年末商戦を終えて感じた消費行動の変化|衝動買いから「予定の立つ売上」へ
クリスマス商戦が終わり、
おせちや年末年始向け商品の販売も一段落するこの時期。
毎年のことではありますが、
今年は特に、
「消費行動が変わってきている」
と強く感じました。
売上が落ちている、という単純な話ではありません。
むしろ、
- 買い方が変わった
- 選び方が変わった
- お金の使い方が変わった
そんな印象です。
今年、特に感じたのは、
衝動的な購入が、明らかに減っている
ということでした。
以前であれば、
- なんとなく目に入ったから
- その場の雰囲気で
- 「今日は特別だから」
といった理由で、
商品を手に取る場面がもっと多くありました。
しかし最近は、
- 本当に必要か
- 量は適切か
- 価格に納得できるか
を考えたうえで、
購入を判断しているお客様が増えているように感じます。
この変化は、
決して一時的なものではなく、
今後の売り方や発注の考え方にも、
大きく影響してくるはずです。
この記事では、
- 年末商戦を通して感じた消費行動の変化
- クリスマスケーキに見えた分かりやすい兆し
- 「売れるかもしれない売上」から「予定の立つ売上」への転換
について、
現場で見てきた感覚をもとに整理していきます。
これからの売場づくりや発注判断を考えるうえで、
一つのヒントになれば幸いです。
物価上昇で「ついで買い」が減っている

「なんとなく買う」が起きにくくなった
物価の上昇が続く中で、
お客様の買い方は、確実に慎重になっているように感じます。
以前であれば、
- ついでに買っておこう
- せっかくだし買って帰ろう
- 今日は特別だから
そんな「衝動買い」や「勢いの追加購入」が、
店頭ではもっと起きていました。
しかし最近は、
そうした動きが明らかに減っている印象です。
買う前に「量」と「価格」を見ている
今のお客様は、
- 量に対して価格は妥当か
- 自分(家族)に必要な量か
- 食べきれるか
この3点を、買う前に見ています。
結果として、
- 必要な分だけ買う
- 無駄になるものは買わない
という選び方が、より強くなっています。
「見せれば売れる」は弱くなっている
これまで小売では、
店頭で強く見せることで、
- 衝動買いを誘発する
という売り方が、一定機能していました。
もちろん今でもゼロではありません。
ですが、以前ほど強くはありません。
見せた瞬間に買う、というより、
「一旦考える」
「必要かどうか判断してから買う」
お客様が増えています。

「出しておけば売れる」から、
「納得されるものが売れる」へ変わってきた感覚があります。
この変化は、年末商戦ほど分かりやすい
年末商戦は、
「特別な日」が続く時期です。
だからこそ、以前は衝動買いが起きやすく、
店頭の勢いが売上を押し上げる場面も多くありました。
しかし今年は、
その勢いが以前ほど感じられなかった。
ここに、消費行動の変化がはっきり出ていると感じました。

クリスマスケーキに見る変化

店頭のホールケーキ需要が、以前ほど強くない
分かりやすい例が、クリスマスケーキです。
以前は、店頭にホールケーキを並べておくと、
- 「今日はこれでいいか」とその場で買う
- 見た目の華やかさで勢いがつく
- ついでに他の商品も動く
こうした流れが生まれやすい印象がありました。
ところが今年は、
店頭でのホールケーキ需要が、かなり弱くなっているように感じました。
「ケーキが売れない」というより、
買い方が変わっているという感覚です。
ホールケーキは「計画購入」へ
ホールケーキそのものが不要になったわけではありません。
購入している層は、むしろ明確で、
- 事前に予約をしている
- 専門店で注文している
- 家族構成や人数を考えて選んでいる
つまり「衝動」ではなく、
計画的に買う層に寄ってきている印象です。
コンビニでも、
事前予約をしているケースが増えていると感じました。
店頭で伸びているのは「小さいサイズ」
一方で、店頭で伸びていると感じるのが、
小さいサイズのケーキです。
理由は分かりやすく、
- 単身でも食べきれる
- 高齢者でも無理なく食べられる量
- 「今日はこれくらいでいい」という選択に合う
こうした個食ニーズに、
需要が集まっているように感じます。
「家族で囲む特別な日」よりも、
「無理のない範囲で楽しむ」へ。
そんな意識の変化が、
店頭の動きにも出ているのかもしれません。
見せ売りより「納得」が必要になっている
ここまでの変化を見ると、
店頭の売り方も変わっていく必要があると感じます。
以前のように、
- 大量に並べて雰囲気で売る
- 勢いで買ってもらう
だけでは、売上が作りづらい。
これからは、
「なぜこれを買うのか」
「このサイズがちょうどいい」
「この価格なら納得」
そう思ってもらえる設計が、より重要になっていくと感じました。

