年末年始も店を開ける理由|コンビニ経営者が毎年悩み、それでも続ける選択
年末年始。
多くの人にとっては、仕事から少し離れ、家族や大切な人と過ごす特別な時間です。
一方で、コンビニをはじめとする小売業では、
この時期も「通常営業」が当たり前のように続いています。
私が経営する店舗も、今年も年末年始を含め、通常通り営業を続けます。
ただし、これは決して
「何も考えずに続けている判断」ではありません。
むしろ年末が近づくにつれて、毎年のように自分自身に問いかけるテーマでもあります。

本当に、これでいいのか。
誰かに無理をさせていないか。
それでも店を開ける意味は、どこにあるのか。
年末年始の営業は、売上や数字の話だけでは語れません。
そこには、現場で支えてくれている人たちの負担や、経営者としての葛藤があります。
この記事では、
年末年始営業の裏側にある現実、
「営業したくない」と感じるオーナーが増えている理由、
それでも私が店を開け続ける理由について、正直に書いていきます。
そして最後に、
お客様にひとつだけ、お願いしたいことがあります。
コンビニ経営の現場から見える、
少しだけ違った年末年始の景色を、共有できればと思います。
年末年始営業の裏側にある現実

現場にかかる負担は、確実に存在する
年末年始の営業は、
現場で働く店長やスタッフに、少なからず負担をかけます。
普段であれば回るシフトも、
この時期は「人が集まりにくい」「急な欠勤が出やすい」など、
不確定要素が一気に増えます。
特に店長クラスになると、
- 年末年始のシフト調整
- 欠勤が出た際の穴埋め対応
- 発注数量の微調整
- 売場トラブル・クレーム対応
これらが一気に重なります。
数字には表れにくいですが、
精神的な消耗は、通常営業よりもはるかに大きいと感じています。
「この時期なら出勤できます」という声に救われている現実
一方で、年末年始だからこそ、
「この期間なら出勤できます」
「普段は無理ですが、少しでも力になりたいです」
そう言ってくれるスタッフがいるのも事実です。
学生、副業の方、長期休暇を活用したい人。
年末年始は、普段とは違う人材が動きやすい時期でもあります。
経営する側としては、
その存在に助けられているのは間違いありません。

「助かっている」と同時に、
「この人たちに無理をさせていないか」と考えてしまうのが本音です。
誰かの善意や努力の上に成り立っている営業である以上、
「当たり前」として受け取ることはできません。
経営する立場として、毎年自問すること
年末年始が近づくと、
私は毎年、同じ問いを自分に投げかけます。

本当に、この営業は必要なのか。
続けることで、誰かを消耗させていないか。
売上だけを見れば、
「開けた方がいい」という判断になるかもしれません。
しかし、数字では測れない負担や疲労を考えると、
簡単に割り切れる話ではありません。
この現実があるからこそ、
「年末年始は営業したくない」と感じるオーナーが増えているのだと思います。

「営業したくないオーナー」が増えている理由

感情論ではなく、構造的に見ても自然な流れ
本部社員や、他のオーナーと話をする中で、
ここ数年、よく耳にする言葉があります。
「年末年始は、正直もう営業したくない」
以前であれば、こうした声は少数派でした。
しかし今では、決して珍しい意見ではなくなっています。
これは決して、
「やる気がなくなった」「根性が足りない」
といった話ではありません。
むしろ、経営を続けてきたからこそ見えてきた、
現実的で冷静な判断だと感じています。
店を閉めても、固定費は止まらない
「それなら年末年始は閉めればいい」
そう言われることもあります。
しかし、実際に店を経営していると、
それが簡単な話ではないことが分かります。
- 家賃は、店を閉めても発生する
- 水道光熱費は完全には止められない
- 冷蔵・冷凍設備は稼働し続ける
つまり、
「営業しない=コストがかからない」
ではありません。
営業を止めても、
一定の固定費は確実に発生し続けます。
営業を止めることで生じる、別のリスク
さらに、年末年始に営業を止めることで、
別の問題も出てきます。
- 仕入れのリズムが崩れる
- 取引条件に影響が出る可能性がある
- 年明けの立ち上がりが重くなる
一度止めてしまうと、
再開時に余計な負荷がかかることも少なくありません。

