【現場エピソード】雪の日は「売上」ではなく「信頼」をつくる日
雪の日は、数字的には厳しい営業日ですが、
実はお客様との距離を縮めるチャンスでもあります。
寒い中でわざわざ足を運んでくださるお客様に、
「このお店に来てよかった」と思ってもらえる対応ができるかどうか。
それが、雪の日の営業を分ける最大のポイントです。
仕込みは「売上準備」ではなく「安心の準備」

多くの店舗が「雪の日は客数が少ない」と考えますが、
実際には、来てくださるお客様の購買意欲は非常に高い。
だからこそ、仕込み=売上の準備ではなく、安心の準備として考えることが大切です。

さすがにこのときばかりは、安い店を探して転々とするのは難しいですよね。
温かい商品がきちんと並んでいること、
売場がいつも通り整っていること。
その「当たり前」を保つための仕込みが、
雪の日の見えない信頼につながります。

売上を伸ばすためじゃなく、「お客様をガッカリさせないため」に仕込む。
その気持ちの違いが、翌日の売上を変えるんです。

声かけは「販売」ではなく「会話」のきっかけ

雪の日は客数が少ないからこそ、
一人ひとりのお客様とゆっくり向き合える時間が増えます。
「おでん温まってますよ」「中華まんいかがですか」
たった一言の声かけが、お客様の心を温めます。
その一言が「売上」になるというよりも、
また来ようという気持ちを生み出すきっかけになるのです。

京都旅行のとき、急に雨が降ってきて、慌ててコンビニに駆け込んで傘を買ったんです。
その時、店員さんが「急な雨で大変ですね。観光ですか?」って声をかけてくれて…。
びっくりしたけど、そんな些細な一言がすごく心に残りました。
観光地ならではかもしれませんが、声かけって本当に大事なんだなぁと感じました。

雪の日にこそ見える「チームの成熟度」

雪の日営業は、スタッフ同士の協力が不可欠。
外が荒れている日ほど、店内の雰囲気がそのままお客様に伝わります。
商品の仕込みや除雪、声かけの分担などを自然にできるチームは、
どんな悪天候でも温かい空気を保てます。
これはまさに、日々のチームワークづくりの成果です。

雪の日だからって、ただレジ前でぼーっと立っているよりも、
掃除や品出しをしっかりやっている姿を見せたほうがいいですよね。
そのほうが、お客様にもこのお店の人たちはちゃんとしてるなって思ってもらえると思います。

雪の日エピソード

雪の日の思い出といえば、忘れられない出来事があります。
あの日、私はまさに「身をもって学ぶ」という経験をしました──。
雪の日といえば、やっぱり「雪かき」です。
私自身、関東育ちのため雪にはまったく慣れておらず、雪かきの仕方も歩き方もわからない状態でした。
ある年の大雪の日、店の前に積もった雪をどうにかしようとスコップを持って奮闘していました。
道路の雪は車が通るたびにどんどん溶けていくのですが、
店の前や歩道の雪は全然溶けない。
そこで私は、少しずつ歩道の雪を道路側へと投げていました。
最初は順調で「この調子なら大丈夫だ」と思っていたのですが、
次第に雪解け水が溜まっていることに気づかず、作業を続けてしまったんです。
そのとき――夜道をスピードを出して走ってきた車が、
見事に私めがけて雪解け水を跳ね上げていきました。
頭の先から靴の中までびしょ濡れになり、
寒くて寒くて、本気で「帰りたいと思った」ほどです。
今では笑い話ですが、
あのとき「道路に雪を投げるのは良くない」ということを、身をもって学びました。
【まとめ】雪の日は「チームとお客様を温める日」

雪の日は、来店客が少ない分だけ、お客様との時間が長く・深くなる特別な日です。
普段は数十秒で終わるやりとりも、この日は少し長く続く。
温かい言葉を交わしたり、笑顔を届けたり――その一瞬一瞬が、数字では測れない「信頼の種」になります。
こうした日こそ、「売上を上げる日」ではなく「お客様の心を温める日」。
店頭で一人でも「助かった」「ありがとう」と言っていただけることが、
次の来店、そして次の季節の売上につながっていきます。
雪の日に売れた商品は翌日には忘れられるかもしれません。
でも、温かい対応を受けた記憶は、ずっとお客様の中に残ります。
スタッフ同士の声かけ、チームでの連携、そしてお客様へのひとこと。
それらすべてが“店の空気”をつくり、その空気がまたお客様を呼び寄せてくれます。
雪の日こそ、数字を追うのではなく、信頼と温度を積み重ねる日。
「今日もここで買ってよかった」
そう感じてもらえるお店づくりを、一つひとつ積み上げていきたいものです。

雪の日こそ、売上よりも「ありがとう」の数を増やす日。
その積み重ねが、春にはきっと「信頼の芽」になります。



