面接に30分かける理由。“人を見る力”が店の未来をつくる
「面接、どれくらいの時間をかけていますか?」
そう聞かれるたびに、私は「だいたい30分以上ですね」と答えます。
すると決まって返ってくるのは、「そんなに長く?」という反応。
でも私は、この30分が“店の空気”を決める時間だと思っています。
コンビニをはじめ、現場の多くは人手不足。
「誰でもいいから入ってほしい」と焦る気持ちは、私自身何度も味わってきました。
けれど、採用は“人を増やす仕事”ではなく、“店の未来を選ぶ判断”です。
だからこそ、私は面接の時間を削らない。
本記事では、私がなぜ面接に30分かけるのか、そして“人を見る力”がなぜ経営の土台になるのかを、
実体験を交えてお伝えします。

“採用の速さ”より、“人を見抜く深さ”。
人を選ぶ時間が、未来の空気をつくります。
私の面接時間は平均30分。それには理由があります。

面接は“その人のこれから”を見極める時間
私は、スタッフ採用の面接に平均30分かけています。
短いようで長いこの時間には、明確な理由があります。
それは、面接を「スキルを見る場」ではなく、
“その人のこれから”を見極める場として考えているからです。
履歴書や職歴では分からない、
- どんな表情で話すか
- 相手の話をどう受け止めるか
- 小さな気づきにどう反応するか
こうした“数字に表れない部分”こそが、実際の現場で大きな差になります。
つまり、面接とは“過去を聞く時間”ではなく、“未来を想像する時間”なのです。

面接は“見抜く場”ではなく、“見極める場”。
履歴書の文字より、会話の中に人間性が出ます。
「話が続く人」は一緒に働ける人
30分という時間を使うのは、単に長話をしたいからではありません。
面接の中で、“話が続く人”かどうかを確かめるためです。
店舗の仕事はチームワーク。
「話が続く=気持ちのキャッチボールができる人」は、現場でのコミュニケーション力も高い傾向があります。
逆に、会話が途切れがちで、質問にも短くしか答えない人は、
仕事の指示を出すときやトラブル対応の場面で“伝わらない”リスクが高くなります。
だからこそ、私は面接で
- どれだけ話せるかではなく、どんな姿勢で話すか
- どれだけ質問に答えるかではなく、どんな考え方で答えるか
を見ています。
“やります”“できます”では見えない本質
面接では、ほとんどの人が同じように言います。
「頑張ります」「大丈夫です」「やります!」
でも、これは“前向きな言葉”ではあっても、本音とは限りません。
本当に大切なのは、
「どう頑張るのか」「何を大切に働きたいのか」という考え方の軸です。
だから私はあえて、少し意外な質問を投げかけます。
- 最近見た映画で印象に残ったものは?
- 嫌いな作業を頼まれたらどうしますか?
- 周りと意見が合わなかったとき、どう対応しますか?
一見、仕事に関係のない質問のようですが、
こうした問いに対する答えの中に価値観・人柄・思考の深さが自然と表れます。

“やります”より“どうやるか”。
本音が出る質問を投げることで、見えない人間性が浮かび上がります。

「やります」「できます」だけでは見抜けない本質

面接の言葉は“テンプレート”になりやすい
面接の場で、応募者の多くが口にする言葉があります。
「頑張ります」
「大丈夫です」
「やれます」
もちろん、悪い言葉ではありません。
でも、これらは「面接を通過するための言葉」であることが多いのです。
つまり、ここだけを信じて採用すると、
実際に現場で「思った人材と違った」というミスマッチが起きやすくなります。
だからこそ、私はあえて“表面的な答え”ではなく、
その人の考え方や判断の軸を探る質問を投げかけるようにしています。

“できます”は約束ではなく反射。
本音が見える質問をすれば、その人の“働く姿勢”が見えてきます。
質問で“考え方の深さ”を引き出す
たとえば、私は面接でこんな質問をします。
- 最近見た映画や動画で印象に残ったシーンは?
- 苦手な作業を頼まれたらどう感じますか?
- 仲間が困っていたら、あなたはどう動きますか?
一見すると仕事に関係がないようですが、
これらの質問には、その人の価値観・共感力・思考の癖が現れます。
答え方を通して、
- 「この人はどんな視点で物事を見ているか」
- 「相手の立場で考えられるか」
- 「何を大切に働く人なのか」
が自然と伝わってくるのです。
そして、私は“完璧な答え”を求めているわけではありません。
むしろ、少し考え込みながらも自分の言葉で話す人ほど、
真剣に物事に向き合う誠実さを感じます。
“即答できない人”は伸びしろがある
意外かもしれませんが、私は「すぐ答えられない人」を悪いとは思っていません。
むしろ、考えてから話す人ほど誠実で、成長意欲が高い傾向があります。
たとえば、
- 「すぐに答えられないのですが…」と前置きしてから自分の意見を話す人
- 「こういう考え方もあると思います」と、別の角度から話す人
こういう人は、現場でも一方的に動くのではなく、
状況を見て考えながら行動できるタイプです。
採用の現場で大切なのは、瞬発力よりも思考力。
その人が「どう考える人か」を見抜くことで、
採用後の成長スピードやチームの安定感がまったく変わってきます。

