相続・贈与税が「免除」へ——それでも、コンビニの承継は増えない気がする|「維持が正解」になる算数と、承継が壊すもの【現役オーナー】
中小企業の代替わりに関わる、大きなニュースが動き始めました。経済産業省が、後継者にかかる相続税・贈与税を「免除」する方向で事業承継税制を見直す検討に入り、2027年度の税制改正要望に盛り込みます。いまの制度は「納税をいったん猶予し、後継者が亡くなるか次の代へ渡した時点でようやく免除」という二段構え。それを、賃上げや成長投資に取り組む企業に絞って、最初から非課税にする案です。
中小企業の株式承継にとって、これは間違いなく前進です。法人で店を持っている以上、コンビニ加盟店にも株式の承継はいつか必ず来る話で、他人事ではありません。
ただ——正直に書きます。このニュースを読んで最初に浮かんだのは、「それでも、コンビニFCの承継が増える気は、あまりしないな」という感覚でした。
税金が理由ではありません。もっと手前に、構造の話があります。多くのFC契約のもとでは、頑張って売上を伸ばすより、売上を維持しながらコストを絞るほうが、利益が残りやすい。そして契約は10年・15年の有期。この掛け合わせの中では、「承継したくなる事業の形」そのものが、作りにくいのです。
この記事では、税制の中身と使い方を整理したうえで、その手前にある正直な問い——コンビニFCで、承継は起きるのか。自分は子に勧めるのか——を、実話と自分の答えまで含めて書きます。税理士のブログにも新聞にも書けない部分を、現場から。
- ニュース整理——猶予から「免除」へ。ただし条件つき
- なぜ、いまの制度は使われなかったのか
- 正直な問い——コンビニFCで、承継は起きるのか
- 「維持が正解」になる算数——誰も悪くない構造の話
- 承継が壊すもの、承継が成立する形
- 税制が問うているもの——「完結」も、立派な事業計画
※本記事は2026年8月24日時点の報道・公表情報に基づく一般的な整理であり、税務・法務の助言ではありません。個別の判断は必ず顧問税理士等の専門家にご相談ください。
🎥 この記事の要点を動画にまとめました(音声解説つき)。結論から知りたい方はまずこちらをどうぞ。
🎧 もっと深く:対話型の音声解説(約12分)
この記事をもとにAIが対話形式で深掘りした音声です(Gemini Notebook〈旧NotebookLM〉で生成)。運転中や作業中の「ながら聞き」にどうぞ。
第1章:ニュース整理——猶予から「免除」へ。ただし条件つき
時系列で見ると、判断の材料になる
この制度は、数字より時系列で見るのが分かりやすいと思います。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2018年1月 | 10年特例開始。引き継いだ非上場株式の全株が納税猶予の対象に |
| 2026年度改正 | 特例承継計画の提出期限を2027年9月30日まで延長(済み) |
| 2027年9月末 | 現行特例の計画提出期限。残り約1年 |
| 年末(2026年12月) | 新制度の中身を政府・与党で調整。ここで決まる |
| 2027年度〜 | 見直し後の制度がスタートする見込み(内容は未定) |
「免除」案の中身と、注意点
現行制度の建て付けは「猶予→(後継者の死亡または次の承継で)実質免除」。今回の案は、要件を満たせば最初から免除にして、予見性を高めるものです。ただし無条件ではありません。浮いた資金を生産性向上や賃上げに確実に振り向ける企業に対象を絞る方向で、適用要件はむしろ厳しくなる見通し。早期承継の優遇拡大も視野に入る一方、実体のない会社での課税逃れといった悪用への対策も年末の論点になります。
同じ要望には、賃上げ促進税制の控除率拡大と、中小企業経営強化税制・投資促進税制の拡充も並んでいます。承継に関係なく、省人化機器やレジ更新など今期の設備投資の判断材料として、年末の決定は見ておく価値があります(発注時期を年度またぎで調整する、という選択肢も含めて)。
第2章:なぜ、いまの制度は使われなかったのか
免除が確定するのは、自分の死後
