【発注の落とし穴】売れている商品を減らしていませんか?本当に見るべきは廃棄率
発注をしていると、ふとこんな瞬間はありませんか?
「この商品、1週間で100個も売れてるけど、 廃棄も出てるから少し下げた方がいいかな」
発注業務をしている多くの方が、 一度はこの判断をしたことがあると思います。
売れている。 数が多い。 廃棄も出ている。
だから「減らす」―― 一見、とても正しい判断に見えます。
ですが、ここに発注でよくある大きな落とし穴があります。
実は、発注精度を左右しているのは
「どれだけ売れたか(量)」ではなく、 「どれくらいの確率で廃棄になっているか」
つまり、廃棄率です。
この視点を持たないまま発注を続けると、
- 売れている商品の発注を減らしてしまう
- 結果として欠品が増える
- 売上も粗利も、じわじわ落ちていく
という、気づきにくい悪循環に入ってしまいます。

発注で一番怖いのは、 「間違っていること」より、 「正しそうに見える判断」を続けてしまうこと。
この記事では、
- なぜ発注をしていると「売れている商品」を減らしたくなるのか
- 数字の見方を間違えると、どんなズレが起きるのか
- 本当に見るべき指標は何なのか
を、コンビニの現場目線で整理していきます。
発注は「減らす作業」ではありません。 精度を上げる作業です。
その感覚を、ここから一緒に確認していきましょう。
発注をしていると「売れている商品」を減らしたくなる理由

発注業務をしていると、人はどうしても 「数字が大きい商品」に目がいきます。
特に目に入りやすいのが、
- 販売数が多い商品
- 廃棄数が目立つ商品
です。たとえば、
- 1週間で100個売れて、廃棄が5個出ている商品
- 1週間で20個しか売れていない商品
この2つを見ると、感覚的にはこう思いがちです。
「100個売れていて、廃棄も出てる方がリスク高そうだな」
だから、「売れている方を少し下げておこう」という判断になりやすいのです。
人は「量」でリスクを判断してしまう
これは経験や能力の問題ではなく、 人の思考のクセです。
廃棄が
- 5個出ている
- 3個出ている
と聞くと、「多い」「怖い」と感じてしまいます。
一方で、
- あまり売れていない
- 目立った廃棄が出ていない
商品は、「なんとなく安全そう」に見えてしまいます。
その結果、起きやすい発注判断
この感覚で発注を続けると、 現場では次のような判断が起こりがちです。
- 売れている商品の発注数を下げる
- 動きの鈍い商品は現状維持
結果として、
- 売れている商品の欠品が増える
- チャンスロスが増える
- 売上・粗利がじわじわ落ちる
という、気づきにくいズレが生まれます。

発注で一番やりがちなのは、 「よく動く主力」を守りに入って削ってしまうこと。
問題は「売れていること」ではない
ここで大事なのは、売れている商品に廃棄が出ること自体は、異常ではないという視点です。
むしろ、よく売れて、よく回転している商品ほど、多少の廃棄は出やすいのが現実です。
この主役を、「廃棄が出ているから」という理由だけで削ってしまうことが、発注の一番の落とし穴です。
次の章では、数字で見ると、なぜこの判断がズレているのかを、具体的な例で整理していきます。

数で見ると判断を誤る|本当に重要なのはパーセンテージ

ここで一度、感覚ではなく 数字を整理して考えてみましょう。
発注で判断を誤りやすい原因は、「量(個数)」だけで見てしまうことにあります。
よくある2つの商品を比べてみる
例えば、こんな2つの商品があったとします。
| 商品 | 週間販売数 | 廃棄数 | 廃棄率 |
|---|---|---|---|
| A商品 | 100個 | 5個 | 5% |
| B商品 | 20個 | 5個 | 25% |
こうして並べると、違いがはっきりします。
- A商品:発注精度は高く、ほぼ狙い通り
- B商品:4回に1回は廃棄になる発注
本当に調整すべきなのは、どちらでしょうか。
「廃棄が多い=危険」は思い込み
A商品の廃棄は5個。 数字だけを見ると、確かに多く見えます。
ですが、100個売れて5個廃棄なら、100個はきちんと売れているということでもあります。
一方、B商品はどうでしょうか。
25個中5個廃棄。 これは、かなり高い確率で外している発注です。

廃棄が「目立つ」商品と、 廃棄が「危険な」商品は別物。
量だけで判断すると起きるズレ
もし、量だけを見て判断すると、 現場ではこんなことが起こります。
- A商品を減らす → 欠品が出やすくなる
- B商品はそのまま → 廃棄体質が改善されない
結果として、
- 売上チャンスを逃す
- 粗利が伸びない
- 「なんとなく数字が悪い」状態になる
という、じわじわ効くダメージが残ります。
売れている商品に廃棄が出るのは「正常」
ここで、もう一つ大事な視点です。
売れている商品、回転の速い商品に 多少の廃棄が出るのは、ある意味「正常」です。
なぜなら、
- 欠品を避けるために多めに持つ
- ピークに合わせて準備する
という動きが入るからです。問題なのは、
- 売れていないのに廃棄が出続ける
- 毎週似たような廃棄が出る
商品です。

