【発注の落とし穴】売れている商品を減らしていませんか?本当に見るべきは廃棄率
発注をしていると、ふとこんな瞬間はありませんか?
「この商品、1週間で100個も売れてるけど、 廃棄も出てるから少し下げた方がいいかな」
発注業務をしている多くの方が、 一度はこの判断をしたことがあると思います。
売れている。 数が多い。 廃棄も出ている。
だから「減らす」―― 一見、とても正しい判断に見えます。
ですが、ここに発注でよくある大きな落とし穴があります。
実は、発注精度を左右しているのは
「どれだけ売れたか(量)」ではなく、 「どれくらいの確率で廃棄になっているか」
つまり、廃棄率です。
この視点を持たないまま発注を続けると、
- 売れている商品の発注を減らしてしまう
- 結果として欠品が増える
- 売上も粗利も、じわじわ落ちていく
という、気づきにくい悪循環に入ってしまいます。

発注で一番怖いのは、 「間違っていること」より、 「正しそうに見える判断」を続けてしまうこと。
この記事では、
- なぜ発注をしていると「売れている商品」を減らしたくなるのか
- 数字の見方を間違えると、どんなズレが起きるのか
- 本当に見るべき指標は何なのか
を、コンビニの現場目線で整理していきます。
発注は「減らす作業」ではありません。 精度を上げる作業です。
その感覚を、ここから一緒に確認していきましょう。
ちなみに、廃棄をゼロに近づけようとすると、今度は欠品が増えて“機会ロス”が起きます。
この「どこまでが投資で、どこからが損か」という全体像は、こちらの記事で整理しています。
この記事で言う「廃棄率」は2種類ある
ここ、混ざりやすいので最初に分けます。
- 店舗全体の廃棄率(売上に対する廃棄額):さきほど紹介した記事の「2〜3%」の話
- 商品単位の廃棄率(その商品の売れ方に対する廃棄の割合):この記事の中心
今回は「発注の落とし穴」を潰すために、商品単位の廃棄率で話を進めます。
なぜ人は「売れている商品」を減らしたくなるのか
発注業務をしていると、人はどうしても 「数字が大きい商品」に目がいきます。
特に目に入りやすいのが、
- 販売数が多い商品
- 廃棄数が目立つ商品
です。たとえば、
- A:1週間で100個売れて、廃棄が5個
- B:1週間で20個売れて、廃棄が3個
感覚的には「Aのほうがリスク高そう」に見えますよね。
廃棄が5個って、やっぱり目立つから。
でも、本当のリスクは“量”じゃなく“確率”です。
人は「量」でリスクを判断してしまう
これは経験や能力の問題ではなく、 人の思考のクセです。
廃棄が
- 5個出ている
- 3個出ている
と聞くと、「多い」「怖い」と感じてしまいます。
一方で、
- あまり売れていない
- 目立った廃棄が出ていない
商品は、「なんとなく安全そう」に見えてしまいます。
その結果、起きやすい発注判断
この感覚で発注を続けると、 現場では次のような判断が起こりがちです。
- 売れている商品の発注数を下げる
- 動きの鈍い商品は現状維持
結果として、
- 売れている商品の欠品が増える
- チャンスロスが増える
- 売上・粗利がじわじわ落ちる
という、気づきにくいズレが生まれます。

発注で一番やりがちなのは、 「よく動く主力」を守りに入って削ってしまうこと。
問題は「売れていること」ではない
ここで大事なのは、売れている商品に廃棄が出ること自体は、異常ではないという視点です。
むしろ、よく売れて、よく回転している商品ほど、多少の廃棄は出やすいのが現実です。
この主役を、「廃棄が出ているから」という理由だけで削ってしまうことが、発注の一番の落とし穴です。
次の章では、数字で見ると、なぜこの判断がズレているのかを、具体的な例で整理していきます。