「売れるかもしれない売上」から「予定の立つ売上」へ

期待で作る売上は、リスクも一緒に抱える
これまでの年末商戦では、
- 並べておけば売れるかもしれない
- 勢いが出れば一気に動くかもしれない
そんな「期待」を前提にした売上づくりが、
一定の役割を果たしてきました。
ですが、その売り方は同時に、
- 在庫が残るリスク
- 廃棄が増える不安
- 現場の負担
も抱えています。
衝動買いが弱くなっている今、
このリスクは、以前よりもはっきり表に出てきています。
予約がある売上は、数字が先に見える
一方で、予約が入っている売上は、
- 数量が事前に分かる
- 発注が組みやすい
- 廃棄の心配が少ない
という特徴があります。
派手さはありませんが、
確実性が高い売上です。
ホールケーキの予約販売が増えているのは、
お客様だけでなく、
店舗側にとってもメリットが大きい形だと感じます。
数字が読めると、現場が落ち着く
売上がある程度読めていると、
- 発注判断に迷いが減る
- 在庫への不安が少ない
- 現場の空気が落ち着く
といった変化が起きます。
これは、売上金額以上に、
現場にとって大きな価値です。
勢いに頼らない売り方は、
派手さはなくても、
長く続けられる形だと感じています。

数字が見える売上は、
判断を楽にしてくれます。
「売れるかも」を減らし、「決まっている」を増やす
これからの売場づくりでは、
- 売れるかもしれない商品
を増やすよりも、
- すでに決まっている需要
- 確実に必要とされている量
を、どう積み上げるか。
その視点が、
ますます重要になってくると感じました。

翌年に向けて考えるべきこと

発注は「勢い」より「根拠」を重視する
今回の年末商戦を振り返って、
強く感じたのは、発注の考え方です。
これまでは、
- 去年売れたから今年も出す
- 並べておけば動くはず
といった、
経験と感覚に頼った判断が多かったように思います。
しかし今は、
- 本当に必要とされている量か
- 誰が、どんな場面で買うのか
- 予約や事前需要はどれくらいあるのか
こうした「根拠」を持った発注が、
より重要になってきています。
予約販売は「売上」だけでなく「安心」を作る
予約販売が増えることで、
- 売上が事前に見える
- 在庫リスクが下がる
- 現場の不安が減る
といった効果があります。
これは単なる売上施策ではなく、
現場を安定させる仕組みでもあります。
年末年始のような忙しい時期ほど、
「分かっている数字」があることの価値は大きい。
翌年以降は、
- 予約で取れるものは予約中心に
- 店頭は補完的な役割に
そんなバランスを意識していきたいと感じました。
個食・小容量ニーズを前提にする
今回特に感じたのは、
個食・小容量ニーズの強さです。
家族向け・大人数向けの商品よりも、
- 一人で無理なく食べられる
- 量がちょうどいい
- 価格に納得できる
そうした商品が、
選ばれやすくなっています。
これは年末商戦に限らず、
今後も続いていく流れだと思います。
売場づくりも、
「特別感」より「無理のなさ」
を意識した構成が、
求められていくのかもしれません。

まとめ|「勢いの売上」から「予定の立つ売上」へ

年末商戦を通して感じたのは、
- 衝動買いは確実に減っている
- 計画的な購入が増えている
- 個食・小容量ニーズが強まっている
という、消費行動の変化です。
これは、
売れなくなった
という話ではありません。
売れ方が変わった、ということだと思います。
これからは、
- 売れるかもしれない売上を追う
- 勢いに期待する
よりも、
- 予定の立つ売上を積み上げる
- 数字が読める形を作る
そんな売り方へ、
少しずつシフトしていく必要があると感じました。
年末商戦を終えた今だからこそ、
この変化を一度整理し、
翌年の売場と発注に活かしていきたい。
これは、
今の空気感と現場判断を残す、
とても大切な記録だと思っています。

