募集していないのに人が集まる店の共通点|「ここで働きたい」と言われる理由
人手不足が続く中で、
「求人を出しても全然人が来ない」
そんな声を、現場では本当によく聞きます。
実際、最低賃金の引き上げ、深夜帯の敬遠、
若い世代の働き方の変化など、
採用を取り巻く環境は年々厳しくなっています。
ところが、現場に立っていると、
少し不思議な光景に出会うことがあります。
- 求人広告は出していない
- アルバイト募集の張り紙もしていない
- 特別に条件が良いわけでもない
それでも、
「ここで働けますか?」
「アルバイトって募集してますか?」
と、お客さんのほうから声をかけられる店が、確かに存在します。
私の店でも、こうしたケースは決して珍しくありません。
実際に、募集をかけていないタイミングで声をかけられ、
そのまま採用につながったことも何度もあります。
では、この違いはどこから生まれているのでしょうか。
条件なのか。
立地なのか。
それとも、たまたま運が良かっただけなのか。
今回の記事では、
「募集していないのに人が集まる店」に共通している考え方や現場の特徴を、
コンビニ経営の現場で感じてきた実体験をもとに整理していきます。
人手不足に悩んでいる方ほど、
「求人の前に見直すべきポイント」が見えてくるはずです。

「たまたま」じゃないんですよね。
人が集まる店には、
ちゃんと理由が積み重なっています。
「募集していないのに人が来る」は偶然ではない

まず、ここで一番お伝えしたいのは、
これは決して偶然ではないということです。
よくある説明として、
- たまたまタイミングが良かった
- 運が良かっただけ
- 立地が良いからだろう
こうした理由を挙げられることがあります。
ですが、現場で見てきた感覚として、
それだけで何度も「働きたい」と言われることはありません。
一度きりなら偶然、何度も続くなら理由がある
確かに、1回だけであれば偶然の可能性もあります。
ですが、
- 募集していないのに声をかけられる
- 数ヶ月後、別の人からも同じように聞かれる
こうしたことが何度も起きている店には、
必ず共通する「土台」があります。
それは、
日々の営業の中で、無意識のうちに「選ばれる要素」が積み重なっているという点です。
採用は、求人広告だけで起きているわけではない
採用というと、
- 求人サイトに載せる
- 時給を上げる
- 条件を見直す
こうした「募集の工夫」を思い浮かべがちです。
もちろん、それらも大切です。
ですが実際の現場では、
求人を出す前の段階で、すでに評価が始まっている
と感じる場面が多くあります。
お客さんとして通っている間に、
- 店の雰囲気
- 店員同士の関係
- 忙しい時間帯の空気感
こうした部分を見て、
「ここなら働けそう」「ここは安心できそう」
と、無意識のうちに判断されています。
現場で積み重なったものは、あとから簡単に真似できない
この「選ばれる要素」は、
一朝一夕で作れるものではありません。
日々の接客、
スタッフへの声かけ、
無理をさせすぎないシフトづくり。
そうした積み重ねが、
結果として
「募集していないのに人が来る店」
を作っているのだと思います。
求人広告を工夫する前に、
「今の現場はどう見えているか」を考えるほうが、
実は近道だったりします。

子どもの頃から見られているという現実

「働きたい」と声をかけてくれる人の多くは、
実は“初めての来店客”ではありません。
私の店の場合でも、
話を聞いてみると、
「昔からこの店、よく来てました」
「小学生の頃から利用してました」
そんな言葉が返ってくることがよくあります。
小学生・中学生の頃から店は記憶されている
特に印象に残っているのが、
小学生・中学生の頃から通ってくれていた子たちです。
- 放課後に立ち寄る
- 友達とお菓子を買いに来る
- 部活帰りに飲み物を買う
こうした何気ない利用の中で、
店の雰囲気や店員の様子は、自然と記憶に残っていきます。
このとき、
こちらは「将来の採用」など意識していません。
それでも、
- どんな空気の店なのか
- 店員同士がどう接しているか
- 忙しいときにピリピリしていないか
といった部分は、
しっかり見られています。
「働ける年齢」になったときに思い出される店
高校生になり、
アルバイトができる年齢になったタイミングで、
「あ、あの店なら…」
と、候補に挙がるかどうか。
ここで選ばれる店と、
最初から外される店が、はっきり分かれます。
実際に、
「働けるようになったら、ここで働きたいと思ってました」
と声をかけられたとき、
日々の営業の積み重ねは、確実に届いていると感じました。

子ども相手だからといって、
手を抜いた接客は、必ず覚えられています。
逆に、普通の対応こそが一番の信頼になります。
店が「日常の一部」になっているかどうか
声をかけてもらえる店は、
共通して特別な店というより、
「日常の中に自然にある店」
として認識されています。
- 入りづらくない
- 変に緊張しない
- 嫌な思いをした記憶がない
この「嫌な記憶がない」というのは、
実はとても大きなポイントです。
採用の場面では、
強い魅力よりも、
マイナスがないことが選ばれる理由になることも多いからです。