「事業承継税制」という名前は知られています。でも、猶予と免除の違いまで理解している人は多くありません。実は、ここにこの制度が敬遠されてきた理由が詰まっています。
現行制度で税が猶予された後継者は、その後もずっと要件を満たし続ける必要があり、免除が確定するのは——自分が亡くなるか、次の代へ渡したときです。つまり、承継した瞬間から、「いつか猶予が取り消されて、納税を求められるかもしれない」という不安を、自分の人生の終わりまで抱えて歩く制度だったのです。
税額の大小の問題ではありません。予見できない負債の可能性を、何十年も背負うという構造の問題。だから、使えるはずの人が手を出さなかったし、猶予で手元に残った資金も、怖くて投資に回せず抱え込む——そんな副作用まで指摘されてきました。今回の「最初から免除」案は、まさにこの急所への回答です。制度設計としては、正しい方向だと思います。
それでも、コンビニには「もっと手前の問題」がある
ここまでが、一般の中小企業の話。ここからが、この記事の本題です。制度がどれだけ良くなっても、その前提には「承継したい事業がある」ことが必要です。では——コンビニFCは、どうか。
第3章:正直な問い——コンビニFCで、承継は起きるのか
手放しで勧められる形とは、言いにくい
ぶっちゃけた話をします。いまのコンビニ業態で、「ぜひ事業承継したい」という人は、多くないと思うのです。
私自身、この仕事を15年続けてきて、誇りもあります。生活も支えてもらった。それでも——親として、子に手放しで勧められる形かと問われると、言葉に詰まります。理由は収入ではありません。この後の章で書く「構造」と「境界線」の話です。
読者のオーナーの皆さんの中にも、同じ感覚を持つ方は少なくないはずです。50代・60代で後継者問題を抱えながら、「継がせたい」と「継がせたくない」の間で答えを出せずにいる——事業承継税制のニュースが他人事に見えるのは、税金の話の前に、この感情の問題が横たわっているからだと思うのです。

ぶっちゃけ、いまのコンビニ業態で事業承継しようという人は、多くないと思うんです。私自身の答えも正直で——子どもには、たとえ私の収入がそのまま継続できるとしても、やってほしくないかな(笑)。お金の問題じゃないんですよね。この仕事の形の問題で。そう思ってしまう自分がいることを、まず認めるところから、この話は始まる気がします。
第4章:「維持が正解」になる算数——誰も悪くない構造の話
売上を伸ばした利益は按分され、削ったコストは全額残る
なぜ「承継したくなる形」が作りにくいのか。感情論ではなく、算数で説明できます。
多くのFC契約では、チャージ(ロイヤリティ)は売上総利益に応じて計算されます。方式や率はチェーン・契約タイプで大きく異なりますが、共通する構造はこうです——頑張って売上と粗利を伸ばすと、その増分の少なくない割合が、チャージとして本部に按分される。一方、店側で負担している費用——人件費や廃棄など——を削った分は、ほぼそのまま店の利益に残る。
つまり、利益を増やす2つの道のリターンが、対称ではないのです。
- 攻め(売上を伸ばす):増えた粗利の一部しか手元に残らない。しかも販促・人時・廃棄リスクという投資が先に出る
- 守り(維持しながらコストを絞る):削った分が100%手元に残る。追加投資も要らない
だから、冷静に電卓を叩くと——売上を維持、あるいは多少下げながらコストを削減するほうが、利益が出てしまう場面が、現実にあるのです。
有期契約が、それを「正解」にしてしまう
「そんなことをしていたら、事業の成長がないじゃないか」——そのとおりです。無期限に続く事業なら、目先の利益を犠牲にしても、売場と人に投資して店の力を育てるのが正解です。
でも、FC契約は10年・15年の有期です。期限のある事業の最適解は、無期限の事業の最適解と、数学的に別物になります。契約の残りが5年を切った店で、回収に7年かかる投資は打てない。ゴールの決まったレースでは、維持と守りが「合理」になってしまう——これは経営者の怠慢ではなく、有期契約×比例チャージという制度設計が生む、合理的な行動なのです。
