【体験記】星のや軽井沢で学ぶ「価格以上の価値提供」|接客と空間づくりのヒント
【体験記】星のや軽井沢で学ぶ「価格以上の価値提供」
――“高いけれど、納得できる”には理由がある
「この宿、高いけど一度は泊まってみたい」
そんな会話をしたことはないでしょうか。
今回訪れた「星のや軽井沢」は、まさにその“特別な価格帯”の宿。
正直、宿泊前は「高いな…」と思いました。
ですが、滞在を終えるころには「この価格なら納得」と心から感じていました。
その理由は、豪華な設備や食事だけではありません。
スタッフの一言、空間の設計、時間の流れ――あらゆる要素が“心の満足”につながっていたのです。
経営で置き換えれば、これはまさに
「価格を超える価値をどう提供するか」というテーマそのもの。
今回の記事では、
実際に宿泊して感じた“星のやのサービス設計”をもとに、
コンビニや小売の現場でも活かせる「価値提供の本質」を紐解いていきます。
高価格でも納得できる「価値提供」

――「高いけど、また来たい」と思わせる仕組み
星のや軽井沢の宿泊料金は、正直言って“安くはありません”。
私が泊まった時期(お盆期間)は、1泊1室あたりおよそ10万円前後。
宿泊前は「これは贅沢すぎるかな…」と少し躊躇したほどです。
しかし、実際に滞在してみると、その印象は一変しました。
チェックアウトの瞬間には、「この価格なら納得」どころか「むしろ安く感じる」ほどの満足感が残りました。
宿泊料金の整理
今回の「星のや軽井沢」宿泊料金を整理すると、以下のようになりました。
1室目(大人2名+6歳以下1名)
- 2025/08/14:大人 ¥65,853 × 2名 + 子供(6歳以下) ¥65,703 × 1名
- 2025/08/15:大人 ¥60,045 × 2名 + 子供(6歳以下) ¥59,895 × 1名
- 合計:¥377,394
2室目(大人2名)
- 2025/08/14:大人 ¥94,348 × 2名
- 2025/08/15:大人 ¥85,636 × 2名
- 合計:¥359,968
総合計
¥737,362(税込)
繁忙期ということもあり、かなりの高額ではありますが、実際に体験してみると「価格に見合った満足感」がありました。 このように数字を整理すると、経営判断として「高価格でも価値が提供できれば納得される」という学びを改めて実感できます。

1室目 私と嫁様とお娘様
2室目 嫁様ご両親
経営に置き換えると見えてくること
店舗経営においても同じです。
お客様は、単に「安いから」ではなく、「気持ちよく買えたから」「ここで買ってよかったから」という理由で選びます。
つまり、価格を下げるよりも、
価格を超える“納得の体験”を設計することこそ、経営の価値創造です。

「価格を下げるより、納得を上げる」
これは星のやでの滞在を通じて、私が一番強く感じたことです。
コンビニや店舗運営でも、“モノの提供”より“気持ちの提供”が差を生みます。
お客様の満足は、商品よりも「空気」で決まる。
そんな経営の原点を改めて感じました。

小さな気配りが大きな満足に変わる

――「気づいてくれた」が、「また来たい」を生む
「おもちゃ王国、楽しめましたか?」
言葉としては一言。
でも、その一言に「覚えてくれていた」「気にかけてくれていた」という温かさがあり、
まるで“顔なじみのお店に戻ってきたような安心感”が生まれたのです。
“察してくれた”の積み重ねが、信頼を生む
宿泊中、スタッフが子どもの貼っていた「迷子シール」をそっと見つけて、
「これ、つけたままになっていましたね😊」
と声をかけてくれました。
その時、「見られて恥ずかしい」ではなく、
「気づいてもらえてうれしい」という気持ちが自然と湧いてきました。
こうした“気配り”は、決して特別なことではありません。
でも、お客様が言葉にしない不安や恥ずかしさを先回りして受け止めることで、
「ここでは安心して過ごせる」という信頼が育っていくのです。
経営に置き換えると
店舗経営でも同じことが言えます。
- 「袋はご利用ですか?」ではなく、「重そうなので二重にしましょうか?」
- 「ポイントカードありますか?」ではなく、「前回のポイント、今日お使いになりますか?」
この“1歩先の声かけ”が、
お客様の心理に「気づいてくれた」という満足感を生みます。

「ありがとう」を言ってもらう接客ではなく、
「気づいてくれてありがとう」と言われる接客を目指したい。
その違いが、“また来たい店”と“近いから行く店”を分けていると思います。

