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10月1日、カスハラ対策が義務になる|小さな店ほど未対策——「うちの線」を紙一枚で引く方法【現役オーナー】

hanapapa
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2026年10月1日、カスタマーハラスメント対策が「義務」になります。

改正労働施策総合推進法の施行により、事業主にはカスハラ防止に必要な体制整備と措置が義務づけられます。ここで大事なのは対象の広さです——労働者を1人でも雇用していれば対象。中小企業の猶予はありません。つまり、スタッフを雇っているコンビニ加盟店は、法人でも個人事業主でも、全員が名宛人です。

ところが、東京都が2026年3月に公表した実態調査(約4,700社)では、対策に取り組む企業は38.5%。従業員30人未満に限れば30.5%にとどまります。小さい店ほど、無防備。そして加盟店は、まさにその「30人未満」に入ります。

取り組まない理由の1位は「正当なクレームとの判断の難しさ」(29.6%)、2位は「ノウハウ不足」(23.8%)でした。よく分かります。少年に身分証の提示を求めたらキレられる。高齢の方に年齢確認ボタンを促したらキレられる。店の前で起きた事故に「うるさい」と苦情が来る——レジには、店に責任のないことへの怒りまで届くのです。どこからがカスハラで、どこまでが正当な指摘なのか。

この記事では、施行まで1カ月半のいま、自店の実例で線引きを考え、「うちの線」を紙一枚にする方法まで書きます。先に白状すると、うちの店もエスカレーションの運用はあるものの、明確に書き出してはいませんでした。この記事は、自分の店の宿題でもあります。

  • 何が義務になるのか——10月1日施行の中身
  • コンビニは構造的にリスクが高い——うちの実例カタログ
  • 正当なクレームとの線引き——「冷静に届くか」という現場のものさし
  • エスカレーション設計——「現場は止めるまで、判断は上へ」
  • 「うちの線」を紙一枚にする——今日から作れるテンプレート
  • 窓口経由のクレームと、まっとうな指摘という宝物

※本記事は2026年8月16日時点の公表情報・報道に基づく一般的な整理であり、法的助言ではありません。具体的な対応は厚生労働省の指針、本部からの案内、必要に応じて社会保険労務士・弁護士にご確認ください。


本記事の位置づけ|制度対応シリーズの「2026年10月カスハラ対策義務化と、店の線の引き方」の実務記事

本記事は、10月1日施行の義務の中身・正当なクレームとの線引き・対応の3段階(エスカレーション)・紙一枚で作る「うちの線」テンプレートを、現役オーナーの実例で整理した解説記事です。同じ2026年10月施行の「週20時間の壁」のシフト設計と併せて読むと、10月の制度対応をまとめて準備できます。

🤝 カスハラ・接客の土台

📋 制度対応の先例

🛡 スタッフと店を守る

「接客の土台 → 制度対応の先例 → スタッフと店を守る」の順で読むと、義務化を「やらされ仕事」でなく店を強くする機会に変える視点が身につきます。

🎥 この記事の要点を動画にまとめました(音声解説つき)。結論から知りたい方はまずこちらをどうぞ。

🎧 もっと深く:対話型の音声解説(約20分)
この記事をもとにAIが対話形式で深掘りした音声です(Gemini Notebook〈旧NotebookLM〉で生成)。運転中や作業中の「ながら聞き」にどうぞ。

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第1章:何が義務になるのか——10月1日施行の中身

全事業主・一斉施行・公表まである

まず制度の骨格です(2026年8月16日時点の公表情報)。

項目内容
根拠法改正労働施策総合推進法(2025年6月公布)
施行日2026年10月1日
対象労働者を1人でも雇用するすべての事業主(中小の猶予なし)
義務の中身カスハラ防止のための雇用管理上の措置(指針は2026年2月に告示済み)
措置の柱①事業主の方針の明確化と周知・啓発 ②相談体制の整備 ③カスハラの内容と「あらかじめ定めた対処の内容」を労働者に周知 ④特に悪質なものへの対処方針を事前に定める 等
怠った場合報告徴求命令・助言・指導・勧告、悪質な場合は企業名の公表の対象になりうる

罰金や懲役といった直接罰はありません。でも、これを「ゆるい義務」と読むのは誤りです。専門家が指摘するリスクは法令面にとどまりません——対応を怠れば、従業員から安全配慮義務違反を理由に損害賠償を請求される紛争リスク、評判を損なうリスク、そして人材流出リスク。人手不足の時代、「スタッフを守らない店」に人は残りません。

