商品種類の最適化|店長・発注担当者がやってはいけない棚づくりと正しい判断軸
「商品は多ければ多いほどお客様に喜ばれる」 店長・発注担当者なら、一度はそう考えたことがあると思います。
しかし、現場をよく見るとこんな悩みが出てきます。
- 種類を増やしたら廃棄が一気に増えた
- 在庫が薄くなり欠品が多発した
- 棚がゴチャついて売場の密度感だけ落ちた
- 新商品を入れるたびにオペレーションが崩れる
実はこれ、どの店舗でも起こる“見えないコスト”です。 商品数を増やすと“お客様に喜ばれるように見える”のですが、 裏では廃棄・欠品・棚乱れ・作業負荷=利益の流出が同時に発生します。
つまり、商品種類の最適化とは……
「増やす or 減らす」という単純な話ではなく、
“あなたの店舗にとって最も利益が残るライン”を設計すること。
この記事では、店長・発注担当者が必ず知っておくべき 「商品種類を増やすメリット・減らすメリット」と、 現場で即使える“最適化の判断軸”をわかりやすくまとめています。

種類を“闇雲に増やす”ほど店は弱くなるんです。 大切なのは、あなたのお店に合った最適バランスを見つけることですよ。
商品種類を増やすメリットと“見えないコスト”

「商品種類を増やす=お客様に喜ばれる」 この考え方は半分正しく、半分リスクがあります。 メリットも大きい一方で、店長や発注担当者が見落としがちな“裏側のコスト”が確実に存在するからです。
まずは、商品種類を増やすことのメリットから整理し、 その後に“必ずセットで発生するコスト”を具体的に見ていきます。
① 種類を増やすメリット(お客様視点)
商品種類を増やすことには、確かに明確なメリットがあります。
- 選択肢が増えるため満足度が高い
- 売場が華やかに見える(棚の密度が上がる)
- SNS映えする新商品を陳列しやすい(話題づくり)
- 豊富に揃っている店という好印象を得やすい
とくに競合店が近いエリアでは、 「種類が多い=強い店」と見られやすいのも事実です。
② しかし、種類を増やすと発生する“見えないコスト”
ここからが店長・発注担当者が最も向き合うべき部分です。 種類を増やすと、表から見えないコストが必ず発生します。
- 廃棄ロスが増える(=粗利直撃)
- 棚の在庫が薄くなり欠品が増える
- 発注難易度が上がり、漏れが発生しやすい
- 出庫・補充の巡回回数が増え、作業が重くなる
- 売場が散らかりやすく、フェースが揃わない
つまり、種類を増やすほど「運営コスト」+「作業負荷」+「サービス品質低下」が同時発生します。

種類を増やすのは簡単ですが、
“売り切る力”が追いつかないと粗利が一気に削られてしまいます。
③ なぜ種類が増えると現場が崩れやすいのか?
理由はとてもシンプルです。 種類が増えると、1つ1つの棚の在庫が薄くなり、「欠品」と「廃棄」が同時に起きやすくなるからです。
現場で実際に起こること:
- 棚割りが崩れ、見栄えが悪くなる
- 回転が悪い商品が増え、滞留ロスが生まれる
- 発注が複雑化し、判断ミスが起きやすい
- 欠品が多く、売れる商品が売れない
- 新人スタッフが補充しづらく、教育負担が増える
これは必ずしも店長の力量ではなく、 “仕組みとして崩れやすい状態”を作ってしまっているだけです。
④ 実は「種類を減らすほうが売れる」ケースのほうが多い
商品種類を減らすと、お客様にとって次のようなメリットがあります。
- 棚がスッキリして見やすくなる
- 選びやすくなり、購入率が上がる
- 動きがある商品だけが残り、回転率が改善
- 店全体のオペレーションが軽くなりサービス品質が上がる
実際、多くのお客様は 「種類の多さ」より「探しやすさ・買いやすさ」を評価します。
つまり、店長が考える以上に、 “過剰に絞った棚”のほうが満足度が高くなるケースは非常に多いのです。