廃棄率で見ると「削るべき商品」が逆転する
ここで商品単位の廃棄率を、シンプルにこう定義します。
商品単位の廃棄率 = 廃棄数 ÷(販売数+廃棄数)
AとBを当てはめるとこうなります。
| 商品 | 販売数 | 廃棄数 | 廃棄率(商品単位) | 判断 |
|---|---|---|---|---|
| A | 100 | 5 | 約4.8% | 「守る側」になりやすい |
| B | 20 | 3 | 約13.0% | 「見直す側」になりやすい |
どうでしょう。
“目立つ廃棄”に引っ張られると、守るべき主力を削ってしまうのがわかります。
売れている商品に廃棄が出るのは、ある意味「正常」
ここも大事な感覚です。
売れている商品(回転が速い商品)は、
- 欠品を避けるために“少し余裕”を持たせる
- ピークに合わせて“厚み”を作る
この動きが入るので、多少の廃棄が出るのは正常になりやすいです。
怖いのは「廃棄が出ること」より、廃棄を怖がって主力を削ること。
欠品が増えると、売上も粗利も“静かに”落ちていきます。
「廃棄ゼロが正解じゃない」話は、こちらの記事でさらに深掘りしています。

「廃棄ゼロ」を目指しすぎると、 売場は一気に弱くなる。
「廃棄が多い=危険」は思い込み
A商品の廃棄は5個。 数字だけを見ると、確かに多く見えます。
ですが、100個売れて5個廃棄なら、100個はきちんと売れているということでもあります。
一方、B商品はどうでしょうか。
25個中5個廃棄。 これは、かなり高い確率で外している発注です。

廃棄が「目立つ」商品と、 廃棄が「危険な」商品は別物。
量だけで判断すると起きるズレ
もし、量だけを見て判断すると、 現場ではこんなことが起こります。
- A商品を減らす → 欠品が出やすくなる
- B商品はそのまま → 廃棄体質が改善されない
結果として、
- 売上チャンスを逃す
- 粗利が伸びない
- 「なんとなく数字が悪い」状態になる
という、じわじわ効くダメージが残ります。
見るべき数字を変えるだけで、発注は安定する
発注精度を上げたいなら、
- 数(個数)
- 金額
だけでなく、廃棄率(パーセンテージ)を見る癖をつけてください。
数字の見方を変えるだけで、
- 削るべき商品
- 守るべき商品
が、はっきり分かれるようになります。
次の章では、「売れている商品に廃棄が出るのはなぜ問題ないのか」その理由を、もう一段深く整理していきます。

売れている商品に廃棄が出るのは「正常」
ここまで読んで、
「でも、売れている商品で廃棄が出るのって、 やっぱり良くないんじゃないの?」
と感じた方もいるかもしれません。
ですが、結論から言うと、売れている商品に多少の廃棄が出るのは、ある意味“正常”です。
売れている商品は「攻めた発注」をしている
回転の速い商品、主力商品は、
- 欠品させたくない
- ピークを逃したくない
という理由から、あらかじめ少し多めに持つ発注になりやすいものです。
その結果として、
- 売り切れる日もある
- 少し残る日もある
というブレが生まれます。
廃棄を恐れすぎると、別の損失が生まれる
「廃棄を減らしたい」という気持ちは、とても自然です。
ですが、廃棄を恐れすぎると、
- 発注が守りに入ってしまう
- 欠品が増える
- 売れるチャンスを逃す
という、別の損失が生まれます。
この損失は、数字として見えにくいのが厄介なところです。

廃棄は目に見える。 欠品ロスは、気づきにくい。
「廃棄ゼロ」を目指すと、売場は弱くなる
理論上、廃棄をゼロにすることは可能です。
ただし、その場合は、
- 常にギリギリの発注
- ピーク対応ができない
- 売場に余裕がない
状態になります。結果として、
- 「いつ来ても欲しい商品がない」
- 「選ぶ楽しさがない」
売場になってしまいます。
正常な廃棄と、危険な廃棄は違う
ここで、整理しておきたいのがこの違いです。
正常な廃棄
- 売れている商品に、たまに出る廃棄
- 週によって出たり出なかったりする
- 廃棄率が低い
注意すべき廃棄
- 売れていない商品に出る廃棄
- 毎週似たような廃棄が出る
- 廃棄率が高い
後者は、一時的なミスではなく、発注判断そのものがズレているサインです。