義務の名宛人は「事業主」=加盟店

コンビニのオーナーとして押さえるべき一点は、義務の主体が「事業主」だということです。店舗を運営する加盟店法人(または個人事業主)が、そのまま名宛人になります。「本部が何かやってくれるだろう」は、法的には答えになりません。もちろんチェーンとして標準マニュアルやポスターは整備されていくでしょうが、自店のスタッフに方針を周知し、相談に応じ、対処を決めておく責任は、雇い主である私たちにある——ここが出発点です。

なお、うちの店には8月16日時点で、この施行に対応した本部からの案内はまだ来ていません。だからこそ、この記事の後半は「待つ前に、自店の線を引いておく」という話になります。来たら上書きすればいいのです。


第2章:コンビニは構造的にリスクが高い——うちの実例カタログ

対面×深夜×少人数という三重奏

コンビニは、対面接客・深夜営業・少人数シフトという条件が重なる、カスハラリスクが構造的に高い業態です。数字もあります。全国携帯電話販売代理店協会の2025年度調査では、直近1年半でカスハラを経験した従業員は回答者約1万1,000人の60%。うち暴言が半数弱、机をたたくなどの威嚇・脅迫が約4割——同じ「店頭で不特定多数と向き合う仕事」として、他人事の数字ではありません。

うちの店で実際にあったこと

抽象論をやめて、自店の実例を並べます。どこの店にも、似た風景があるはずです。

  • 年齢確認で、両側からキレられる——少年に身分証の提示を求めたらキレられる。逆に、ご高齢の方に年齢確認ボタンを押すよう促したらキレられる。制度上やらなければならない確認で、若い側からも年配の側からも怒られるのがレジです
  • 会計後の「袋が要る」——「袋はご利用ですか?」の問いかけに無視で応じられ、不要と判断して会計を進めたら、後から「必要だ」と怒られる。これはどこの店でも、うちでも起きています
  • 犬の鳴き声——お客様が連れてきた犬を店前の柵につないで買い物をされ、犬が寂しくて吠えた。すると別のお客様から「犬の鳴き声がうるさいからなんとかしろ」。飼い主さんはすでに申し訳なさそうにされていて、店として何かを咎める場面ではありませんでした
  • 店の前の事故に「うるさい」——店の目の前で交通事故が起きたとき、その騒ぎに対して「うるさい」という苦情が店に来たこともあります。これは、店にはどうすることもできません

並べてみて分かるのは、レジには「店に責任のないことへの怒り」まで届くということです。犬も、事故も、店の落ち度ではない。でも、そこにいる一番身近な「窓口」がレジだから、怒りはそこへ向かう。この現実を前提にしないと、対策の設計を間違えます。

はなぱぱ
はなぱぱ

年齢確認は本当に両側からで、少年に身分証の提示を求めたらキレられるし、ご高齢の方に年齢確認ボタンを促してもキレられる(笑)。「袋ご利用ですか?」への無視→会計後に「必要だ」は、どこの店でもある話ですね。ひどい場合だと、お客様が連れてきた犬が店前で吠えて、別の方から「なんとかしろ」と。飼い主さんがもう申し訳なさそうにされていたので、あれは何も対応しませんでした。店の目の前で事故が起きたときの「うるさい」というお声は——さすがに、どうにもできませんとしか言いようがないです(笑)。


第3章:正当なクレームとの線引き——「冷静に届くか」という現場のものさし

公式の枠組み:内容の妥当性×手段・態様の相当性

「正当なクレームとの判断が難しい」——未対策の理由1位です。まず、公式の考え方を押さえます。厚生労働省が職場におけるハラスメント防止のページで公開している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」などで示されている枠組みは、大きく2軸です。

  1. 要求の内容に妥当性があるか——商品の不良、レジの打ち間違い、案内の誤りなど、店に落ち度があれば要求それ自体は正当
  2. 手段・態様が社会通念上相当か——内容が正当でも、大声・暴言・威嚇・長時間の拘束・土下座の要求などに及べば、それはハラスメント

