【コンビニ経営】「私の責任じゃない」と言われた時に店長が取るべき対応
コンビニ経営をしていると、 クレーム対応や廃棄が発生した場面で、 こんな言葉を耳にすることがあります。
「それ、私がやったわけじゃないです」
「発注したのは、別の人なので…」
正直に言うと、 イラッとすることもありますよね。
「誰がやったか」よりも、 「どう立て直すか」を考えたい場面だからこそ、 余計に引っかかる言葉です。
ただ、ここで一つ大事な前提があります。
実はこの反応は、
- 新人スタッフ
- 付き合いがまだ浅いスタッフ
ほど、起こりやすい傾向があります。
それは性格の問題ではなく、 「まだ分からない」「まだ怖い」 という状態のサインです。
この場面で対応を間違えると、
- 責任の押し付け合いが始まる
- 報告が遅れる
- 現場が萎縮する
という、じわじわ効く悪循環に入ってしまいます。

この言葉が出た時こそ、 店の空気が試されている。
この記事では、
- なぜ新人・付き合いが浅い人ほど「私の責任じゃない」と言いやすいのか
- その言葉に対して、やってはいけない対応
- 責任論にせず、改善に向かわせる考え方
- クレーム・廃棄時に使える「軸になる一言」
を、現場オーナーの目線で整理していきます。
人を責めずに、店を強くする。
そのための考え方を、ここから一緒に確認していきましょう。
なぜ新人・付き合いが浅い人ほど「私の責任じゃない」と言ってしまうのか

まず最初に、はっきりさせておきたいことがあります。
特に、新人や付き合いが浅いスタッフの場合、 この言葉の裏には「守りの反応」が隠れています。
理由① 店のルールや価値観が、まだ分からない
長く働いているスタッフは、自然と理解しています。
- この店が何を大事にしているか
- ミスが起きた時、どう扱われるか
- 誰がどこまで責任を持つのか
一方、新人や付き合いが浅い人はどうでしょうか。
- 評価基準が見えていない
- 叱られるラインが分からない
- 「正解」が分からない
つまり、何が安全で、何が危険なのか分からない状態にいます。

新人の「私の責任じゃない」は、 逃げじゃなくて“確認”なんだよね。
理由② ミス=怒られる、という前提を持っている
多くの人は、過去の職場や経験から、
- ミスをすると責められる
- 原因を追及される
- 誰が悪いかを問われる
という記憶を持っています。
そのため、クレームや廃棄が出た瞬間、「自分を守るモード」に入ってしまいます。
この状態では、 冷静に改善の話をする余裕はありません。
理由③ 「考える役割」だと思っていない
新人や付き合いが浅い人ほど、
- 指示されたことをやる
- 判断は上の人がする
- 自分は作業者
という役割認識を持ちがちです。
そのため、「今回の判断は、あなたの仕事じゃない」という意味で、「私の責任じゃない」と言っているケースもあります。

責任を放棄しているというより、 そもそも“責任があると思っていない”だけ。
理由④ 信頼関係が、まだできていない
一番大きいのは、ここかもしれません。
新人や付き合いが浅い人は、
- この人は味方か
- 失敗しても大丈夫か
- 正直に話していいか
を、常に探っています。
信頼関係ができる前は、「守る or 逃げる」という選択肢しか見えません。
小まとめ|この言葉は「不安」の表現
ここまでを整理すると、
- 分からない
- 怖い
- 判断基準が見えない
- 信頼関係がまだ浅い
この状態で出てくる言葉が、「私の責任じゃない」です。

この言葉が出た時は、 叱るタイミングじゃない。 “整える”タイミング。
次の章では、この場面で絶対にやってはいけない対応について整理していきます。

やってはいけない対応|「責任論」に引きずり込まれること

「私の責任じゃないです」
この言葉を聞いたとき、 つい返してしまいがちなのが、こんな対応です。
- 「でも、結果的にこうなってるよね?」
- 「誰かが責任取らないとダメだよね?」
言っている側としては、状況を整理したいだけかもしれません。
ですが、この返し方は、ほぼ確実に改善の話を止めます。
責任論に入ると、人の頭はこうなる
「誰の責任か」という話になった瞬間、 相手の頭の中はこう切り替わります。
守る or 逃げる。この状態では、
- 事実を正確に話す
- 原因を一緒に考える
- 次の改善を考える
余裕は、ほぼありません。
よくあるNGフレーズ
現場でよく聞く、 改善を止めてしまう言葉を挙げてみます。
- 「誰がやったの?」
- 「なんで確認しなかったの?」
- 「前も言ったよね?」
- 「普通はこうするよね?」
これらはすべて、過去を裁く言葉です。
過去を裁かれた瞬間、 人は「正直に話す」より「身を守る」方を選びます。

