粗利率が下がってきた…大丈夫?|粗利率より粗利額で判断する店舗運営
「粗利率が下がってきました。何かまずいでしょうか?」
店舗運営でよくある相談です。
でも、ここで一番大事なのは “粗利率が下がる=悪”とは限らない ということです。
結論から言うと――
見るべきは粗利率ではなく、粗利額(そして最終的な営業利益)です。
粗利率は“見た目”として重要ですが、商品構成(ミックス)が変わると簡単にブレます。
そして、ブレた数字だけ見て間違った手を打つ店が多い。
この記事では、数字の比較を使って、
- 粗利率が低い商品をたくさん売った時に店で起きること
- 逆に粗利率が高いFF・コーヒーを増やした時に起きること
- どの数字で判断すべきか(現場の型)
を整理します。
まず押さえる:粗利率と粗利額は、別の数字
粗利率(粗利%)
- 粗利率 = 粗利額 ÷ 売上
粗利額(粗利)
- 粗利額 = 売上 − 原価(仕入れ)
粗利率は“比率”なので、
粗利率の低い商品が増えると、店の粗利率は下がりやすい。
でも、粗利率が下がっても 粗利額が増えているなら、
店としては「稼ぐ方向」に動いている可能性があります。

粗利率は“見た目”、粗利額は“現金のエンジン”。
見た目が悪くてもエンジンが強くなってるなら、焦ってブレーキ踏まない方がいい。
ケース1:粗利率が低い商品をたくさん売ったら何が起きる?
例:通常月 → 3月(低粗利商品が増える月)
通常月:売上1,000万円
- 低粗利商品:200万円(粗利率10%)→ 粗利20万円
- その他:800万円(粗利率30%)→ 粗利240万円
- 合計粗利260万円(粗利率26%)
3月:たばこ買いだめで低粗利商品が400万円に増えた
- 低粗利商品:400万円(10%)→ 粗利40万円
- その他:800万円(30%)→ 粗利240万円
- 合計粗利280万円(粗利率23.3%)
粗利率は 26% → 23.3%に下がる。
でも粗利額は 260万 → 280万に増える。
ここでのポイントはこれです。
- 粗利率:下がる(見た目は悪化)
- 粗利額:増える(実態は改善)
低粗利商品が増えた時に、店で起きる「良い変化」
1)粗利額が増える(=店の体力が増える可能性)
粗利率は下がっても、粗利額が増えていれば
人件費・固定費を払う“原資”が増えます。
2)来店が増える(=ついで買いの土台が増える)
低粗利商品は「買う目的」が強いことが多いです。
来店が増えれば、ついで買いが乗る余地も増えます。

低粗利商品は“利益商品”じゃなくて“来店商品”。
来店を落とすと、利益商品まで一緒に死にます。
低粗利商品が増えた時に、店で起きる「悪い変化(落とし穴)」
粗利額が増えていても、現場が崩れると「最終利益」は落ちます。
1)レジが混む → “ついで買い”が落ちる(機会損失)
低粗利商品の販売が増えると、レジ負荷が上がることがあります。
レジが詰まると、
- 客がイライラする
- 追加購買が減る
- 滞在時間が減る
が起きやすい。
数字で見るとこういう事故になります。
事故パターン:低粗利は伸びたのに、他が落ちた
- 低粗利商品:200万 → 400万(粗利 +20万)
- その他:800万 → 750万(粗利 -15万)
- 合計粗利:260万 → 265万(+5万しか増えない)
「粗利率が下がった」だけでなく、
“伸びたのに残らない”が起きます。
2)資金繰りが重くなる(売上は増える=仕入れも増える)
低粗利商品は回転が速い一方で、売上が伸びると仕入れも膨らみます。
粗利率が低いほど、同じ粗利額を取るために 売上(仕入れ)が大きく必要。
つまり、
- 売上が増える=現金の出入りが増える
- 在庫も増えやすい
- 防犯・管理の負荷も増える
3)「粗利率が下がったから…」と在庫を絞って欠品 → 来店が落ちる
一番多いミスがこれです。
粗利率が下がった
→ 低粗利商品を嫌う
→ 在庫を絞る
→ 欠品
→ 来店が落ちる
→ ついで買いも落ちる
→ 店全体が弱る