即答できない人ほど、考える人。
“考えて話せる力”は、現場で信頼を生む力になります。

「小さな行動」が店を変えると信じている

“気づける人”がいるだけで職場は変わる
私が面接で最も大切にしているのは、
スキルでも経歴でもなく、「気づける人かどうか」という点です。
どんなにマニュアルを整えても、現場では想定外のことが次々に起こります。
そんな時、指示を待つのではなく、自分から気づいて動ける人が1人いるだけで、
店全体の空気が変わるのです。
たとえば、私は面接の中で、次のような状況を想像しながら質問をします。
- 時間外でもゴミが落ちていたら拾う人か?
- 補充作業中にレジが混んでいたら手を止めてサポートできる人か?
- 担当外の棚でも乱れていたら気づける人か?
こうした“ちょっとした行動”ができる人は、どんな職場でも信頼され、
結果としてチームを明るくする人になっていきます。

“気づける力”は、どんなスキルよりも価値がある。
指示がなくても動ける人がいる職場は、自然と雰囲気が良くなります。
“小さな行動”が信頼を生む
店を良くするのは、大きな成果よりも日々の小さな行動です。
たとえば、こんな場面を想像してみてください。
- 落ちている紙ごみを無言で拾ったスタッフ
- 困っている新人にそっと声をかけた先輩
- 一言「ありがとう」を忘れずに伝える人
このような積み重ねが、お客様や仲間からの信頼を作る土台になります。
そして、その信頼が積み重なると、店全体の空気が良くなり、
「またここで働きたい」「また来たい」と思える環境が生まれるのです。
行動できる人は“連鎖”を起こす
自発的に動ける人が1人いるだけで、
その行動は周囲のスタッフに“良い連鎖”を生みます。
「〇〇さんがやっているなら、自分もやろう」
この一言が出る職場は、指示を出さなくても自然と動くチームになります。
私は、面接の会話の中でもその“芽”を感じ取るようにしています。
受け答えの中で、
- 「気づいたらやっていました」
- 「困っている人を見ると放っておけません」
といった言葉が出る人は、現場で確実にプラスの影響を与える存在になります。

1人の“自発的な人”がいるだけで、職場は変わる。
人の空気を動かせる人こそ、数字に出ない最高の戦力です。

まとめ:採用は「今の人手」ではなく「未来の店」を見る目

“今足りない”より“これから伸びる”を選ぶ
人手不足が続く中、どうしても「誰でもいいから入ってほしい」と思ってしまう瞬間があります。
でも、採用とは「今の穴を埋める」ことではなく、「未来のチームを作る」判断です。
焦って採った1人が、現場の空気を悪くすることもあれば、
じっくり選んだ1人が、職場の雰囲気を一変させることもあります。
採用で見るべきなのは、
- 今のスキルではなく、これから伸びる姿
- 即戦力よりも、信頼して任せられる人柄
- 指示待ちより、自分から気づいて動ける姿勢
つまり、採用とは「人を増やす仕事」ではなく、「未来を育てる経営判断」なのです。

採用は“数合わせ”ではなく“未来づくり”。
今を支える人ではなく、これから店を支える人を選びましょう。
“面接30分”は未来への投資時間
私は、面接に30分かけることを「時間のロス」だと思ったことがありません。
むしろ、一番効率的な経営の時間だと感じています。
その30分で見極められるのは、
「この人が店の空気を良くする人か」「一緒に成長できる人か」という部分。
採用は、商品発注や経費管理よりも経営判断の中で最も人間的な仕事です。
数字では測れない部分こそ、店の未来を左右します。
だからこそ、焦らず、時間をかけて選ぶことが何よりも大切です。
信頼でつながるチームが店を強くする
結局、どんなに設備が整っていても、
店を支えてくれるのは「人」と「信頼」です。
採用とは、その信頼関係を築く“最初の一歩”。
どんな小さな店でも、信頼できる人が1人いれば、そこに空気の良いチームが生まれます。
焦らず、信念を持って人を選ぶこと。
その覚悟が、店を長く続けるための最強の経営力になります。

採用は“今日の課題”ではなく、“明日の希望”。
信頼できる人を選ぶことが、あなたの店を未来へつなげます。
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