正論ほど、 現場を黙らせることがある。
「責任を明確にする」と「責任論」は違う
ここで誤解しやすいのが、「責任の所在を整理すること」と 「責任論で追い詰めること」は別という点です。
前者は必要です。 後者は、ほぼ不要です。
特にクレームや廃棄対応の初動では、責任を決めるより、事実を集める方が、圧倒的に大事です。
責任論が続くと、現場で起きること
責任論の対応が続くと、 現場では次のような変化が起きます。
- ミスを隠すようになる
- 報告が遅くなる
- 「関わらない方が安全」になる
結果として、問題は減らないのに、見えなくなるという、最悪の状態になります。

一番怖いのは、 「何も起きていないように見える店」。
この場面で大切なのは「向いている方向」
クレームや廃棄が起きた場面で、 本当に揃えたい方向はどこでしょうか。
それは、過去ではなく、未来です。
次の章では、責任論から抜け出し、 改善に向かわせる考え方の軸について整理していきます。

考え方を変える|「責任」ではなく「立場」で話す

「私の責任じゃないです」
この言葉が出たとき、 議論を前に進めるために必要なのは、相手を正すことではありません。
必要なのは、話の軸を変えることです。
軸を「責任」から「立場」に切り替える
責任の話をすると、 どうしてもこうなります。
- 誰が悪いか
- 誰のミスか
- 誰が取るのか
これを、「次を良くする立場の話」に切り替えます。
具体的な声かけ例(そのまま使えます)
たとえば、こんな言い換えです。
- 「今回の発注を決めたのは君じゃないよね。 でも、次に同じ状況を防げる立場には一緒にいるよね」
- 「誰が悪いかより、 次どうするかを一緒に決めたい」
- 「責任を取れとは言わない。 ただ、次に良くする役割は一緒に持ちたい」
これらの言葉には、共通点があります。
相手を裁かず、未来に向けて巻き込んでいるという点です。

「君が悪い」じゃなくて、 「一緒に次を作ろう」に切り替える。
この考え方が効く理由
新人や付き合いが浅い人にとって、
- 責められない
- 否定されない
- 逃げなくていい
という空気ができると、初めて「考える余裕」が生まれます。
考える余裕ができて、 初めて改善の話ができます。
「立場」で話すと、責任感は後からついてくる
よくある誤解ですが、責任を追及しないと、責任感が育たないわけではありません。
むしろ逆です。
安心して関われると、人は自然と当事者になるようになります。

責任感は、 押し付けるものじゃなくて、 引き受けたくなるもの。
大事なのは「過去」ではなく「未来」
クレームや廃棄が起きた瞬間は、どうしても過去に目が向きがちです。
でも、店を良くするのは、未来に向けた一手です。
次の章では、新人に特に効く「最初の前置き」について、 具体的なフレーズと一緒に整理していきます。

新人に特に効く「最初の前置き」

クレームや廃棄の話をする時、 本題よりも先に大事なものがあります。
それが、「最初の前置き」です。
新人ほど「何を言われるか」を身構えている
新人や付き合いが浅い人は、
- これから怒られるのか
- 責められるのか
- 評価が下がるのか
という不安を、話が始まる前から抱えています。
その状態でいきなり本題に入ると、頭は内容ではなく、防御に向いてしまいます。
おすすめの前置きフレーズ(そのまま使えます)
新人や付き合いが浅い人には、 まずこの一言を置いてください。
「最初に言っておくけど、ここは犯人探しをする場所じゃないよ」
たったこれだけで、
- 防御が下がる
- 話を聞く姿勢になる
- 本音が出やすくなる
空気が一気に変わります。

この一言で、 「逃げる場」から「考える場」に変わる。
前置きは「免罪符」ではなく「安全宣言」
ここで大事なのは、前置きは、ミスを許す宣言ではないということです。
前置きの役割は、
- 責めない
- 裁かない
- 一緒に考える
姿勢を先に伝えることです。
「分かってるよね?」は新人にはNG
新人に対して、
これは、ほぼ確実に逆効果です。新人は、
- 分かっていないかもしれない
- 覚えきれていないかもしれない
- 緊張して聞けていないかもしれない
状態だからです。
おすすめの言い換えは、こちらです。
「まだ全部は伝えきれてないと思うから、説明するね」

