【経営の基本】年間を通して外注費をかけておきたいサービスとは?社会保険労務士・弁護士編
こんにちは、はなパパです。
前回は、年間を通して外注費をかけておきたいサービスの中でも最優先すべき「税理士」についてお話ししました。 今回はその続編として、同じく経営において重要度の高い社会保険労務士と弁護士について解説します。
社会保険労務士(社労士)が必要な理由
社会保険労務士は、労務管理と社会保険関連業務の専門家です。 店舗経営において人を雇う場合、雇用契約や給与計算、社会保険の手続きなど、専門的かつ法律遵守が求められる業務が発生します。
社労士を入れるメリット
- 労務トラブルの予防:就業規則の整備や雇用契約書の作成支援
- 社会保険・労働保険手続きの代行:入退社や産休・育休などの申請業務をスムーズに
- 助成金・補助金の活用:制度や条件を熟知しているため申請チャンスを逃さない
特に人手不足や採用難が続く現在では、従業員の定着と安心できる労働環境の構築は店舗の安定経営に直結します。 労務管理を専門家に任せることで、経営者は現場運営に集中できるのです。
社労士の役割と必要性について
前回の記事(税理士編)でも触れましたが、社会保険労務士(社労士)の主な仕事は、社会保険料や労働保険料などを正確に申告し、手続きを補助することです。 これは法律や制度に基づいた業務であり、基本的に社会保険料そのものを削減する方法を提案してくれるわけではありません。
もちろん、雇用形態や労務管理の方法によって結果的に保険料負担が変わるケースはありますが、社労士の業務はあくまで正しい手続きと法令遵守が中心です。
また、社労士はすべての事業者に必ず必要なわけではありません。 例えば、従業員が少なく、労務管理や社会保険の手続きが自分で十分対応できる場合は、社労士に依頼しなくても運営は可能です。
一方で、従業員数が多い店舗や、採用・退職・休職などの人事手続きが頻繁に発生する環境では、社労士の存在が経営者の負担を大きく減らすことになります。
社労士を依頼すべきタイミングと判断基準
では、どのような場合に社会保険労務士への依頼を検討すべきでしょうか。 ポイントは「自社の規模」と「労務管理の負担度」です。
- 従業員数が5人以上になったとき
人数が増えると、入退社手続き、給与計算、社会保険の届出が増加します。法令遵守の観点からも専門家の関与が安心です。 - 採用や退職、休職など人事変動が多いとき
イレギュラー対応が増えると、そのたびに制度や手続きを調べる手間がかかります。 - 就業規則や雇用契約書を整備・改定したいとき
法改正や労務トラブル防止のための見直しは、社労士が得意とする分野です。 - 助成金や補助金の活用を検討しているとき
助成金は条件や申請期限が細かく、社労士の知識が活きます。
逆に、従業員が家族のみで雇用契約が発生しない場合や、手続きを完全に自社で管理できている場合は、無理に社労士と契約する必要はありません。
重要なのは、「人事・労務の作業に時間を取られて本業が圧迫されているかどうか」という視点です。 その負担が大きいと感じたら、社労士への依頼を検討するタイミングと言えるでしょう。
弁護士が必要な理由
弁護士は、法律トラブルや契約関係の最終的な盾です。 店舗経営をしていると、取引先との契約やクレーム対応、場合によっては労働問題や債権回収など、法的な判断が必要な場面が出てきます。
顧問弁護士を持つメリット
- 契約リスクの軽減:契約書の事前チェックや作成サポート
- トラブルの早期解決:問題が大きくなる前に適切な対応が可能
- 交渉力の強化:法的根拠をもとに有利に交渉を進められる
弁護士は「何かあった時」にしか必要ないと思われがちですが、実は予防的に関わる方が効果が高いです。 トラブル発生後は解決までに時間も費用もかかるため、契約段階や初期対応でのアドバイスが経営リスクを大きく減らします。
弁護士を依頼すべきタイミングと判断基準
弁護士は「何かトラブルが発生したときの最後の砦」というイメージがありますが、実際は予防的に関わってもらう方が効果的です。 特に店舗経営では、契約や顧客対応、取引先との関係など、法的判断が必要になる場面は想像以上に多くあります。
- 重要な契約書を結ぶ前
取引先や業務委託など、契約内容に将来的なリスクがないかを事前にチェックしてもらう。 - クレームやトラブルが長期化しそうなとき
感情的なやり取りになる前に、法的根拠に基づいた対応方針を固める。 - 売掛金や債権の回収が必要なとき
交渉や内容証明、法的手続きを通して回収の可能性を高める。 - 労働問題の解決が難しいと感じたとき
解雇や労働条件の変更など、法的リスクが伴う場面での判断支援。
また、顧問契約を結んでおくことで、相談や契約書チェックが迅速に行えるというメリットもあります。 ただし、費用面や利用頻度を考え、必要に応じてスポット契約を活用する方法もあります。
判断基準は、「法的判断が必要な場面で、自分だけでは正しい対応ができないと感じたとき」です。 その段階までに相談しておけば、トラブルの拡大を未然に防げる可能性が高まります。
労務問題は経営者側が不利になりやすい現実
経営の中でも、特に労務問題は非常に難しい分野です。 従業員とのトラブルが裁判や労働審判にまで発展した場合、経営者側が不利な立場になるケースが多いのが現実です。
その理由のひとつは、労働基準法や関連法令が「労働者保護」を前提に作られているためです。 解雇や労働条件の変更など、雇用主側の行動には厳格なルールや手続きが求められ、少しの不備でも違法と判断される可能性があります。
また、日常的な指導や評価、勤務態度への注意なども、状況や言葉選びを誤るとパワハラ認定されるリスクがあります。 このため、経営者が正しいと思って行った対応が、結果的に不利な証拠として扱われてしまうことも少なくありません。
だからこそ、労務に関する問題は初期段階から社労士や弁護士と連携し、記録や証拠を残しながら対応することが重要です。 「問題が大きくなってから」ではなく、兆候が見えた時点で専門家に相談することで、リスクを最小限に抑えることができます。
従業員が「お店のため」「オーナーのため」「社長のため」に働いてくれる環境づくりは、経営において非常に大切です。 そして、その気持ちを信じてあげたいというのも本音です。
しかし同時に、経営者としては“万が一”に備えた防御を高めておくことも忘れてはいけません。 信頼関係は大前提ですが、それだけに依存してしまうと、思わぬトラブルが発生した際に対応が後手に回る可能性があります。
「従業員を信じること」と「リスクに備えること」は両立できます。 だからこそ、日頃からルールや記録を整え、専門家と連携しながら、信頼を守るための防御力を高めておくことが重要です。
まとめ:経営の安心感を外部の力で作る
税理士、社会保険労務士、弁護士は、それぞれ専門分野は異なりますが、共通しているのは経営者が苦手な分野をカバーし、リスクを減らす存在であることです。
労務、税務、法務という3つの柱を外部の専門家と連携して固めておけば、経営者は本業に集中でき、長期的な店舗運営の安定につながります。
外注費はコストではなく、店舗の成長と安全を守るための投資です。 まずは自社の課題や弱点を洗い出し、必要な分野から専門家との関係を築いていきましょう。
では、また現場で会いましょう!