つまり「何を言っているか」と「どう言っているか」を分けて見る。内容が正当でも、態様が一線を越えればカスハラになり得る——ここが肝です。

現場のものさし:「正当な指摘は、冷静に届く」

そのうえで、私が15年のレジで身につけた一次スクリーニングを書きます。

正当な指摘の場合、お客様は冷静に話してくださいます。怒りに任せてくる場合は、大抵、理不尽なことが多い。

もちろん、これは絶対のルールではありません。正当な内容を怒りながら伝える方もいますから、「怒っている=カスハラ」と断定してはいけない。でも、最初の見立てとしては、驚くほどよく機能します。落ち度を伝えたい人は、伝わることが目的なので、冷静に言葉を選ぶ。怒りをぶつけたい人は、ぶつけることが目的になっている。目的の違いが、話し方に出るのです。

この見立てが効く実務上の理由は単純で、次の行動を決められるからです。冷静に届いた指摘は、その場で謝罪し、確認し、改善する(クレーム対応の記事で書いた対応の型です)。冷静な会話が成立しなくなったら——次章のエスカレーションに切り替える。「対応する」と「対処する」の分岐点が、ここにあります。

「行為を文言で書く」という先行事例の知恵

もうひとつ、先行業界の知恵を借ります。日本コンタクトセンター協会は認定制度の中で、該当行為を具体的な文言で示しました——「上層部と知り合いだとほのめかして萎縮させる」「一定時間、従業員を拘束する」。抽象的に「悪質なクレーム」と言わず、行為のレベルで列挙して「判定ライン」を作らせる方式です。

これは小さな店でもそのまま真似できます。大声・机を叩く・「土下座しろ」・「ネットに晒す」・長時間帰らない・スタッフ個人への攻撃——行為で書けば、判断に個人差が出にくい。深夜のワンオペで判断するのは経験の浅いスタッフかもしれないのですから、線は具体的であるほど守りやすいのです。

はなぱぱ
はなぱぱ

正当な指摘の場合は、お客様が冷静に話してくれるんですよ。怒りに任せてくる場合は、大抵、理不尽な場合が多い。だからうちでは、冷静な会話で解決できなくなった場合は、警察や私、SVにすぐ連絡をするようになっています。ただ——明確に書き出したりはしていないんですよね。今後、その必要もあるかなと考えているところです。


第4章:エスカレーション設計——「現場は止めるまで、判断は上へ」

先行事例に共通する設計思想

報道で紹介されていた先行事例には、共通する思想があります。「現場任せにしない」です。

タクシー大手の日の丸交通は、暴力や暴言があればいったん停車して行為をやめるよう伝え、納得しない場合は営業所に連絡して運行管理者の判断を仰ぐ手順を研修で徹底しています。「困ったら営業所に電話するよう伝えることで、運転手の安心にもつながる」——現場は止めるところまで。その先の判断は、上位者へ。この分担が、現場を守ります。

うちの運用と、「怖かった」が出ない理由

うちの店の運用も、実は同じ形をしています。冷静な会話で解決できなくなった場合は、警察・私(オーナー)・SVにすぐ連絡する——スタッフにはそう伝えてあります。

この運用にしてから気づいたことがあります。スタッフから、宗教勧誘やスカウトのような「怖かった」という報告はあっても、クレーム対応で「怖かった」という報告は、ほとんど出ないのです。自分で対処できない範囲になったら、私に連絡が来る。「自分で抱えなくていい」と最初から決まっていること自体が、怖さを消している——日の丸交通の「運転手の安心につながる」と、まったく同じ構造です。

エスカレーションの本当の価値は、切り替えの速さではなく、現場に「ここまででいい」という安心の線を引くことにあるのだと思います。

名札の話——タリーズと、うちの店

もうひとつ、スタッフを守る具体策として名札の話を。タリーズコーヒージャパンは2022年、従業員がSNSでつきまとい被害を受けたのを機に、名札の実名表記を廃止しました。

コンビニでも同じ流れがあります。うちのチェーンでも、名札から顔写真はなくなりました。基本は本名を入れていますが、本人から要望があればイニシャルなどでいくらでも対応できます。以前、名札に「オーナー」と入れない理由という記事を書きましたが、あれは肩書きの話。今回は個人の特定から守る話で、方向は同じです——名札は、店の都合よりスタッフの安全を優先していい装備品になった。採用面接で「名札は相談できますよ」と一言添えられる店は、それだけで安心感が違うと思います。


第5章:「うちの線」を紙一枚にする——今日から作れるテンプレート

書き出していないルールは、ないのと同じになる日が来る

うちの店の課題を、正直に書きます。エスカレーションの運用はある。スタッフにも伝えてある。でも、明確に書き出してはいません

10月1日以降、法が求めるのは「方針の明確化と、労働者への周知」「あらかじめ定めた対処の内容の周知」です。頭の中のルールと口伝えでは、「周知した」とは言いにくい。逆に言えば——紙一枚に書いて、貼って、朝礼で触れれば、それがそのまま措置の中核になる。大がかりなマニュアルは要らないのです。