心地よい空間を演出する工夫

――「何もしていないのに、満たされる」と感じる仕組み
敷地が広い星のや軽井沢では、宿泊棟からレストランや温泉までの移動に送迎車を利用します。
その車内でまず印象的だったのが、“音の演出”でした。
窓の外には軽井沢の自然が広がり、車内にはBGMとして穏やかなピアノの音色。
ドライバーの方が静かに微笑みながら、こんな一言を添えました。
「今日は風が気持ちいいですよ。昨日より少し涼しいですね。」
それだけの言葉なのに、
“移動時間”が“体験の一部”に変わったように感じました。



うまかったー。量も多かったー笑
「心地よさ」は“無駄のない安心感”から生まれる
宿泊中、どこに行っても“落ち着く”という共通点がありました。
それは、豪華さではなく「無駄がないこと」による安心感です。
- 案内表示は最小限、文字よりも感覚的にわかる動線
- 装飾は少なく、自然光と木の香りが心を整える
- スタッフが立っていない場所でも感じる安心感
まるで「ここにいていいんだ」と心が許されるような空間でした。
この“許される感覚”こそ、
星のやが生み出す“心地よさの本質”=心理的安全性だと感じます。
経営に置き換えると
店舗経営においても、「空間」は単なる内装ではなく“無言の接客”です。
- 通路が狭い → 無意識にストレスを感じる
- 照明が強すぎる → 滞在時間が短くなる
- 匂いや音が快い → 「また来たい」と記憶される
つまり、空間デザインは顧客体験そのもの。
お客様が「落ち着く」「また寄りたい」と思う店は、空気づくりに成功しています。

店舗でも、BGMや照明、スタッフの立ち位置など、
“お客様が安心して選べる空気”を意識すると雰囲気が一変します。
星のや軽井沢の空間づくりは、接客せずとも“優しさが伝わる環境設計”でした。

大自然と調和した空間デザイン

――“何もしない贅沢”を体験設計に変える
星のや軽井沢で最も印象に残ったのは、
豪華さや非日常感よりも、“自然との一体感”でした。
池のほとりに立つ客室、風にそよぐ木々、
鳥の声が遠くに聞こえるだけの静寂。
どこを切り取っても「自然が主役」で、
人の存在はその“流れを邪魔しないように配置されている”。
まるで「空間そのものが呼吸している」ような感覚を覚えました。
“足さない設計”が生み出す、心の余白
客室内は驚くほどシンプル。
過剰な装飾や案内プレートは一切なく、
そこにあるのは木の香りと自然光だけ。
最初は「少し物足りないかも」と感じましたが、
時間が経つにつれて、“何もないことの豊かさ”に気づかされました。
- 光の差し込み方が時間ごとに変わる
- 音が少ないから、家族の会話が自然に増える
- 無駄がないから、心が整理されていく
この空間設計は、単なるミニマルデザインではなく、
“人が自然体でいられる余白”を意図的につくっているのだと思いました。
経営でいえば、「余白=信頼」
経営の現場でも同じです。
店舗やサービスに“余白”があることで、
お客様は「選択の余地」や「安心して考える時間」を得られます。
- 話しかけすぎない接客
- 商品を詰め込みすぎない陳列
- 決済や導線をシンプルにして“迷わない設計”にする
つまり、「足さないこと」もサービスの一部。
それは、顧客に“信頼して任せる余白”を渡すという発想です。
“人が自然と会話する場所”のデザイン
宿泊中、池のテラスで読書をしていると、
見知らぬ宿泊者の方が「その本、面白いですか?」と声をかけてくれました。
場所が人の距離を自然に近づける――
この体験を通じて、「空間設計は会話の設計でもある」と気づきました。
星のやのテラスや回廊は、
“すれ違いざまに自然と会話が生まれる角度”で作られています。
経営に置き換えると
店舗経営における「空間の余白」は、
お客様が“自分で考える時間”を持てるスペース。
- POPを詰め込みすぎず、商品の背景を想像できる余地をつくる
- 混雑時も“立ち止まれる場所”を用意する
- レジ前に一呼吸おける距離を保つ
こうした「考えるための余白」=安心できる場のデザインが、
リピート率や顧客滞在時間に確実に影響します。

経営とは、足すことよりも“引く勇気”の連続だと思います。
無駄を省くことでスタッフもお客様も呼吸しやすくなる。
星のや軽井沢の空間づくりは、“静けさが伝わる経営”そのものでした。
高い価値がもたらす「客層」と「空気感」