しかも市場は、業界統計で見てきたとおり、客数が13ヶ月連続マイナスの縮む水面下にあります。自分の店だけが伸び続けると考えるのは、現実的ではない。縮む市場×有期契約×按分されるリターン——この3つが揃った事業を、「さあ、次の世代へ」と差し出すのは、難しい。承継が増えない理由は、税制ではなく、ここにあると私は思っています。
ただし——私は、その「正解」を選ばない
誤解のないように、はっきり書いておきます。この構造を直視することと、その「正解」に従うことは、別です。
私は、値上げと賃金の記事で書いたとおり、人件費を絞って利益を作る道は選ばないと決めています。人を削れば店は痩せ、痩せた店は客を失い、結局すべてを失う——短期の電卓と長期の現実は違うからです。ここで書きたかったのは、「コスト削減に走れ」ではなく、その道が「正解」に見えてしまう構造こそが、この業態から承継の意欲を削いでいるという、一段深い問題のほうです。

いまのチャージやロイヤリティの仕組み上、頑張って売上を上げて利益を取りにいくより、売上を維持、もしくは多少下げながらコストを削減するほうが、利益が出てしまう場面があるんですよね。そんなことをしていたら事業の成長がない、と言われると思います。でも、契約は10年か15年。期限が決まっているなかでは、維持や守りのほうが「正解」になってしまう。統計でも見たとおり、自分の店だけが伸び続けるなんて考えられないですしね。この算数を、まず正直に認めるところからだと思います。
第5章:承継が壊すもの、承継が成立する形
ある方から聞いた、家族承継の話
承継について、忘れられない話があります。以前、ある方と話していて、「実は私も、前にコンビニに携わってまして」と打ち明けられたことがありました。
その方は、義理のお父様がオーナーで、事業を引き継ぐ側だったそうです。でも結局、引き継ぐ前に辞めて——離婚にまで至ったと。理由を、その方はこう言いました。仕事とプライベートの境界線がなくなって、関係を保てなかった、と。
24時間365日の店を家族で回すと、食卓が引き継ぎの場になり、休日がシフトの穴埋めになり、夫婦の会話が売上の話になる。家業と家庭の境界線は、意識して守らなければ簡単に溶けます。この方のケースが特別なのではなく、家族承継の最大のリスクは、税でも資金でもなく、家族の関係そのもの——この実話は、それを教えてくれました。事業承継税制がどれだけ整っても、ここは税制の外側にある問題です。
それでも、承継が成立する形はある
では、承継はすべて幻なのか。そうは思いません。形を選べば、成立する道はあります。
- 親族外承継——店長への承継:家族の境界線問題を避けられる、現実的な道です。実は私自身、店長への承継を考えたことがあり、現実と今後を率直に話したうえで、「私の契約が終わる前までに、結論を出してほしい」と伝えてあります。有期契約は承継の障害だと第4章で書きましたが、裏返せば——契約満了という明確な締切があるからこそ、承継の意思決定に期限を切れる。ずるずる先送りにならないのは、有期契約の数少ない利点です
- 複数店法人としての承継:複数店の記事で書いたとおり、複数店を束ねた法人は、仕組みと人材が資産になります。「店を継ぐ」ではなく「会社を継ぐ」形になると、承継の絵は描きやすくなります
- そして、承継するのは株式だけではない:店の信用、育てたスタッフ、地域との関係。それらは契約が終わっても、次の仕事に持っていける資産です

以前、ある方から「実は私も前にコンビニに携わってまして」と話しかけられたことがあるんです。義理のお父様がオーナーで、引き継ぐ側だった。でも引き継ぐ前に辞めて、離婚にまでなったと。仕事とプライベートの境界線がなくなって、関係を保てなかったそうです。この話は忘れられないですね。うちはどうかといえば——完結です。店長への承継を考えたこともあって、現実と今後を話したうえで、私の契約が終わる前までに結論を出してほしいと伝えてあります。決めるのは本人ですから。
第6章:税制が問うているもの——「完結」も、立派な事業計画
「続ける気のある者だけ、軽くする」という設計
