理不尽な言葉が飛ぶ現場で、店の空気を守る|コンビニ接客の「負の連鎖」を断ち「感謝の連鎖」をつくる仕組み
コンビニで接客をしていると、
どうしても避けられないものがあります。
それが、理不尽な言葉。
丁寧にやっているのに、強い口調で言われる。
ミスをしたわけでもないのに、ぶつけられる。
これが続くと、スタッフの心は削れていきます。
そして気づかないうちに、接客のトーンも落ちていく。
ここが怖いところです。
こちらがカッとなって返してしまうと、
その瞬間、負の連鎖が完成します。
私は、そういう店にしたくありません。
来ていただくなら、
仕事や家庭で落ち込んで帰る途中の人が、
この店に寄って「ちょっとだけ明るくなって帰れる」。
そんな正の連鎖(感謝の連鎖)を生み出したい。
そのためには、
スタッフが“明るい状態”でお客様の前に立てる仕組みが必要です。
1. 負の連鎖は、こうやって起きる(そして静かに店を壊す)
理不尽な言葉が飛ぶ
↓
スタッフが疲れる(余裕がなくなる)
↓
笑顔が減る/声が硬くなる/対応が雑になる
↓
お客様が「感じ悪い」と受け取りやすくなる
↓
さらに言葉が強くなる
↓
店の空気が荒れる
↓
新人が育たない/辞める/人が足りなくなる
↓
さらに余裕がなくなる
このループに入ると、
店は“じわじわ”弱くなります。

空気が荒れた店って、売上より先に「人」が減ります。
人が減ると、さらに余裕がなくなる。ここが一番きつい。
2. まず最初にやるべきこと:正当な指摘と「線を越えた要求」は別物
ここを曖昧にすると、
頑張っているスタッフほど壊れます。
- 正当なクレーム:改善のヒント(店が受け取るべき)
- 著しい迷惑行為:スタッフを守るべき案件(店が線を引くべき)
ポイントはこれです。
「我慢して受ける」ではなく、
“店として”線引きを決める。
そして、現場が迷わないように
対応を“型”にする。

線引きがない店は、スタッフが毎回“即興で戦う”ことになる。
即興が続くと、心が削れていくんですよね…。
3. 理不尽が来た時の「対応テンプレ」(現場が崩れない型)
理不尽が来たとき、
スタッフが一番困るのはこれです。
「何て返せばいいか分からない」
だからテンプレを用意します。
“即興”をやめるだけで、現場はかなり落ち着きます。
テンプレ(一次対応:そのまま使えます)
1)まず事実確認
「恐れ入ります。状況を確認させてください」
2)謝罪は“感情”に寄せる(事実が未確定でも使える)
「不快なお気持ちにさせてしまい、申し訳ありません」
3)できることを提示
「こちらは◯◯まで対応可能です」
4)できないことは“ルール”で伝える(個人の意思にしない)
「申し訳ありません。ルール上、◯◯はできません」
5)言葉が荒い/暴言になったら、責任者へ切替
「その言い方ですと対応が難しいため、責任者に代わります」
NG(現場を燃やしやすい返し)
- 「だから何ですか?」
- 「こっちだって忙しいんです」
- 「他のお客さんもいますので」
- 「うちのルールなんで無理です」(言い切りだけで終える)
言いたくなる気持ちは分かります。
でも、ここで勝とうとすると、店が負けます。
店長・責任者の合図も決めておく(超重要)
スタッフが一人で抱えないために、
“呼び出しの合図”を決めます。
例)
- 「少々お待ちください、確認いたします」=責任者呼び出し合図
- レジ横のボタン/内線/チャットなども固定