働く側は「条件」だけを見ていない

アルバイトやパートを選ぶとき、
時給・時間帯・曜日などの条件が大事なのは間違いありません。
実際、求人広告を見るときも、
まず目に入るのは条件の部分でしょう。
ですが、現場で見ていると、
条件だけで判断されていないケースが、想像以上に多いと感じます。
お客さんとして見ていた「店の空気」
働きたいと声をかけてくれる人の多くは、
すでにお客さんとして、その店を何度も利用しています。
その中で、自然と見ているのが、
- 店員同士の雰囲気
- 忙しいときの対応
- ミスが起きたときの空気
これらは、
求人票には一切書かれていませんが、
実際には強く印象に残るポイントです。
例えば、
「忙しそうだけど、怒鳴り声は聞こえない」
「大変そうだけど、ピリピリしていない」
こうした印象は、
『ここで働いたらどうなるか』を想像する材料になります。
「ここなら続けられそう」という感覚
働く側が本当に気にしているのは、
「続けられるかどうか」
という点です。
どれだけ時給が高くても、
精神的にきつそうな職場は避けられます。
逆に、
- 無理をさせられなさそう
- 困ったときに聞けそう
- 人間関係が荒れていなさそう
こうした要素が感じられると、
条件が多少劣っていても、
「ここがいい」と選ばれることがあります。

時給はあとから慣れますが、
空気の悪さには、誰も慣れません。
感覚的な安心感が、応募の一歩を後押しする
「ここで働けますか?」
と声をかける行動自体、
実はかなり勇気がいるものです。
それでも声をかけてもらえるということは、
- 拒絶されなさそう
- 雑に扱われなさそう
という感覚が、すでに伝わっている証拠です。
条件は数字で比較できますが、
この感覚的な安心感は、
日々の現場からしか生まれません。

「安心して働けそう」は最大の採用力

募集していないのに人が集まる店には、
共通して感じられるものがあります。
それが、
「安心して働けそうだな」という空気です。
これは、特別な制度や派手な取り組みで生まれるものではありません。
完璧なオペレーションより「無理をしていない現場」
現場をよく見ていると、
「人が集まる店=完璧な店」ではないことに気づきます。
多少バタつく時間帯があっても、
- 誰かにすべてを押し付けていない
- ミスが起きても責め立てない
- フォローし合う空気がある
こうした様子が見える店は、
お客さんから見ても、
「ここ、無理してないな」
「ここなら何とかやっていけそうだな」
と感じてもらいやすくなります。
逆に、
常にギリギリで回している現場は、
その緊張感がそのまま外にも伝わります。

忙しさは隠せませんが、
無理をしているかどうかは、もっと隠せません。
「怒られそう」「聞きづらそう」は一瞬で伝わる
働く側が一番避けたいのは、
「怒られそうな職場」
「聞きづらそうな職場」
です。
これも、
お客さんとして利用している中で、
自然と判断されています。
- ミスした店員に対する声のかけ方
- 忙しいときの表情
- イレギュラー対応時の空気
こうした場面を一度でも目にすると、
「ここはやめておこう」と、
候補から外されてしまうこともあります。
「普通に続けられそう」が一番強い
採用の現場で強いのは、
「すごく良さそう」よりも「普通に続けられそう」
という印象です。
- 厳しすぎなさそう
- 放置されなさそう
- ちゃんと教えてもらえそう
この「普通」が伝わる店は、
結果的に選ばれやすくなります。

常連客との関係性が生む「信頼」

募集していないのに人が集まる店を見ていると、
もう一つ、はっきりとした共通点があります。
それが、
常連客との関係性が自然に築かれていることです。
日々の接客が「店の空気」をつくっている
常連客との関係性といっても、
特別なことをしているわけではありません。
- 顔を覚えて挨拶する
- 目が合ったら一言声をかける
- 無理に距離を詰めすぎない
こうしたごく普通の接客の積み重ねが、
店全体の空気をつくっています。
この空気感は、
初めて来た人にも、
何となく伝わるものです。
「ここ、感じいいよね」という無言の評価
常連客が多い店には、
共通してこんな雰囲気があります。
- 挨拶が自然に交わされている
- 会話がなくても居心地が悪くない
- 店員も客も、過度に構えていない
この状態を見て、
お客さんは無意識のうちに、
「この店、感じいいな」
と評価しています。
その評価は、
「また来たい」という気持ちだけでなく、
「ここで働くのも悪くなさそう」
という感覚にもつながります。
営業そのものが採用活動になっている
こうして見ていくと、
採用と営業は、決して別物ではありません。
日々の営業の中で、
- スタッフがどう扱われているか
- お客さんとどう向き合っているか
- 店全体がどんな空気で回っているか
これらすべてが、
「この店はどういう職場か」という情報として、
外に伝わっています。

求人広告で作れる印象より、
日々の営業で伝わる印象のほうが、
はるかに強く残ります。
信頼がある店は「声をかけやすい」
「ここで働けますか?」
と声をかけるには、
相当な心理的ハードルがあります。
それでも声をかけてもらえるということは、
この店なら、ちゃんと話を聞いてもらえそう
雑に断られなさそう
そう思ってもらえている証拠です。

