結します。
当日の役割分担(サンプル)
役割 | 主担当 | やること |
---|---|---|
補充 | A・B | 飲料/酒/氷を切らさない。面崩れNG。バックヤード開封→店頭補充をループ。 |
レジ | C | レジ離脱しない。袋詰めヘルプをコール。 |
店頭販売 | D | フランク/焼きそば/保冷袋。価格札と行列誘導。 |
バックヤード | E | 氷の開封、予冷、補充用台車の常時スタンバイ。 |
前日〜当日のチェックリスト
前日
- 氷・飲料・保冷袋の在庫確保(通常の2〜3倍目安)
- 可動什器を入口側へ/店頭POP準備/のぼり設置
- 人員追加(臨時シフト)/担当の固定化を全員に共有
当日朝
- バックヤードに開封済み氷プールを作成、予冷飲料を満載
- 店頭臨時レジ(現金・QR)セット、価格札はA4で外から見える位置
終了後
- 売れ筋・欠品・廃棄のログを簡易記録(次回の発注に直結)
- 店頭備品の片付け、導線復旧、スタッフケア(飲料支給など)
失敗からの学び:簡素化=満足度
過去、私は「いろいろ売ろう」と種類を増やし過ぎて、バックヤードとレジが混線し、在庫も滞留しました。 そこから得た教訓は、“やることを減らすほど、速く・正確に・丁寧になれる”ということ。 種類を絞ると提供が速くなり、列も短くなり、結果としてお客様の満足度は上がります。 これは信頼の積み重ねそのものです。
まとめ:夏祭りは「集中と簡素化」で勝つ
盆踊り・花火大会は、一夜で売上を押し上げる“特需の日”。 一方で、オペレーション崩壊リスクも最大です。 だからこそ、やることを絞って明確化し、飲料/酒/氷に戦力集中、ホットスナックは種類を絞ってスピード提供。 現場で徹底したこの基本が、売上とお客様の信頼を同時に高めてくれました。