“助けを呼ぶ言葉”が決まってるだけで、
スタッフの安心感って全然違います。
- 「掲示用」A4 1枚テンプレ(対応フロー/合図/NGワード)
-
────────────────────────────────────
【理不尽・強いクレーム対応 1枚テンプレ】(掲示用)
目的:スタッフを守り、店の空気を守り、負の連鎖を止める
────────────────────────────────────
■最優先(迷ったらコレ)
□ ①安全確保(距離を取る・無理に近づかない・周囲へ配慮)
□ ②一人で抱えない(合図→責任者へ)
□ ③言い返さない(“型”で返す)────────────────────────────────────
■対応フロー(基本の型:1→5で十分)
①事実確認
「恐れ入ります。状況を確認させてください。」②共感(感情に寄せる/事実未確定でもOK)
「不快なお気持ちにさせてしまい、申し訳ありません。」③整理(短く・復唱)
「◯◯が△△だった、ということでよろしいでしょうか。」④できること提示(選択肢を出す)
「こちらは◯◯まで対応可能です。」⑤できないこと提示(個人の意思にしない=ルールで)
「申し訳ありません。ルール上、◯◯はできません。」※ここで収まらない/言葉が荒い/長引く → ⑥へ
⑥責任者へ切替(スタッフは交代してOK)
「その言い方ですと対応が難しいため、責任者に代わります。」
(→責任者到着まで“繰り返し”)
「恐れ入ります。責任者をお呼びしていますのでお待ちください。」⑦危険・威嚇・暴力の兆候 → 安全最優先
・身の危険/物を投げる/威嚇/居座り/脅し
→ 退避・周囲確保・責任者/必要に応じて警察・本部へ────────────────────────────────────
■責任者呼び出し「合図」(店で統一)
【合図ワード】「少々お待ちください、確認いたします。」=責任者呼び出し
【内線/ボタン】_____ 【呼び出し先】_____
【交代ルール】合図を言ったら “交代してOK”。一人で続けない。(できれば追加)
【合図ハンドサイン】例:レジ下を2回タップ/名札を触る 等(店で統一)────────────────────────────────────
■絶対NGワード(現場を燃やす言葉)
×「だから何ですか?」 ×「知らないです」 ×「無理です(言い切り)」
×「うちのルールなんで(説明なし)」 ×「他のお客さんもいるんで」
×「あなたが悪いですよね?」 ×ため息・目線外し・笑い■推奨ワード(短く・落ち着く)
○「確認します」 ○「お待ちください」 ○「こちらで出来るのは◯◯です」
○「ルール上できません」 ○「責任者に代わります」────────────────────────────────────
■事後の“2分リセット”(負の連鎖を残さない)
□ 水を飲む □深呼吸 □バックヤードで2分休む
□ 交代できるなら交代 □店長が一言フォロー(責めない)
────────────────────────────────────
【責任者名】_____【緊急時連絡】_____【更新日】_____
────────────────────────────────────
- 「店長用」理不尽対応の事後フォロー台本(スタッフを守る一言集)
-
A. 直後(0〜30秒)※最重要
目的:回復と安心。分析はしない。
- 「大丈夫? いったん交代しよう。水飲もう。」
- 「今のはあなたのせいじゃないよ。よく耐えてくれた、ありがとう。」
- 「ここからはこっちで受ける。もうレジ戻らなくていいよ。」
NG(直後に言わない)
- 「なんでそう言ったの?」(詰問になる)
- 「あなたも言い方が…」(折れる)
- 「次は気をつけて」(“反省”より“回復”が先)
B. 2分リセット後(〜10分)※短く事実だけ
目的:頭の整理。感情の整理は“寄り添い”で。
- 「今、どの言葉が一番しんどかった?」
- 「相手が言ったこと、事実だけ教えて。短くでいいよ。」
- 「OK。次は“合図→交代”で早めに切ろう。」
※ここでの正解は「解決」より「安心」です。
C. シフト終わり(〜3分)※“守る言葉”を残す
目的:明日また来れる状態にする。
- 「今日はよくやってくれた。店として助かった。」
- 「嫌な思いをさせてごめん。守りきれなかった部分は改善する。」
- 「次に同じことが起きたら、あなたは合図だけ出して。あとは任せて。」
D. 翌日(30秒)※“見てるよ”が効く
目的:継続。心の傷は翌日に来ることがある。
- 「昨日の件、その後大丈夫だった?」
- 「今日もし同じ感じになったら、即交代でいいからね。」
E. ケース別:一言集(そのまま使える)
①スタッフが「自分が悪い」と責めている
- 「相手の言い方が線を越えてた。あなたが全部背負う必要はないよ。」
- 「店のルールで止める。個人戦にしない。」
②スタッフが怒りで震えている
- 「怒るのは自然。落ち着くまで、いったん離れよう。」
- 「今は勝ち負けじゃなくて、店の空気を守るのが勝ち。」
③スタッフが泣いてしまった
- 「泣いていいよ。ここで整えよう。あなたを守る。」
- 「今日はもう無理しなくていい。配置変える。」
④スタッフが言い返してしまった(ミスも含む)
- 「責めない。次に同じ状況になった時の“型”を一緒に決めよう。」
- 「合図が早ければ勝てる。次からは“合図→交代”でいこう。」
F. 店長がやる“仕組みの改善”(口だけにしない)
フォローの言葉が効くのは、次に守れる仕組みがセットになった時です。
- 合図ワードの再確認(新人含め全員)
- 責任者の動線(どこにいたらすぐ出れるか)
- 交代ルールの明文化(合図を言ったら交代OK)
- 休憩・配置の見直し(疲弊を溜めない)
4. スタッフが明るく立てる店は「頑張り」じゃなく“設計”で作る
ここが本題です。
スタッフを明るく保つのは、
根性でも、気合でもありません。
設計です。
4-1. 休憩が回るだけで、接客は荒れにくい
休憩が取れない現場は、
気づかないうちに表情が死にます。
- ミスが増える
- 声が硬くなる
- 言葉が雑になる
- クレームが増える
つまり、休憩は“接客品質の土台”です。