本当に動く商品だけに絞ると、棚が一気に活気づきます。
売場が“整う”と、数字も自然に整ってくるんですよね。

商品種類を減らすメリットと、見落としがちな顧客心理

「種類を増やす」には見えないコストがある一方、 実は“種類を減らす”ことで売れる棚に変わるケースも非常に多いです。
ここでは、商品種類を減らしたときに起きるメリットと、 店長が見落としがちな“顧客心理の変化”について解説します。
① 商品種類を減らすメリット(店長・発注担当者視点)
種類を減らすと、一見“縮小したように見える”ため不安を感じるかもしれません。 しかし、実務的には次のような大きなメリットがあります。
- 廃棄が減り、粗利が安定する
- 発注が簡単になり、ミス・漏れが減る
- 補充・前出しが楽になり、作業が軽くなる
- 在庫が濃くなるため欠品しにくい棚が作れる
- 回転率が改善し、良い循環が生まれる
- 棚の印象が整い、“管理の行き届いた店”になる
② なぜ“少ない棚”のほうが買いやすいのか?(顧客心理)
実は、お客様は“種類の多さ”ではなく、“選びやすさ”を求めています。 これは心理学でも説明されている「選択肢過多のパラドックス」が典型例です。
種類が多すぎると……
逆に種類を絞ると……
これは実際のPOSデータとも一致しており、 種類を絞った棚の方が売上も粗利も安定しやすい傾向があります。

実は“よく見える棚”って、種類が少ないんですよね。 お客様が迷わず買える棚ほど、売上も粗利も伸びやすくなるんです。
③ 種類を減らすとスタッフの動きが改善する理由
少ない棚は、お客様だけでなくスタッフの動きにも大きなプラスをもたらします。
つまり、種類を減らすことは “スタッフのやりやすさ”=オペレーションの安定につながります。
④ 種類を減らすは「縮小」ではなく「最適化」
種類を減らすことを“後ろ向き”に感じる店長もいますが、 実際にはこれは利益とオペレーションを守るための積極的な戦略です。
減らす=廃棄リスクを減らし、欠品リスクも減り、スタッフの負荷も減る。 結果として、店舗全体のサービス水準・収益性・店舗印象が上がります。
つまり種類を減らすのは、店舗を強くするための“攻めの判断”なのです。

種類を減らすほど、お店は“整う”んです。 その整った状態こそが、お店の強さにつながるんですよ。

では、どう判断するのが正しいのか?(最適化の判断軸)

商品種類は「増やすべき」か「減らすべき」か。 多くの店長・発注担当者が迷うテーマですが、 答えはとてもシンプルで、次の3つを満たす棚が最適解です。
その判断のために欠かせない基準を、ここから具体的に整理します。
① 「増やす」のではなく「入れ替える」という発想
まず押さえるべきは、 種類は“増やす”のではなく、“入れ替える”ものという考え方です。
棚を常に新鮮に保ち、顧客満足度を維持するコツは「総量を増やすこと」ではありません。
- 古くなった商品 → 新商品
- 回転が弱い商品 → 旬商品
- 定番の一部 → イベント商品
のように、棚の総量は変えずにラインナップを循環させるだけで十分です。
② コア商品は“深く”、周辺商品は“薄く”
棚が崩れる店の多くは、 売れ筋(コア商品)と売れない商品(周辺商品)の厚みが逆転していることが多いです。
理想の棚はこうです:
- 売れ筋(おにぎり定番・カップ麺定番など) → フェース厚く・在庫濃く
- ニッチ商品・限定品 → フェースは薄く、在庫少なく
これにより、欠品・廃棄のバランスが安定します。

売れ筋を“深く”置くことは、発注担当者の最も大切な仕事です。
深さがない棚は、どれだけ種類を増やしても強くなりません。
③ 「広く」ではなく「選ばれる棚」をつくる
種類を増やすと棚が豊かに見える一方で、 お客様が“選びにくい棚”になりがちです。
逆に種類を絞ると棚が“スカスカ”に見えるのでは? と不安に思うかもしれませんが、実際にはこうなります。
- 視認性が上がり棚が整って見える
- 探しやすくなり購入率が上がる
- 売れる商品がより売れる棚に変わる
つまり店長が目指すべきは、 「広い棚」ではなく「選ばれる棚」です。
④ 店長・発注担当者が持つべき“判断の基準”
商品種類の最適化において、店長・発注担当者が持つべき基準は次の3つです。
- ① オペレーションが崩れないか?
- ② 売れ筋の深さを損なっていないか?
- ③ お客様にとって選びやすい棚か?
この3つをクリアしていれば、種類が多くても少なくても正解です。 逆に1つでも崩れていると、廃棄増加・欠品・作業崩壊へ直結します。