この記事を書きながら、うちも作ることにしました。構成は3ブロックです。

ブロックA:うちの店がお断りする行為(判定ライン)

コンタクトセンター協会方式で、行為を文言で列挙します。

【うちの店は、次の行為をカスタマーハラスメントとして対応しません】 ・大声、暴言、脅すような言動/・レジや什器を叩く、物を投げる/・土下座の要求/・長時間の居座り、業務の妨害/・スタッフ個人への攻撃、SNSに晒すという発言/・つきまとい、店外での待ち伏せ

(各チェーン・厚労省マニュアルの例示をベースに、自店で実際にあった行為を足すのがコツです。第2章の実例カタログが、ここで活きます。)

ブロックB:対応の3段階(エスカレーション)

【スタッフの対応はここまで】 ①冷静にお話しいただける間は、誠実に対応する(謝罪・確認・改善) ②冷静な会話が成立しなくなったら、対応を打ち切ってよい。「責任者に確認します」と言って、店長・オーナー・SVに電話(深夜でも遠慮しない) ③身の危険を感じる行為(暴力・威嚇・退去しない)は、ためらわず110番。判断に迷ったら②へ——迷った時点で、あなたの仕事は終わりです

ポイントは③の一文です。「迷ったら上へ」を明文化しておくと、現場は迷うことそのものから解放されます

ブロックC:周知と掲示

  • スタッフルームに貼る。朝礼・引き継ぎで一度読み合わせる。新人研修の初日に渡す
  • お客様向けには、本部提供のポスター類を活用する(自作の掲示は表現が難しいので、まずはメーカーならぬ本部の公式物を待って使うのが安全です)
  • そして、作った日付を入れておく。「2026年○月○日制定」の一行が、対策に取り組んだ記録になります

これで紙一枚。深夜のワンオペで、経験の浅いスタッフが一人で立っている時間にこそ、この紙は効きます。本部の標準マニュアルが届いたら、それに合わせて上書きすればいい。待ってから作るのではなく、作って待つ——施行まで1カ月半の、現実的な構えだと思います。


第6章:窓口経由のクレームと、まっとうな指摘という宝物

窓口経由のクレームには、店の「記録」が要る

もうひとつ、FC加盟店ならではの実務を書いておきます。お客様からのクレームは、店に直接届くものだけではありません。本部のお客様相談室(カスタマーセンター)経由でも届きます。

ここで知っておきたいのは、窓口という仕組みの性質です。窓口はお客様の声を受け止める役割なので、店から見ると行き過ぎに感じられる内容でも、まずはいったん受け取られて、「店舗への確認・改善要求」という形で降りてくることがあります。窓口は現場を見ていないのですから、届いた言葉から始めるしかない——構造上、そうなるのです。

だからこそ、店側にできる備えは一次対応の記録です。日時、経緯、こちらの対応、先方の言動を、その日のうちに短くメモしておく。窓口経由で話が来たときに、感情ではなく事実で文脈を返せる——これが加盟店の自衛であり、同時に、本部が正しく判断するための材料にもなります。記録は武器ではなく、です。

まっとうな指摘は、店の宝

最後に、この話をひっくり返して締めます。線引きの話ばかりしてきましたが、忘れてはいけないのは——まっとうな指摘は、店にとって宝物だということです。

在庫データのズレで、気づかないうちに品切れ状態が続いていたとき。私や店長がいない時間帯の売場やスタッフの様子。お客様の指摘は、店が自分では見えない場所を確認するきっかけになる。非常にありがたいのです。正当な指摘を受け止めて改善する話はクレーマーが上顧客に変わる記事に、理不尽から店の空気を守る話は負の連鎖を断つ記事に書いてきたとおりです。

だから、カスハラ対策の線引きは、お客様を締め出す壁ではありません。怒鳴り声に現場が萎縮している店では、冷静な小さな指摘こそ届かなくなる。線を引くのは、まっとうな声がちゃんと届くようにするため——「お客様は神様」の呪縛を解いた先にあるのは、お客様との対等で健全な関係です(お客様は神様の誤解の記事で書いた原点に、法律がようやく追いついてきた、とも言えます)。

はなぱぱ
はなぱぱ

気づかないうちに在庫のズレで品切れが続いていたときや、私や店長がいない時間帯のことをお客様が指摘してくださるのは、確認するきっかけになるので本当にありがたいんです。だから線引きは、お客様を疑うための話ではなくて。冷静に話してくださる声にちゃんと応えるために、そうでないものへの対応を先に決めておく——そういう順番なんだと思います。スタッフには「困ったら私に電話。それで終わり」と伝えてあります。10月までに、それを紙にします。


よくある質問(FAQ)

Q1. 2026年10月1日から、何が義務になるのですか?