少人数店舗は「善意」より「設計」で回す。
休憩も同じで、枠を決めないと永遠に崩れます。
4-2. きつい仕事を“固定しすぎない”(不満が溜まる最大原因)
不満が溜まりやすいのは、
だいたい「偏り」があるときです。
- いつも同じ人が揚げ物
- いつも同じ人が清掃
- いつも同じ人がクレーム受け
- いつも同じ人が新人を見る
こうなると、
その不満は“お客様側”に漏れやすくなります。
甘やかす/甘やかさない、ではなく、
偏りを減らす。
これが店側の努力です。
4-3. スタッフが疲れた時の「戻し方」を決めておく
理不尽を受けた直後、
スタッフは“平常心に戻る時間”が必要です。
ここを放置すると、
次のお客様にトゲが出ます。
おすすめは「2分リセット」。
- レジ交代できるなら交代
- 水を飲ませる
- 一言だけフォローする
- すぐに反省会しない(まず回復)

事故が起きた後に、すぐ説教すると現場は折れます。
まず“戻す”。改善はその後。
5. 感謝が感謝を呼ぶ。「正の連鎖」は“仕組み”で回せる
感謝の連鎖って、
気持ちの話に見えます。
でも実際は、運用の話です。
5-1. 「ありがとう」を見える化する
例)
- 店長が1日1回、誰かを“事実で褒める”
- 「ありがとうメモ」をバックヤードに貼る
- 常連さんの一言を共有する(1件で空気が変わる)


“褒める”は無料でできる最高の投資。
数字の前に、まず人を見ましょう。
5-2. 会話は「店の付加価値」になる(落ち込んだ人を少し上げられる)
コンビニは、滞在時間が短い。
でも短いからこそ、効く一言があります。
- 「寒いですね」
- 「お疲れさまです」
- 「いつもありがとうございます」
押しつけじゃなく、軽く。
この一言で、
“今日は嫌な日だった”が少しマシになる人がいます。


コンビニって、生活の途中にある“休憩所”みたいな場所なんですよね。
数秒の接点でも、人の気持ちは少し動きます。
6. 店長・オーナーの仕事は「盾になる」こと(ここが文化になる)
理不尽が来たとき、
スタッフは内心こう思っています。
- 自分が悪いのかな
- また来たら嫌だな
- どうせ守ってもらえないかも
ここで店長が前に出ると、
スタッフの心は折れにくくなります。
店長がやるべき3つ
1)前に出る(現場の盾になる)
2)線を引く(ルールで止める)
3)事後に守る言葉をかける(ここが超重要)
責任論にしない。
人を責めない。
店を整える。