――“価格で区別”ではなく、“価値で共感”する世界
星のや軽井沢に滞在してまず感じたのは、
「高級宿=静かで格式高い場所」という先入観が良い意味で裏切られたことでした。
そこにいたのは、
高級ブランドに囲まれた人々でも、ビジネススーツの集団でもありません。
“静かに豊かさを楽しんでいる人たち”でした。
本を読む人、家族とゆっくり散歩する人、
スマホを置いて、ただ風を感じている人。
それぞれが違う目的で来ているのに、空気は不思議と調和していました。
実際に宿泊して感じたのは、空間そのものが特別であるだけでなく、お客様同士の自然な交流や挨拶が生まれる雰囲気があったことです。 星のや軽井沢はペット同伴も可能で、ペット専用のスカーフなども用意されており、可愛くコーディネートされた姿をきっかけに、飼い主同士の会話が生まれる場面もありました。
経営に置き換えると:「価格=フィルターデザイン」
この考え方は、店舗経営にもそのまま当てはまります。
価格を“お客様を遠ざける線引き”と考えると、
「高い=売れない」「安い=集まる」という単純な発想に陥ります。
しかし本来、価格は“誰に価値を届けたいか”を明確にするフィルターです。
- 安さを求める層 → 「手軽さ・スピード」重視の設計
- 体験や品質を求める層 → 「安心・特別感」重視の設計
つまり、価格は「ターゲットの明示」であり、顧客選別ではない。
この考えを持つことで、価格設定は“戦略”に変わります。
客層がつくる「空気の質」
宿泊中、印象的だったのは“静けさの統一感”です。
誰も注意するわけでも、張り紙があるわけでもないのに、
みんな自然と声のトーンや動きを合わせている。
それは、「この空間を大切にしたい」という気持ちが共有されているから。
この“空気の質”を保っているのは、
スタッフではなくお客様同士のマナーと尊重でした。
経営でも同じように、
“誰を集めるか”で、職場や店舗の空気は決まる。
価格はその入口を整えるための“文化設計”なのです。

星のやの価格帯には“高い理由”が明確に存在していました。
それは「贅沢な空間」ではなく、「人の在り方が整う場」を提供しているから。
店舗でも同じで、「安さ」より「安心」「共感」に価値を感じる層を育てていくと、
価格ではなく“信頼”で選ばれる経営に変わっていきます。

まとめ:価格以上の価値をつくる「心の設計」
――“心を満たす体験”が、数字を超える価値を生む
星のや軽井沢の滞在を通して、改めて感じたこと。
それは、「価格を決めるのは経営者だが、価値を決めるのはお客様」ということです。
高い宿泊費に納得できたのは、
豪華な設備や非日常感ではなく、
一つひとつの“心を込めた設計”が体験として積み重なっていたからでした。
- 会話を覚えてくれていたスタッフの優しさ
- 余白のある空間が生む安心感
- 静かに流れる時間の中で感じる「自分の豊かさ」
これらがすべて合わさって、
「この価格なら、もう一度来たい」と思える“心の満足”が生まれていたのです。
🧩 「価値を設計する」とは、“心の流れ”をデザインすること
価格以上の価値を提供するためには、
商品の“スペック”や“立地”ではなく、お客様の心の流れに注目すること。
| 観点 | 星のや軽井沢での体験 | 経営への応用 |
|---|---|---|
| 入口 | 到着時の会話や笑顔で安心感を与える | 初来店時に“人の温度”で印象を残す |
| 滞在中 | 空間の静けさと気配りが満足を醸成 | 店内の空気・接客・動線でストレスを減らす |
| 退店後 | 「また来たい」と思わせる余韻の設計 | 帰り際・SNS・メッセージで“記憶の体験”を残す |
このように、“心の旅路”を意識したサービス設計ができると、
お客様は「買った」ではなく「体験した」と感じます。
それが“価格を超える満足”を生む仕組みです。

経営を続けていると、「価格」「コスト」「売上」という言葉に意識が向きがちです。
でも、数字を動かすのは“人の心”です。
星のや軽井沢の滞在で学んだのは、
「売る力」ではなく「満たす力」の大切さ。
お客様の心を満たすことができれば、価格の議論は自然と消えていきます。
今回の宿泊中に読んだ一冊
星のや軽井沢での滞在中、時間を見つけて読んだ本があります。 それがこちらの『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』(水瀬ケンイチ著)です。
著者が25年間にわたり実践してきたインデックス投資の道のりをまとめた内容で、 「長期・分散・低コスト」の大切さを改めて学ぶことができました。 経営者として日々の店舗運営に忙しい中でも、長期的な視点で資産を育てるヒントが得られる一冊です。
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