今回の見直し案を、あらためて眺めます。免除の条件は、浮いた資金を賃上げと成長投資に確実に振り向けること。つまりこの制度は、こう言っているわけです——事業を本気で続け、人に投資する者にだけ、税を軽くする。
現場の人間として、この設計は筋が通っていると思います。承継は、株の名義書き換えではなく、事業を続けるという宣言です。続ける気のない承継に税を軽くする理由はない。そして裏返せば——この税制がコンビニ加盟店にあまり響かないのだとしたら、それは税制の欠陥ではなく、「賃上げと成長投資が合理になる事業の形」を、この業態がどこまで用意できているかという、私たち側と本部側の宿題なのだと思います。セブンの提携の記事で見た「加盟店利益の底上げなしに成長はない」という言葉と、これは同じ場所を指しています。
実務——動く可能性が少しでもあるなら
実務の整理です。現行特例の計画提出期限は2027年9月末、残り約1年。新制度の中身は年末の与党調整で決まるため、「新制度を待つ」か「現行特例に間に合わせる」かの判断が発生し得ます。ここで大事なのは、特例承継計画の提出は、承継の実行そのものではないこと。出しておいて使わない選択もできます。法人で店を持っていて、承継の可能性が少しでもあるなら、早めに顧問税理士に相談して「出せる状態」を作っておく——これが現時点の安全策です(判断は必ず専門家と。この記事は税務助言ではありません)。
そして年末、税制改正大綱で新制度の中身が出ます。そこで続報を書きます——これも消費税と同じ、定点観測です。
「完結」という設計
最後に、私自身の答えを書いておきます。うちは——完結です。自分の代で、きれいに締める設計。
これは諦めではありません。契約の終わりから逆算して、店長には期限つきで承継の選択肢を渡し、スタッフには次がある形を整え、自分は出口の準備をする——「完結」も、立派な事業計画です。継がせる承継、譲る承継、そして締める完結。どれを選んでも、必要なのは「早く決めて、逆算する」ことだけ。契約更新しない決断の記事や独立・後継者支援の記事で書いてきた出口の話と、今回の税制の話は、実は同じ一枚の地図の上にあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 事業承継税制の見直しとは、何が変わるのですか?
現行制度は、後継者の相続税・贈与税を「猶予」し、後継者の死亡または次の承継の時点で「実質免除」する二段構えです。経産省の見直し案は、賃上げや成長投資に取り組む企業に対象を絞ったうえで、要件を満たせば最初から「免除」にするもの。2027年度の税制改正要望に盛り込まれ、具体的な制度設計は2026年末にかけて政府・与党で調整されます(2026年8月24日時点・報道ベース)。
Q2. なぜ現行制度は使われにくかったのですか?
免除が確定するのが「後継者自身の死亡または次の承継のとき」——つまり何十年も先だからです。それまで要件を満たし続ける必要があり、「いつか猶予が取り消されるかもしれない」という不安を抱え続ける構造でした。税額の問題ではなく予見性の問題で、今回の「最初から免除」案はこの急所への回答です。
Q3. コンビニ加盟店にも関係がありますか?
法人で店を持っている以上、株式の承継はいつか必ず来る話なので、関係はあります。ただし率直に言えば、税制が良くなっても承継が増えるかは別問題だと考えています。承継の手前に「承継したくなる事業の形か」という問いがあり、そこには有期契約とチャージ構造という、税制の外側の要因が横たわっているからです。
Q4. 「維持が正解になる算数」とは、どういう意味ですか?
多くのFC契約ではチャージが売上総利益に応じて計算されるため、売上を伸ばした利益の少なくない割合は按分される一方、店側費用(人件費・廃棄など)を削減した分はほぼ全額手元に残ります。加えて契約は10〜15年の有期で、期限ある事業では長期投資より維持・守りが合理になりやすい。誰かの怠慢ではなく、制度設計が生む合理的行動です。ただし私はコスト削減で利益を作る道は選ばないと決めています——その道が「正解」に見える構造自体が、承継意欲を削ぐ問題だと考えています。
Q5. 家族に承継する場合、何に気をつけるべきですか?