“種類が正解”なのではなく、
“バランスを設計できるのが正解”。 店長の判断はそこがすべてです。

店長が最優先すべきは「スタッフのやりやすさ」

商品種類の最適化を考えるうえで、最初に優先すべきなのは “お客様”ではなく、“スタッフのやりやすさ”です。
なぜなら、オペレーションが崩れた状態では どれだけ種類を増やしても、お客様満足度は下がる一方だからです。
ここでは、スタッフのやりやすさを優先すべき理由と、 種類数が作業に与える影響を具体的に解説します。
① なぜ「スタッフのやりやすさ」が最優先なのか?
理由はとてもシンプルです。 オペレーションが崩れる=結果的にお客様満足度が下がるからです。
オペレーションが崩れると……
- 品出しが遅れる → 売場が薄くなる
- 欠品が増える → 売れる商品が売れない
- 廃棄が増える → 粗利が落ちる
- 棚が乱れる → 店の印象が悪くなる
- 作業が追いつかず → スタッフが疲弊する
結果として、 お客様満足度も売上も、すべて下向きになっていきます。
② 在庫管理が追いつかない状態で種類を増やすと“負の連鎖”になる
棚管理・発注・補充のサイクルが整っていない店舗で種類を増やすと、 ほぼ確実に負の連鎖が起きます。
負の連鎖とは以下の状態です。
- 種類が増える → 商品1つあたりの在庫が薄くなる
- 在庫が薄い → 欠品が増える
- 動かない商品が滞留する → 廃棄ロスが増える
- 棚が乱れやすくなる → 前出しに追われる
- スタッフが疲弊する → サービス品質が落ちる
これが続くと、 「種類は多いのに売れない棚」という最悪の状態に陥ります。

いちばん危険なのは、オペレーション不安定のまま種類を増やすこと。
売れ筋が薄くなり、お店がどんどん弱くなります。
③ オペレーションが整うと「棚の再設計」ができる
スタッフが余裕を持ち、棚管理が安定してくると、 店長は“棚を再設計する力”を取り戻します。
オペレーションが整った店でできること:
- 売場の整理に手が回る(棚が揃う)
- データで商品力を判断できる
- どの商品を増やすべきか、減らすべきか判断できる
- 回転率の改善サイクルが回り始める
逆にオペレーションが整っていない店では、 どれだけ良い商品を入れても棚が育ちません。
④ オペレーション不安ありの店長が取るべき“正しい順番”
あなたが店長として迷ったとき、 商品の種類よりも優先すべきは“順番”です。
正しい順番とは……
- まずは「やりやすさ」(=種類を絞る)から入る
- 棚が整い、スタッフが慣れたら種類を徐々に増やす
- セール・新商品で種類が一気に増える時期は特に注意
種類が多いほど「手離れが悪い棚」になります。 棚が弱っている時期に種類を増やすと、崩壊するリスクが大きくなります。

種類を増やすのは“棚が育ってから”が鉄則です。
育っていない棚に種類を足しても、崩れるだけなんですよね。

お客様重視は“いつ”やるべきか?(最適化の優先順位)

店長・発注担当者がよく迷うテーマがこれです。 「スタッフのやりやすさを優先すべきか?」
「それともお客様の満足度を優先すべきか?」
答えは明確で、順番は必ずこうなります。
この順番を守ることで、売場は崩れず、利益は守られ、 結果的にお客様にとっても最高の売場が出来上がります。
① オペレーションが整っていない状態では、満足度は上がらない
スタッフが忙しすぎる状態や棚が乱れている状態では、 どれだけ商品種類を増やしても、お客様は快適に買い物できません。
実際に起こること:
- 人気商品が欠品している
- 棚が乱れて探しにくい
- 補充が追いつかずスカスカに見える
- レジがバタつき、対応が雑になる
この状況は、お客様満足度を高めるどころか、 不満足を積み重ねるだけの結果を生みます。
② “お客様重視”は、オペレーションが整った後に最大効果を発揮する
棚が整い、スタッフが余裕を持って動けるようになった段階で、 初めて「お客様満足度の向上」に向けた施策が意味を持ちます。
この段階でできること:
- フェースを増やして棚を華やかにする
- 季節限定商品を強めに展開
- 選択肢を少し増やす
- 新商品コーナーを充実させる
オペレーションが安定して初めて、 “店長の意図した売場づくり”が実現できるようになります。