条件を上げなくても選ばれる理由

人手不足の話になると、
どうしても話題に上がるのが
「時給を上げないと人が来ない」
という考え方です。
もちろん、条件が大切なのは事実です。
最低賃金の影響もあり、
一定のラインは確実に見られています。
ただ、現場で感じているのは、
条件だけで勝負している店ほど、疲弊しやすいという現実です。
条件競争は、どこかで限界が来る
時給を少し上げれば、
一時的に応募は増えるかもしれません。
ですが、その状態は長く続きません。
- さらに高い時給の店が出てくる
- 少しでも条件が良い方へ移る
- 結果的に定着しない
こうした流れを、
多くの現場で見てきました。
条件だけで選ばれている場合、
条件が崩れた瞬間に、
簡単に離れてしまうことも少なくありません。
それでも選ばれる店が見ているポイント
一方で、
条件が特別高くなくても、
安定して人が集まる店があります。
そうした店が評価されているのは、
- 無理なシフトを組まれない
- 急な呼び出しが少ない
- 話を聞いてもらえる環境がある
つまり、
「働きやすさ」や「続けやすさ」
の部分です。
これらは、
時給の数字以上に、
働く側の安心材料になります。

条件は入口、
定着を決めるのは、
日々の働きやすさです。
「ここなら長く続けられそう」が最大の評価
働く側が最終的に求めているのは、
「長く続けられるかどうか」
です。
- 学業や家庭と両立できるか
- 体力的に無理がないか
- 精神的に削られないか
こうした点を、
お客さんとして通っている間に、
すでに判断されています。
条件を上げなくても選ばれる店は、
この「長く続けられそう」という感覚を、
自然と伝えられている店です。

人が集まる店は、まず「辞めにくい」

募集していないのに人が集まる店は、
採用がうまくいっているだけではありません。
実はその前段階として、
「辞めにくい環境」ができているという共通点があります。
人が急にいなくならない店の特徴
人が定着している店を見ていると、
いくつか共通する特徴があります。
- シフトが極端に偏らない
- 一人に負担が集中しない
- 突然の穴埋めが常態化していない
こうした環境では、
働く側も
「ここなら、無理せず続けられる」
「急に追い込まれない」
と感じやすくなります。
結果として、
辞める理由そのものが生まれにくくなります。
辞めにくさが、現場の安定を生む
スタッフの入れ替わりが少ない店は、
自然と現場が安定します。
- 教え直しが減る
- 連携が取りやすい
- 余裕が生まれる
この「余裕」が、
次の好循環につながります。
忙しい中でも、
- ピリピリしない
- 必要以上に焦らない
- 新人にも目が向く
こうした空気が、
さらに「働きやすそう」という印象を強めます。

採用を頑張る前に、
まず「今いる人が続けやすいか」を考えるほうが、
結果的に近道になることが多いです。
定着している店ほど、紹介や声かけが生まれる
人が定着している店では、
こんな流れが自然に起きます。
- 友人を紹介してくれる
- 常連客から声をかけられる
- 「ここで働いてるよ」と話題に出る
これらはすべて、
現場が安定しているからこそ起きる現象です。
結果として、
募集していないのに人が集まる
という状態が、自然に作られていきます。
まとめ|「選ばれる店」かどうかを見直す

人手不足の時代になると、
どうしても
「時給を上げないといけない」
「条件を良くしないと人は来ない」
という方向に、考えが引っ張られがちです。
もちろん、条件が大切なのは事実です。
ですが今回見てきたように、
募集していないのに人が集まる店は、
条件だけで選ばれているわけではありません。
人は「働く前」から店を見ている
小学生・中学生の頃から、
お客さんとして何気なく利用していた店。
その中で、
- 店の雰囲気
- 店員同士の関係
- 忙しいときの空気
こうしたものは、
ずっと記憶に残っています。
そして、
働ける年齢になったとき、
「あの店なら…」
と、候補に上がるかどうかが決まります。
求人広告よりも強いのは、日々の営業
求人広告は、
一時的に人を集める力はあります。
ですが、
長く効き続けるのは、日々の営業でつくられる印象
です。
- 無理をしていない現場か
- 怒鳴り声が飛び交っていないか
- 普通に続けられそうか
こうした要素は、
意識しなくても、
確実に外に伝わっています。

採用は、
求人を出した瞬間に始まるのではなく、
日々の営業の中ですでに始まっています。
まずは「今いる人が続けやすいか」を考える
これから採用を考えるなら、
まず見直したいのは、
今いるスタッフが、無理なく続けられているか
という点です。
- 急な穴埋めが多くないか
- 一人に負担が集中していないか
- 相談しづらい空気になっていないか
ここが整ってくると、
現場は安定し、
自然と「働きたい人が集まる土台」ができていきます。
人手不足に悩んでいるときこそ、
求人を出す前に、
「自分の店は、選ばれる店になれているか」
一度立ち止まって、
現場を見直してみてはいかがでしょうか。
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