本当に怖いのは、 「動かない商品の廃棄」。
「売れている商品」は守るべき存在
売れている商品は、店の売上を支えている主役です。
主役を削る前に、
- 本当に廃棄率は高いのか
- 数字で見て危険なのか
を、一度冷静に確認してみてください。
次の章では、本当に危険なのはどんな廃棄なのか。つまり、「動かない商品の廃棄」について、整理していきます。
本当に危険なのは「売れていないのに廃棄が出続ける商品」
問題なのは、こっちです。
- 売れていないのに廃棄が出る
- 毎週、同じような廃棄が出る
- 値引きしても、最後まで残る
こういう商品は、「需要に対して置き方・量・種類が合ってない」可能性が高い。
棚の“種類”そのものが原因になるケースも多いので、ここはセットで読むと判断が速くなります。
動かない商品に出る廃棄は「構造的」
動かない商品の廃棄には、こんな特徴があります。
- 売行きが鈍い
- 毎週、似たような数が残る
- 曜日や天候が変わっても動かない
これは、たまたまの読み違いではありません。発注判断そのものがズレているサインです。
動かない商品は、売場を静かに弱らせる
動かない商品が残り続けると、
- 売場の鮮度が落ちる
- 回転が悪くなる
- 発注全体のリズムが崩れる
という影響が出てきます。
しかもこの影響は、一気に数字に出ないのが厄介なところです。

動かない商品は、 気づかないうちに売場の体力を削っていく。
「毎週出る廃棄」は黄色信号
発注を見直す際に、 一つの目安になるのがこれです。
もし、
- 毎週、ほぼ同じ数が残る
- 改善しても結果が変わらない
状態なら、「数を減らす」以外の判断も必要になります。
- そもそも扱う種類が合っていない
- 売場での役割が合っていない
- 今の客層とズレている
といった視点です。
売れていない商品を放置すると起きること
動かない商品を、「とりあえず今まで通り」で続けると、発注はこうなります。
- 売れている商品を削る
- 動かない商品は維持
結果として、
- 主力が弱る
- 廃棄体質は変わらない
- 全体がじわじわ落ちる
という、最悪の組み合わせになります。

頭で理解してても、意外とやっちゃってるんです。
廃棄を見るときは「商品別」に考える
廃棄を減らしたいときほど、全体の廃棄量ではなく、商品ごとの廃棄の出方を見るようにしてください。
そうすると、
- 守るべき商品
- 見直すべき商品
が、はっきり分かれます。

発注は「全部を均等に見る」仕事じゃない。 メリハリをつける仕事です。
次の章では、発注を「減らす作業」ではなく 「精度を上げる作業」に変える考え方について、まとめていきます。

発注は「減らす作業」ではなく「精度を上げる作業」
発注というと、「廃棄を減らすこと」が、目的になりがちです。
もちろん、廃棄を減らすことは大切です。 ですが、そこだけに意識が向くと、 発注の本質を見失います。
発注の本当の目的は、売れる商品を、売れる状態で並べ続けることです。
減らす発注は「守り」、精度を上げる発注は「攻め」
廃棄を怖がって減らす発注は、
- 欠品が増えやすい
- 売場が弱くなる
- 売上の天井が下がる
というリスクを抱えます。一方、精度を上げる発注は、
- 売れる商品をしっかり押さえる
- 売れない商品を見極める
- 全体のバランスを整える
という考え方です。
発注を安定させる「3つの視点」
私は発注を見るとき、最低限この3つはセットで見ます。
- ① 廃棄率(量ではなく“確率”)
- ② 回転(売れるスピード=主力かどうか)
- ③ 再現性(毎週同じ動きをするか)
この3つで見ていくと、商品は自然に3つに分かれます。
見直す商品:回転が弱いのに廃棄が出る(棚・種類・導線を疑う)
守る商品:回転が速い/廃棄率が低い(欠品させない)
調整する商品:回転はあるがブレる(時間帯・厚みで調整)