相手を否定せずに、 自分の伝え不足に寄せる。
新人は「理解」より「安心」が先
新人が改善の話に参加できるようになるには、理解より先に、安心が必要です。
安心できて初めて、
- 質問できる
- 分からないと言える
- 次の話ができる
ようになります。
前置きは、文化を作る言葉
この前置きを、
- 新人にも
- ベテランにも
同じトーンで使い続けると、
- 報告が早くなる
- 言い訳が減る
- 隠さなくなる
という変化が出てきます。

前置きはテクニックじゃない。 店の空気を作る言葉。
次の章では、クレーム・廃棄対応で使える 「軸になる一言」を紹介します。

クレーム・廃棄対応で使える「軸になる一言」

クレームや廃棄が発生した直後は、
- 現場がバタついている
- 感情が動いている
- 誰も余裕がない
そんな状態になりがちです。
だからこそ、この場面では話の軸になる一言を、先に置くことがとても重要になります。
まず置きたい一言は、これ
「まず、次に同じことを起こさないために考えよう」
この一言には、次の意味が含まれています。
- 誰かを責める場ではない
- 過去を裁く時間ではない
- 未来の話をする場である
たった一言ですが、 場の向きが一気に揃います。
「私の責任じゃない」が出た時の返し方
相手が、
「それ、私がやったわけじゃないので…」
と言った場合、 おすすめの返しはこうです。
「うん、やった人の話じゃなくて、 次どうするかの話をしたいんだ」
この返し方には、
- 否定しない
- 同意もしすぎない
- 話題を未来に戻す
というバランスがあります。

正すより、 話の向きを戻す。
感情が強い時ほど「事実」に寄せる
クレームや廃棄の場面では、感情の言葉が出やすくなります。
- 「なんでこうなったの?」
- 「ありえないよね」
そんな時こそ、事実に戻す一言を挟みます。
「起きた事実を一回整理しよう」
責任を問われそうな空気を感じたら
現場の空気が、「誰のせいか」に向きそうな時は、 この一言を挟んでください。
「責任の話は、今はしないよ」
続けて、
「今は、再発しない形を作るのが先」
と補足します。

責任を曖昧にするんじゃない。 順番を守るだけ。
「軸の一言」を決めておくと、現場は楽になる
この「軸になる一言」を、
- 店長が
- オーナーが
毎回同じように使うことで、
- 話が脱線しにくくなる
- 言い訳が減る
- 改善に集中できる
ようになります。
次はいよいよまとめとして、この考え方が現場にもたらす変化を整理します。

まとめ|「責任」を責めない店は、強くなる

クレームや廃棄が起きた時、 現場で聞こえてくる
「私の責任じゃないです」
という言葉。
この一言に、 つい感情が動いてしまうのは自然なことです。
ですが、この記事でお伝えしてきた通り、
責任論に引きずられると、現場は弱くなる
「誰が悪いのか」 「誰のミスなのか」
この話に入った瞬間、 現場はこう変わります。
- 報告が遅くなる
- 本音が出なくなる
- 問題が見えなくなる
結果として、同じトラブルが繰り返されるという悪循環に入ってしまいます。

責任を追及すると、 問題は減らずに“隠れる”。
強い店は「責任」より「立場」で話す
現場が前に進む店は、
- 誰がやったか
- 誰の責任か
ではなく、「次を良くできる立場にいるか」で話をします。
そのために、
- 前置きで安心を作り
- 話の軸を未来に置き
- 同じ言葉を使い続ける
という工夫をしています。
今日からできる、たった一つのこと
もし、次に
「私の責任じゃないです」
と言われたら、 まずこの一言を置いてみてください。
「誰がやったかじゃなくて、 次どうするかを一緒に考えよう」
それだけで、
- 話の向きが揃い
- 空気が落ち着き
- 改善の話が始まります

人を責めない。 でも、流さない。 それが現場を強くするバランス。
最後に
クレームや廃棄は、 どんな店でも起きます。
差が出るのは、起きた後に、どんな会話をしているかです。
この記事が、
- 新人との距離感に悩んでいる方
- 責任の押し付け合いに疲れている方
- 現場を少しでも良くしたい方
にとって、「言葉の選び方」を見直すきっかけになれば嬉しいです。
店長・オーナー向けチェックリスト

完璧な対応はいらない。 「責めない軸」を持っているかどうか。
もし今、
- 報告が遅い
- 言い訳が多い
- 本音が出てこない
と感じているなら、スタッフを変える前に、 自分の最初の一言を見直してみてください。
クレームや廃棄は、 現場を壊す出来事ではありません。
対応の仕方次第で、 チームを強くするきっかけになります。
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