「廃棄ゼロ」を目指しすぎると、 売場は一気に弱くなる。
見るべき数字を変えるだけで、発注は安定する
発注精度を上げたいなら、
- 数(個数)
- 金額
だけでなく、廃棄率(パーセンテージ)を見る癖をつけてください。
数字の見方を変えるだけで、
- 削るべき商品
- 守るべき商品
が、はっきり分かれるようになります。
次の章では、「売れている商品に廃棄が出るのはなぜ問題ないのか」その理由を、もう一段深く整理していきます。

売れている商品に廃棄が出るのは「正常」

ここまで読んで、
「でも、売れている商品で廃棄が出るのって、 やっぱり良くないんじゃないの?」
と感じた方もいるかもしれません。
ですが、結論から言うと、売れている商品に多少の廃棄が出るのは、ある意味“正常”です。
売れている商品は「攻めた発注」をしている
回転の速い商品、主力商品は、
- 欠品させたくない
- ピークを逃したくない
という理由から、あらかじめ少し多めに持つ発注になりやすいものです。
その結果として、
- 売り切れる日もある
- 少し残る日もある
というブレが生まれます。
廃棄を恐れすぎると、別の損失が生まれる
「廃棄を減らしたい」という気持ちは、とても自然です。
ですが、廃棄を恐れすぎると、
- 発注が守りに入ってしまう
- 欠品が増える
- 売れるチャンスを逃す
という、別の損失が生まれます。
この損失は、数字として見えにくいのが厄介なところです。

廃棄は目に見える。 欠品ロスは、気づきにくい。
「廃棄ゼロ」を目指すと、売場は弱くなる
理論上、廃棄をゼロにすることは可能です。
ただし、その場合は、
- 常にギリギリの発注
- ピーク対応ができない
- 売場に余裕がない
状態になります。結果として、
- 「いつ来ても欲しい商品がない」
- 「選ぶ楽しさがない」
売場になってしまいます。
正常な廃棄と、危険な廃棄は違う
ここで、整理しておきたいのがこの違いです。
正常な廃棄
- 売れている商品に、たまに出る廃棄
- 週によって出たり出なかったりする
- 廃棄率が低い
注意すべき廃棄
- 売れていない商品に出る廃棄
- 毎週似たような廃棄が出る
- 廃棄率が高い
後者は、一時的なミスではなく、発注判断そのものがズレているサインです。

本当に怖いのは、 「動かない商品の廃棄」。
「売れている商品」は守るべき存在
売れている商品は、店の売上を支えている主役です。
主役を削る前に、
- 本当に廃棄率は高いのか
- 数字で見て危険なのか
を、一度冷静に確認してみてください。
次の章では、本当に危険なのはどんな廃棄なのか。つまり、「動かない商品の廃棄」について、整理していきます。

本当に危険なのは「動かない商品の廃棄」

売れている商品に多少の廃棄が出るのは、ある意味「正常」。
では、発注で本当に注意すべき廃棄とは何でしょうか。
それは、「そもそも動いていない商品の廃棄」です。
動かない商品に出る廃棄は「構造的」
動かない商品の廃棄には、こんな特徴があります。
- 売行きが鈍い
- 毎週、似たような数が残る
- 曜日や天候が変わっても動かない
これは、たまたまの読み違いではありません。発注判断そのものがズレているサインです。
動かない商品は、売場を静かに弱らせる
動かない商品が残り続けると、
- 売場の鮮度が落ちる
- 回転が悪くなる
- 発注全体のリズムが崩れる
という影響が出てきます。
しかもこの影響は、一気に数字に出ないのが厄介なところです。

動かない商品は、 気づかないうちに売場の体力を削っていく。
「毎週出る廃棄」は黄色信号
発注を見直す際に、 一つの目安になるのがこれです。
もし、
- 毎週、ほぼ同じ数が残る
- 改善しても結果が変わらない
状態なら、「数を減らす」以外の判断も必要になります。
- そもそも扱う種類が合っていない
- 売場での役割が合っていない
- 今の客層とズレている
といった視点です。
売れていない商品を放置すると起きること
動かない商品を、「とりあえず今まで通り」で続けると、発注はこうなります。
- 売れている商品を削る
- 動かない商品は維持
結果として、
- 主力が弱る
- 廃棄体質は変わらない
- 全体がじわじわ落ちる
という、最悪の組み合わせになります。

頭で理解してても、意外とやっちゃってるんです。
廃棄を見るときは「商品別」に考える
廃棄を減らしたいときほど、全体の廃棄量ではなく、商品ごとの廃棄の出方を見るようにしてください。
そうすると、
- 守るべき商品
- 見直すべき商品
が、はっきり分かれます。