発注が楽になる瞬間は、 「全部を見る」のをやめた時。
明日からできる:廃棄率で発注を整える3ステップ
STEP1:まず「主力」を守る(欠品を止める)
最初にやるのは、廃棄を削ることじゃありません。
主力の欠品を止めて、売場の土台を安定させることです。
おすすめは、まず“上位だけ”でOK。
- 販売数TOP(上位10〜20)
- 欠品が出た商品
このゾーンは「減らす」より「守る」。
ここを削ると、店全体の数字がじわじわ落ちます。
STEP2:「見直す商品」を見つけて、先に引く
天候でも曜日でも、売れにくい商品は必ず出ます。
そこで大事なのは、足すより先に“引く判断”です。
- 回転が弱いのに廃棄が出る
- 毎週同じ廃棄が出る
このゾーンは、数量調整だけで粘るより、棚の種類・見せ方・導線を疑ったほうが早いです。
STEP3:「外部要因」を織り込む(曜日×天候)
発注がブレる一番の原因は、「昨日と同じでいいや」です。
- 曜日の波(週末の山・谷)
- 前日差(気温の体感)
ここは記事を分けて深掘りしています。
発注を「作業」から「判断」に変えると、店は強くなる
発注が楽になる瞬間って、実は「全部を見る」のをやめた時です。
見るべきは、
- 守るべき主力
- ズレている商品
この2つだけでも、発注の精度は一気に上がります。
削るべきは「売上」じゃなく「ズレ」。
廃棄を怖がって主力を削ると、売場の勢いまで削ってしまいます。
売れている商品を守れる店は、強い
売れている商品を守り続けられる店は、
- 欠品が少ない
- 売場に勢いがある
- 数字が安定する
という特徴があります。逆に、
- 主力を削る
- 動かない商品を残す
判断が続くと、 じわじわと売場は弱っていきます。

発注は「減らす勇気」より、 守る覚悟が問われる仕事。
最後に、ここまでの内容を踏まえて 発注の考え方を一度整理します。
次はまとめとして、「どこを見て、どう判断すればいいのか」を、シンプルにまとめます。
廃棄を減らせと言われ続ける現場。でも、売上を作るには一定の“攻め”も必要です。
廃棄率を単なるコストとして見るのではなく、売上を伸ばすための投資という視点から整理した共通入口はこちら。
▶ 廃棄率2〜3%が適正な理由

まとめ|発注は「減らす」より「守る」
この記事では、発注業務でよく起きがちな
- 売れている商品を減らしてしまう判断
- 廃棄の「量」だけを見てしまう思考
- 結果として売場が弱っていく流れ
について、現場目線で整理してきました。
一番お伝えしたかったことは、とてもシンプルです。
廃棄が出ている=失敗ではない
廃棄が出ると、どうしても「発注を間違えた」と感じてしまいます。
ですが、売れている商品に多少の廃棄が出ること自体は、異常ではありません。
むしろ、
- 欠品を避けるため
- ピークを逃さないため
に、しっかり攻めた発注ができている証拠でもあります。

廃棄を怖がりすぎると、 一番大事な「売上」を削ってしまう。
本当に見るべきなのは「率」と「再現性」
発注判断で大切なのは、
- 廃棄の数
- 一時的な結果
ではなく、
- 廃棄率(パーセンテージ)
- 毎週同じ動きをしているか
という視点です。
これを見るだけで、
- 守るべき商品
- 調整すべき商品
- 見直すべき商品
が、自然と分かれてきます。
動かない商品を守ると、売場は弱くなる
発注で一番避けたいのは、「動かない商品を守り、動く商品を削る」という判断です。
これは、
- 売場の回転を落とし
- チャンスロスを増やし
- 数字をじわじわ悪化させる
最も危険なパターンです。
発注は「作業」ではなく「判断」
発注は、単なる日々の作業ではありません。売場の未来を決める判断です。
今日の発注で、
- どの商品を守るのか
- どの商品を見直すのか
この意識を持つだけで、 発注の精度は確実に上がっていきます。
発注が安定すると、 現場の迷いも一気に減る。
最後に
もし今、
- 発注が怖い
- 数字を見るのがしんどい
- 「減らす」判断ばかりしている
と感じているなら、まずは「売れている商品を守れているか」を、確認してみてください。
発注は、慎重になるほど難しくなります。 でも、見るポイントが整理できれば、 決して複雑な仕事ではありません。
この記事が、発注を「怖い作業」から 「手応えのある判断」へ変えるきっかけになれば嬉しいです。
発注チェックリスト(店長・オーナー向け)

全部を完璧にやらなくていい。 まずは「守る商品」を決めることから。
もし今、
- 発注が怖い
- 数字を見るのがしんどい
- 減らす判断ばかりしている
と感じているなら、「売れている商品を守れているか?」この1点だけを、次の発注で確認してみてください。
発注は、慣れれば楽になります。 見るべきポイントが整理できれば、 迷いは確実に減ります。
そして最後に。
廃棄を「悪」にしすぎると、発注は守りに入り、欠品ロスが増えます。
廃棄を“投資判断”として捉える共通入口はこちらです。