粗利率が怖くて欠品すると、店の“習慣”が壊れる。
習慣が壊れると、取り戻すのに時間がかかります。
ケース2:粗利率が高い商品(FF・コーヒー)を増やしたら何が起きる?
次は逆。粗利率が高い商品を伸ばしたケースです。
例:売上は同じ1,000万円でも、商品構成を変える
(A)現状:高粗利が少なめ
- 低粗利:200万(10%)→ 粗利20万
- その他:700万(30%)→ 粗利210万
- 高粗利(FF/コーヒー等):100万(60%)→ 粗利60万
- 合計粗利290万(粗利率29%)
(B)高粗利を増やした
- 低粗利:200万(10%)→ 粗利20万
- その他:600万(30%)→ 粗利180万
- 高粗利:200万(60%)→ 粗利120万
- 合計粗利320万(粗利率32%)
売上が同じでも、
- 粗利率:29% → 32%(改善)
- 粗利額:290万 → 320万(改善)
“見た目”も“実態”も良くなる。
だから高粗利商品の強化は基本的に正しいです。
高粗利商品を増やした時に起きる「良い変化」
1)粗利率も粗利額も上がりやすい
構造的に、同じ売上でも粗利が厚くなるので、経営は楽になります。
2)粗利を作る“主力”が育つ
低粗利は来店の土台、高粗利は利益の土台。
高粗利が育つと、店の利益の再現性が上がります。
高粗利商品を増やした時の「落とし穴」(ここを外すと逆効果)
高粗利商品は、粗利率は高いですが、運用を間違えると“コストが増えて消える”ことがあります。
1)廃棄・ロスが増えると、粗利は簡単に消える
高粗利商品は「作り置き」「鮮度」「ピーク対応」などが絡みやすい。
結果として廃棄が増えると、粗利の厚みが削られます。
ざっくりイメージを数字で置くと、
- 高粗利商品:売上200万、粗利率60% → 粗利120万
- でも廃棄・ロスで売上の5%が“実質消える”とする
→ 200万 × 5% = 10万相当が消える
→ 粗利は 120万 → 110万相当 まで落ちる
※ここは店舗の管理精度で差が出ます。
2)人時(人手)が増えると、営業利益は下がる
高粗利商品は、提供オペレーションが絡みやすい。
売れた分だけ現場が忙しくなり、追加の人時が必要になるケースがあります。
粗利は増えたのに、営業利益が増えない原因はだいたいこれです。
- 粗利 +30万増えた
- でも追加人件費が +20万増えた
- 実質 +10万しか残らない
3)ピークで詰まると、回転と満足が落ちる
高粗利商品は「作る」「温める」「説明する」が入ると、
ピークで詰まりやすい。
詰まると、
- 会計行列が伸びる
- 他カテゴリの購買が落ちる
- クレームが増える
- スタッフが疲弊する
という“現場の崩れ”が出ます。

高粗利は正義。でも“運用コスト”がセット。
売れるほど忙しくなる商品は、「粗利額」だけじゃなく「人時」も一緒に見ないと事故ります。
じゃあ何を見ればいい?判断は「粗利額」+「粗利の質」でやる
粗利率か粗利額か、で終わらせるとまだ危ないです。
現場では、もう1段深い指標が必要です。
見るべき指標(おすすめ順)
1)粗利額(店の原資)
まずはこれ。店の体力。
2)粗利額 - 人件費 = 残る利益(営業利益に近い)
最終的に残るかどうかはここ。
3)粗利/人時(=1時間あたりどれだけ稼いだか)
- 低粗利でも回る商品は、粗利/人時が良い場合がある
- 高粗利でも手間が重いと、粗利/人時が悪化する場合がある
4)粗利/来店(=1来店あたりの稼ぎ)
低粗利商品で来店を集めて、高粗利商品の“ついで買い”を乗せる。
この設計ができる店が強いです。
実務の型:低粗利は「欠品させない」、高粗利は「廃棄と人時を潰す」
低粗利商品(来店商品)の型
- 欠品しない(習慣を守る)
- ピークで詰まらせない(レジ・動線)
- ついで買いの導線を作る(高粗利へ流す)
高粗利商品(利益商品)の型
- 廃棄を増やさない(作りすぎない)
- 人時を増やしすぎない(ピーク設計)
- “売れても崩れない”運用にする(教育・標準化)
まとめ:粗利率が下がっても勝ち筋はある。大事なのは「粗利額」と「現場コスト」
- 低粗利商品が増えると、粗利率は下がりやすい
- でも粗利額が増えていれば、店は強くなる可能性がある
- ただし、レジ負荷・資金繰り・欠品で“逆効果”になることもある
- 高粗利商品は伸ばす価値が高いが、廃棄・人時で粗利が消える落とし穴がある
結局、答えはこれです。
粗利率ではなく「粗利額」
そして、
粗利額が“人件費と廃棄”で消えていないか
ここまで見た店が、安定して勝ちます。
FAQ
Q1. 粗利率が下がったら、基本的に危険ですか?
A. 危険とは限りません。低粗利商品の比率が上がると、構造的に粗利率は下がります。粗利額が増え、営業利益も守れているなら問題ないケースがあります。
Q2. 低粗利商品は「売らない方がいい」?
A. 逆です。低粗利は来店を作る重要カテゴリです。売らないのではなく「欠品させない・詰まらせない・高粗利へつなぐ」が型です。
Q3. 高粗利商品を増やせば必ず儲かりますか?
A. 必ずではありません。廃棄・人時が増えると、粗利が消えます。高粗利ほど“運用の精度”が利益を決めます。
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