まずは「できる範囲」を整える。 その上で「選ばれる売場」を作っていく。 これが一番失敗しないやり方です。
③ 種類を広げるのは“棚が育ってから”
種類を増やすかどうかは、棚が以下の状態になっているかで判断できます。
- 売れ筋が安定して売れている
- 欠品が少ない
- 廃棄が一定範囲で収まっている
- スタッフが調整できる余裕がある
- 棚が乱れず管理がスムーズ
この条件が揃っていれば、初めて種類を増やす意味が出てきます。 反対にこの条件が整っていない場合は、 種類を増やすと売場が崩れる確率が非常に高いです。
④ お客様満足度は「華やかさ」ではなく「買いやすさ」で決まる
多くの店長が勘違いしがちなのが、 “種類=満足度”ではないということ。
実際には、お客様が評価するのは次の4つです。
- 探しやすいか?
- 欲しい商品がしっかり並んでいるか?
- 欠品が少なく安定しているか?
- 棚が整っていて気持ちいいか?
この4つは、種類数を増やしても生まれません。 むしろ“種類を絞った棚”の方が実現しやすいのです。

お客様が求めているのは、選びやすい棚なんです。 種類が多いだけの棚は、実はストレスの原因になります。

まとめ|商品種類の最適化は「店の強さを作る経営判断」

ここまで見てきたように、商品種類の多さ=良い店ではありません。
大切なのは、「あなたの店にとってちょうどいいバランス」を見つけることです。
種類を増やすことにはメリットもありますが、その裏側では 廃棄・欠品・作業負荷・棚乱れといった“見えないコスト”が必ず発生します。
一方で、種類を減らすことは決して後ろ向きではなく、
オペレーションの安定・粗利改善・棚の見やすさ向上を生み出す、立派な経営戦略です。
① 「多いか・少ないか」ではなく「最適かどうか」
店長・発注担当者が考えるべきは、 「増やすべきか・減らすべきか」ではなく、「最適かどうか」です。
判断の基準はシンプルです。
- 売れ筋商品はしっかり深さが取れているか?
- 棚は整っていて、お客様が選びやすいか?
- スタッフが無理なく管理できる種類数か?
- 廃棄と欠品のバランスは保たれているか?
これらが揃っていれば、その店の「正解の種類数」に近づいていると考えて良いでしょう。
② 種類の最適化は「現場と数字をつなぐ店長の仕事」
商品種類の最適化は、まさに「現場感覚 × 数字感覚」が問われる領域です。
毎日の売場を見ているあなただからこそ、判断できるテーマでもあります。
店長・発注担当者の役割は、
- データだけで判断しないこと
- 現場の声だけで動かないこと
- 現場のリアルと数字の両方を見て、棚のバランスを整えること
このバランスが取れるほど、店は「売れる棚」かつ「無理のない棚」に近づいていきます。

棚の種類数を決めるのは、数字だけでも本部の指示だけでもありません。
最後は“現場を一番知っている店長の判断”がものを言います。
③ 明日からできる「商品種類の見直しチェックリスト」
いきなり全カテゴリを変える必要はありません。 まずは、気になる棚から少しずつ見直していきましょう。
- この棚に「明らかな死に筋商品」は残っていないか?
- 売れ筋商品のフェースが、周辺商品よりも薄くなっていないか?
- スタッフが「ここは補充しにくい」と感じている棚はどこか?
- お客様が立ち止まって迷っている棚はどこか?
このあたりから手をつけるだけでも、棚の“息苦しさ”が少しずつ取れていきます。
④ 最後に(はなパパから店長・発注担当者へ)
商品種類の最適化は、正直に言うと“面倒な作業”です。
ですが、ここに向き合える店ほど、売場は強くなり、店全体の数字も安定していきます。
なんとなく増やした商品、なんとなく残している商品が多い棚ほど、 お店の力は分散し、スタッフも疲弊しやすくなります。

商品の種類を見直すことは、“お店の戦い方”を整えることでもあります。
ぜひ、あなたのお店にとっての「ちょうどいいバランス」を一緒に探していきましょう。
この記事が、あなたの店舗運営や発注判断のヒントになれば嬉しく思います。
無理のない棚、選ばれる棚、利益の残る棚—— そんな「強い棚づくり」を、少しずつ一緒に積み上げていきましょう。
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