「閉めた方が楽」と思えるほど、現実は単純ではないんです。
数字と人の間で、揺れ続ける判断
数字だけを見れば、
「営業を続けた方がいい」という結論になるケースもあります。
しかし、人の問題を考え始めると、
簡単には割り切れません。
・これ以上、現場を疲弊させていいのか
・自分自身も、この働き方を続けられるのか
そうした葛藤の中で、
「営業したくない」と感じるオーナーが増えているのは、
無理のない話だと思います。
それでもなお、
営業を続ける選択をするかどうかは、
オーナー一人ひとりの価値観に委ねられています。

それでも私が店を開け続ける理由

理由は、とてもシンプルです
ここまで読むと、
「それなら無理に営業しなくてもいいのでは?」
そう感じる方もいるかもしれません。
実際、私自身も毎年そう考えます。
それでも、年末年始も店を開ける理由は、
驚くほどシンプルです。

少しでも、地域の人たちのインフラでありたい
この想いがあるからです。
コンビニは、生活インフラの一部になっている
年末年始は、
飲食店が閉まっていたり、スーパーの営業時間が短縮されたりします。
そんな中で、
- 急に必要なものが出てきた
- 食事を用意できない日があった
- 帰省や仕事の途中で立ち寄る場所が必要だった
そうした場面で、
コンビニが「最後の受け皿」になることがあります。
大げさかもしれませんが、
誰かの生活を、ほんの少しだけ支えている。
その役割を、
完全に手放す決断が、私にはまだできません。
「仕方なく開けている」と「意味を持って開けている」の違い
正直に言えば、
世の中のすべてのオーナーが、
同じ想いで営業しているとは思っていません。
むしろ、
「仕方なく開けている」
という本音の方が、多いでしょう。
それ自体を否定するつもりはありません。
事情や背景は、人それぞれです。
ただ、自分が経営する店については、
できる限り、
- 意味を持って
- 納得した上で
- 覚悟を持って
開けていたいと思っています。

全員が同じ考えである必要はない。
でも、自分の店くらいは、納得して選びたい。
この選択が、正解かどうかは分からない
年末年始も営業するという選択が、
本当に正解なのか。
正直、それは分かりません。
もしかしたら、
- 無理をしているだけかもしれない
- 効率が悪い判断かもしれない
そう思う瞬間もあります。
それでも、
「自分なりに考え抜いた結果である」
という納得感だけは、持っていたいのです。

お客様に、ひとつだけお願いしたいこと

24時間365日は、決して当たり前ではありません
年末年始でも、
コンビニの明かりがついている。
それを見て、
特別な感情を抱かない方も多いと思います。
それ自体は、悪いことではありません。
ただ、ひとつだけ知っておいていただけたら嬉しいのは、
この営業は、決して「自動的に成り立っているもの」ではないということです。
そこには、
- 年末年始も立ち続けているスタッフ
- シフトを調整し続ける店長
- 判断を重ねている経営者
多くの人の選択と努力があります。
ほんの一言が、現場を救うことがあります
もし、年末年始にコンビニを利用された際には、
ほんの一言で構いません。
「ありがとうございます」
「お疲れさまです」
この言葉だけで、
救われる人がいます。
実際、現場に立っているスタッフは、
その一言で気持ちが軽くなることがあります。

この一言があるだけで、「やっていてよかった」と思える瞬間があります。
その一言が、次の一年につながっていく
誰かを大きく変える必要はありません。
ただ、
- 今ここで支えている人を認める
- 存在を肯定する
それだけでいいのだと思います。
その積み重ねが、
「来年も、もう少し頑張ってみよう」
「この仕事を続けてもいいかもしれない」
そんな気持ちにつながっていく。

まとめ

年末年始の営業は、
売上や効率だけで判断できるものではありません。
そこには、
- 現場の負担
- 経営者の葛藤
- 地域との関係
さまざまな要素が絡み合っています。
「営業を続ける」「営業を止める」
どちらが正解という話ではありません。
大切なのは、
自分なりに考え、納得して選んでいるかどうかだと思います。
もし年末年始に、
いつものコンビニを利用することがあれば、
その裏側を、ほんの少しだけ思い出してもらえたら嬉しいです。
そして、可能であれば、
感謝の一言を添えていただけたら。
それだけで、
この仕事を続ける理由が、また一つ増える気がしています。
店舗運営