改正労働施策総合推進法の施行により、カスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置がすべての事業主に義務づけられます。柱は①方針の明確化と周知・啓発②相談体制の整備③カスハラの内容とあらかじめ定めた対処の内容の労働者への周知——などです(指針は2026年2月告示。詳細は厚生労働省の公表資料をご確認ください)。

Q2. 小さなコンビニ加盟店も対象ですか?

対象です。労働者を1人でも雇用していれば、法人・個人事業主を問わず義務の名宛人になります。中小企業への猶予期間はありません。東京都の調査では従業員30人未満の対策実施率は30.5%にとどまっており、小規模な店ほど準備が遅れているのが現状です。

Q3. 義務を怠ると、罰則があるのですか?

罰金などの直接罰はありませんが、報告徴求命令・助言・指導・勧告の対象となり、悪質な場合は企業名公表の仕組みもあります。さらに法令面以外に、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償の紛争リスク、評判リスク、人材流出リスクが指摘されています。人手不足の時代、「スタッフを守らない店」に人は残りません。

Q4. カスハラと正当なクレームは、どう見分けるのですか?

公式の枠組みは「要求内容の妥当性」と「手段・態様の相当性」の2軸です。内容が正当でも、大声・威嚇・長時間拘束などに及べばハラスメントになり得ます。現場の一次スクリーニングとしては「正当な指摘は冷静に届くことが多く、怒りに任せた声は理不尽なことが多い」という経験則が機能します。ただし怒っている=カスハラと断定せず、内容と態様を分けて見ることが大切です。

Q5. 年齢確認で怒られたときは、どうすればいいですか?

年齢確認は法令上必要な業務なので、確認自体をやめることはできません。「決まりですので」と淡々と、感情で応じないのが基本です。それでも冷静な会話が成立しなくなったら、対応を打ち切って責任者へつなぐ段階です。「確認を求めること」は店の落ち度ではない、とスタッフに明言しておくことが守りになります。

Q6. 具体的に、何を作ればいいのですか?

紙一枚で足ります。①お断りする行為を具体的な文言で列挙した「判定ライン」②スタッフの対応範囲と連絡先を決めた「対応の3段階」(冷静な間は誠実に→成立しなくなったら責任者へ電話→危険はためらわず110番)③スタッフルームへの掲示と読み合わせ——この3点で、法が求める「方針の明確化と周知」「対処の内容の周知」の中核になります。制定日を入れておくと取り組みの記録になります。

Q7. スタッフの名札は、実名のままでいいのでしょうか?

実名が義務というわけではありません。タリーズコーヒーはSNSでのつきまとい被害を機に実名表記を廃止しました。コンビニでも名札から顔写真がなくなるなどの流れがあり、本人の希望があればイニシャル等で対応できる運用が広がっています。不安を抱えるスタッフには選択肢があることを伝えてあげてください。

Q8. 警察を呼ぶ基準は、どう考えればいいですか?

暴力・威嚇・退去に応じない居座りなど、身の危険や業務妨害のレベルに達したら、ためらわず110番でいいと考えています。「警察沙汰にするほどか」と現場に迷わせないために、「迷ったら責任者へ、危険はためらわず110番」と紙に書いておくことが大切です。通報の判断をアルバイトに背負わせない設計にします。

Q9. 本部のお客様相談室経由でクレームが来たら、どう対応すればいいですか?

感情ではなく記録で応えるのが基本です。窓口は現場を見ていないため、店側の一次対応の記録(日時・経緯・対応・先方の言動)がないと、届いた言葉だけで判断せざるを得ません。その日のうちの短いメモが、文脈を正しく伝える橋になります。日頃から記録の習慣を作っておくことをおすすめします。

Q10. この記事の内容だけで、対応は十分ですか?