発注は「全部を均等に見る」仕事じゃない。 メリハリをつける仕事です。
次の章では、発注を「減らす作業」ではなく 「精度を上げる作業」に変える考え方について、まとめていきます。

発注は「減らす作業」ではなく「精度を上げる作業」

発注というと、「廃棄を減らすこと」が、目的になりがちです。
もちろん、廃棄を減らすことは大切です。 ですが、そこだけに意識が向くと、 発注の本質を見失います。
発注の本当の目的は、売れる商品を、売れる状態で並べ続けることです。
減らす発注は「守り」、精度を上げる発注は「攻め」
廃棄を怖がって減らす発注は、
- 欠品が増えやすい
- 売場が弱くなる
- 売上の天井が下がる
というリスクを抱えます。一方、精度を上げる発注は、
- 売れる商品をしっかり押さえる
- 売れない商品を見極める
- 全体のバランスを整える
という考え方です。
精度を上げるために見るべき3つの視点
発注の精度を上げるために、 特に意識してほしいのが次の3つです。
- 廃棄率(量ではなくパーセンテージ)
- 回転(売れるスピード)
- 再現性(毎週同じ動きをするか)
この3つをセットで見ると、
- 守る商品
- 調整する商品
- 見切る商品
が、自然と分かれてきます。

発注が楽になる瞬間は、 「全部を見る」のをやめた時。
発注を「作業」から「判断」に変える
毎日の発注を、ただのルーティン作業として続けていると、 どうしても判断が雑になりがちです。
ですが、「今日はどの商品を守るか」という視点を持つだけで、 発注は一気に変わります。
売れている商品を守れる店は、強い
売れている商品を守り続けられる店は、
- 欠品が少ない
- 売場に勢いがある
- 数字が安定する
という特徴があります。逆に、
- 主力を削る
- 動かない商品を残す
判断が続くと、 じわじわと売場は弱っていきます。

発注は「減らす勇気」より、 守る覚悟が問われる仕事。
最後に、ここまでの内容を踏まえて 発注の考え方を一度整理します。
次はまとめとして、「どこを見て、どう判断すればいいのか」を、シンプルにまとめます。

まとめ|発注は「減らす」より「守る」

この記事では、発注業務でよく起きがちな
- 売れている商品を減らしてしまう判断
- 廃棄の「量」だけを見てしまう思考
- 結果として売場が弱っていく流れ
について、現場目線で整理してきました。
一番お伝えしたかったことは、とてもシンプルです。
廃棄が出ている=失敗ではない
廃棄が出ると、どうしても「発注を間違えた」と感じてしまいます。
ですが、売れている商品に多少の廃棄が出ること自体は、異常ではありません。
むしろ、
- 欠品を避けるため
- ピークを逃さないため
に、しっかり攻めた発注ができている証拠でもあります。

廃棄を怖がりすぎると、 一番大事な「売上」を削ってしまう。
本当に見るべきなのは「率」と「再現性」
発注判断で大切なのは、
- 廃棄の数
- 一時的な結果
ではなく、
- 廃棄率(パーセンテージ)
- 毎週同じ動きをしているか
という視点です。
これを見るだけで、
- 守るべき商品
- 調整すべき商品
- 見直すべき商品
が、自然と分かれてきます。
動かない商品を守ると、売場は弱くなる
発注で一番避けたいのは、「動かない商品を守り、動く商品を削る」という判断です。
これは、
- 売場の回転を落とし
- チャンスロスを増やし
- 数字をじわじわ悪化させる
最も危険なパターンです。
発注は「作業」ではなく「判断」
発注は、単なる日々の作業ではありません。売場の未来を決める判断です。
今日の発注で、
- どの商品を守るのか
- どの商品を見直すのか
この意識を持つだけで、 発注の精度は確実に上がっていきます。
発注が安定すると、 現場の迷いも一気に減る。
最後に
もし今、
- 発注が怖い
- 数字を見るのがしんどい
- 「減らす」判断ばかりしている
と感じているなら、まずは「売れている商品を守れているか」を、確認してみてください。
発注は、慎重になるほど難しくなります。 でも、見るポイントが整理できれば、 決して複雑な仕事ではありません。
この記事が、発注を「怖い作業」から 「手応えのある判断」へ変えるきっかけになれば嬉しいです。
発注チェックリスト(店長・オーナー向け)

全部を完璧にやらなくていい。 まずは「守る商品」を決めることから。
もし今、
- 発注が怖い
- 数字を見るのがしんどい
- 減らす判断ばかりしている
と感じているなら、「売れている商品を守れているか?」この1点だけを、次の発注で確認してみてください。
発注は、慣れれば楽になります。 見るべきポイントが整理できれば、 迷いは確実に減ります。
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