“守られた経験”が1回あるだけで、
スタッフは次から踏ん張れるようになります。
7. 今日からできる「負の連鎖を断つ」3つの着手
いきなり全部は無理でOKです。
まずは1つで十分効きます。
①「責任者交代の合図」を決める(即効性あり)
“助けを呼ぶ言葉”を固定する。
② 2分リセットを運用する(回復の型)
理不尽を受けた後は、必ず一度戻す。
③ ありがとうを見える化する(空気が変わる)
1日1回、事実で褒める。掲示する。
FAQ(現場でよくある質問)
Q1. お客様がイライラしている時、どう受け止めればいい?
A. 「相手にも事情があるかも」は持っていい。
ただし、線を越えたら店として止める。両方必要です。
Q2. スタッフが言い返してしまったら?
A. まず“責めない”。
次に「テンプレ」と「交代合図」を整える。
仕組みがないと、人は守れません。
Q3. 優しくしすぎると、つけ上がりませんか?
A. 優しさと“線引き”は別です。
線引きがあるから、優しい店が成立します。
Q4. 新人にどう教える?
A. 長い説教より、テンプレを1枚渡す方が早いです。
「困ったら責任者を呼んでいい」を最初に約束してあげてください。
- 「新人導入」最初の5分教育スクリプト(“困ったら呼んでいい”を文化にする)
-
5分台本(読み上げ用)
0:00〜0:30 歓迎+店の約束
「今日からよろしくね。最初に一つだけ約束をします。
この店は、困ったら“必ず呼んでいい店”です。
一人で抱えない。それが一番大事。」0:30〜1:30 新人が守る最優先ルール(3つ)
「新人さんがまず守るルールは3つだけ。」
1)安全が最優先(怖いと感じたら距離を取ってOK)
2)言い返さない(型で返す)
3)合図して呼ぶ(一人で戦わない)「仕事はあとから覚えればいい。まず“守り方”を覚えよう。」
1:30〜2:30 合図ワードを教える(これが文化になる)
「困ったら、この言葉を言ってね。」
【合図ワード】
「少々お待ちください、確認いたします。」「これを言ったら、その時点であなたの役目は終わり。
交代してOK。あとは店長(責任者)が対応する。」(指さして見せる)
「呼び出しはここ(ボタン/内線/声掛け)で。
責任者は(名前)ね。」2:30〜3:30 超短い対応テンプレ(新人用は2行でOK)
「お客様が強い口調のとき、新人は2行でいい。」
1)「恐れ入ります。状況を確認させてください。」
2)「少々お待ちください、確認いたします。」(=合図)「これで十分。無理に解決しようとしなくていい。」
3:30〜4:30 ミニロールプレイ(30秒×2回)
(店長が強めに言う→新人がテンプレ返す)
パターンA:怒り口調
店長役「おい!どうなってんだ!」
新人「恐れ入ります。状況を確認させてください。少々お待ちください、確認いたします。」パターンB:しつこく食い下がる
店長役「今すぐやれ!」
新人「申し訳ありません。少々お待ちください、確認いたします。」(繰り返してOK)「繰り返すのが正解。言い返さない。戦わない。」
4:30〜5:00 最後の安心(ここが定着を決める)
「最後にもう一回言うね。
困ったら呼んでいい。呼ぶのが正しい。
呼ばれたら、こっちは“助かった”と思うから。
一緒に安全に、気持ちよくやっていこう。」(確認質問)
「合図ワード、言える?」
→言えたらOK。「完璧じゃなくてOK。合図できたら100点。」新人に渡す「ポケットカード」文面(小さく印刷)
名札の裏に入れる/休憩室に置くと強いです
【困ったらコレ】
①安全が最優先(距離を取ってOK)
②言い返さない
③合図:「少々お待ちください、確認いたします」
→言ったら交代してOK。責任者へ。
まとめ:明るい店は、明るい人が作る。でも明るい人は“仕組み”が作る
理不尽な言葉はゼロにできません。
でも、負の連鎖を断つことはできます。
- 線引きを決める
- 対応テンプレを作る
- 休憩と負荷を設計する
- 感謝を見える化する
- 店長が盾になる
この積み重ねが、
スタッフの継続につながり、
お客様が増える価値提供につながる。
感謝が感謝を呼ぶ店は、
運営で作れます。
関連記事(内部リンク案)
- 不満は誰にでもある|言葉の選び方が店の空気と成果を変える理由
- コンビニの休憩が回らない原因と解決策|少人数でも回る休憩設計
- コンビニスタッフのやる気を高める3つの仕組み
- 店舗運営の付加価値は“会話”でつくられる
- 店員の印象を決める接客マナー|立ち姿・清潔感・言葉遣い
- 接客サービスはPDCAで改善できる(接客を“仕組み”で整える)
- 「私の責任じゃない」と言われた時に店長が取るべき対応
※補足(法務・労務系の注意)
カスハラ対応の判断は、会社方針・本部規定・契約条件・法令等で変わります。
実務に落とす前に、必ず公式情報の最新をご確認ください。