本記事は2026年8月16日時点の公表情報に基づく一般的な整理であり、法的助言ではありません。措置の詳細は厚生労働省の指針・マニュアルを確認し、本部からの案内が出たらそれに従って上書きしてください。個別の判断が必要な場面では、社会保険労務士・弁護士など専門家への相談をおすすめします。


まとめ:線は、締め出すためではなく、届くために引く

2026年10月1日、カスハラ防止措置が全事業主に義務化されます。労働者1人でも雇えば対象・中小の猶予なし——加盟店はまさに名宛人で、しかも対策実施率は30人未満で30.5%と、小さい店ほど無防備です。コンビニは対面×深夜×少人数でリスクが構造的に高く、レジには年齢確認への怒りから店前の事故への「うるさい」まで、店に責任のないことへの怒りも届きます。線引きの公式枠組みは「内容の妥当性×手段・態様の相当性」の2軸、現場のものさしは「正当な指摘は冷静に届く」。対策の核は、①行為を文言で列挙した判定ライン②「冷静な間は誠実に→成立しなくなったら責任者へ電話→危険はためらわず110番」の3段階エスカレーション③掲示と読み合わせ——紙一枚で、法が求める「方針の明確化と周知」の中核になります。本部の案内を待つ前に作って、来たら上書きすればいい。窓口経由のクレームには一次対応の記録が橋になる。そして忘れないこと——まっとうな指摘は店の宝であり、線を引くのは、その声がちゃんと届くようにするためです。

この記事の要点

  1. 2026年10月1日、カスハラ防止措置が義務化=労働者1人でも雇う全事業主が対象・中小猶予なし
  2. 義務の名宛人は事業主=加盟店法人・個人事業主そのもの(本部任せでは足りない)
  3. 対策実施率は38.5%、30人未満は30.5%=小さい店ほど無防備。加盟店はここに入る
  4. 直接罰はないが指導・勧告・公表+安全配慮義務違反の賠償・人材流出リスク
  5. レジには「店に責任のないことへの怒り」も届く(年齢確認・会計後の袋・犬・店前の事故)
  6. 線引きは「内容の妥当性×手段・態様の相当性」+現場則「正当な指摘は冷静に届く」
  7. エスカレーションの価値は「自分で抱えなくていい」という安心の線=怖さが消える
  8. 名札は実名が義務ではない=顔写真廃止・イニシャル対応など、スタッフを守る選択肢を伝える
  9. 紙一枚(判定ライン+3段階+掲示)が「方針の明確化と周知」の中核になる=作って待つ
  10. まっとうな指摘は店の宝=線は締め出す壁でなく、冷静な声が届くための整理

次のアクション

  • [ ] 自店で実際にあった「越えていた行為」を書き出す(判定ラインの材料にする)
  • [ ] お断りする行為を具体的な文言で列挙する(大声・叩く・土下座要求・居座り・SNS晒し等)
  • [ ] 対応の3段階(誠実対応→責任者へ電話→110番)と連絡先を決めて紙一枚にまとめる
  • [ ] 「迷ったら上へ。深夜でも遠慮しない」を明文化してスタッフルームに掲示する
  • [ ] 朝礼・引き継ぎで一度読み合わせ、新人研修の初日に渡す運用にする
  • [ ] 名札の表記に不安があるスタッフがいないか確認し、選択肢を伝える
  • [ ] クレーム対応の一次記録(日時・経緯・対応・言動)をその日のうちに残す習慣を作る
  • [ ] 本部からの施行対応の案内が出たら、自店の紙をそれに合わせて上書きする

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カスハラ・接客の土台

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スタッフと店を守る

参考|公式情報


15年レジに立って、たくさんの声を聞いてきました。冷静に品切れを教えてくださる声。怒鳴り声。申し訳なさそうな飼い主さんの会釈。そのすべてに同じ顔で立つのがプロだと、ずっと思ってきました。

でも、法律が変わるいま、思うのです。同じ顔で立ち続けるためにこそ、線が要るのだと。怒鳴り声に現場が萎縮している店では、いちばん届いてほしい小さな冷静な声が、届かなくなる。だから線を引く。スタッフのためであり、まっとうなお客様のためであり、結局は店のためです。

「いらっしゃいませ」と「これ以上は対応いたしかねます」——その両方を、同じ落ち着いた声で言える店へ。

10月1日は、その準備の締切です。うちも今週、紙一枚から始めます。

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経営者
はじめまして、はなぱぱです。 コンビニ経営に携わって13年。 店舗での経験や経営者としての苦労、従業員教育の工夫などをまとめています。 経営者や店舗責任者はもちろん、従業員の方にもわかりやすく役立つ情報を発信していきます。
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