税や資金より先に、家族の関係そのものだと思います。私が直接聞いた実話では、義父の店を継ぐ予定だった方が、仕事とプライベートの境界線がなくなって関係を保てず、承継前に辞め、離婚に至りました。24時間営業の家業は、食卓と休日を簡単に飲み込みます。承継の設計と同時に、家庭との境界線の設計が必要です。
Q6. 親族以外への承継はできますか?
できますし、現実的な選択肢だと思います。私自身、店長への承継を考え、率直に話したうえで「契約が終わる前までに結論を出してほしい」と期限つきで選択肢を渡してあります。有期契約は承継の障害である一方、契約満了という締切があるからこそ意思決定を先送りにしない、という利点にもなります。制度面の詳細は本部・専門家への確認が必要です。
Q7. 現行の特例は、いつまでに何をすればいいのですか?
特例承継計画の都道府県への提出期限が2027年9月30日です(2026年度改正で延長済み)。重要なのは、計画の提出は承継の実行そのものではなく、出しておいて使わない選択もできる点です。承継の可能性が少しでもあるなら、早めに顧問税理士に相談し「出せる状態」を作っておくのが安全だと思います。新制度を待つか現行特例に乗るかの判断も、専門家と一緒に。
Q8. 新制度の中身は、いつ分かりますか?
2026年末にかけての政府・与党の税制調整——年末の税制改正大綱で具体化する見通しです。免除の要件(賃上げ・生産性向上への資金活用)や悪用対策の中身もそこで決まります。大綱が出た時点で、この記事の続報を書く予定です。
Q9. 承継しない場合、何を考えておくべきですか?
「完結」も立派な事業計画だと考えています。契約の終わりから逆算して、スタッフの次の形を整え、自分の出口(契約満了・更新判断・資産の整理)を設計する。継ぐ・譲る・締めるのどれを選んでも、必要なのは早く決めて逆算することです。当ブログの契約更新・独立支援の記事もあわせてご覧ください。
Q10. この記事の情報は、いつ時点のものですか?
2026年8月24日時点の報道・公表情報(経産省の2027年度税制改正要望の方向性、特例承継計画の提出期限2027年9月30日など)に基づきます。制度の詳細は年末の調整で変わる可能性があります。本記事は税務・法務の助言ではありません。個別の判断は必ず顧問税理士等の専門家にご相談ください。
まとめ:税制の前に、問われているもの
経産省が事業承継税制の見直しへ——猶予を「最初から免除」に変え、ただし賃上げ・成長投資に取り組む企業に絞る案です。現行制度が使われなかったのは、免除の確定が自分の死後という予見性の問題で、見直しの方向は正しい。それでも私は、コンビニFCの承継が増える気はあまりしない、と正直に書きました。理由は税ではなく構造です——比例チャージの下では売上増のリターンは按分され、コスト削減は全額残る。契約は10〜15年の有期。縮む市場。この3つが揃うと「維持が正解」という算数が成立してしまい、承継したくなる形が作りにくい(ただし私はその「正解」を選ばない、とも書きました)。家族承継には税制の外側のリスク——境界線の喪失が家族関係を壊す——があり、成立する形は親族外承継・複数店法人など、設計次第で残っています。うちは完結——店長に期限つきの選択肢を渡し、契約満了から逆算する設計です。今回の税制が「続ける気のある者だけ軽くする」設計なら、問われているのは税より先に「承継したくなる事業の形」。実務は一点、現行特例の計画提出期限は2027年9月末——可能性が少しでもあるなら、税理士に相談して「出せる状態」を。年末の大綱で続報を書きます。
この記事の要点
- 経産省が事業承継税制の見直しへ=賃上げ・成長投資を条件に相続・贈与税を「最初から免除」する案(27年度要望)
- 現行制度が使われなかった理由=免除確定が自分の死後という予見性の問題
- 時系列3点=2018年10年特例/2027年9月末の計画提出期限/2026年末の制度設計
- それでもコンビニFCの承継は増えない気がする——理由は税でなく構造
- 比例チャージ=売上増のリターンは按分・コスト削減は全額残る=リターンの非対称
- 有期契約(10〜15年)×縮む市場=「維持が正解」の算数が成立してしまう(誰も悪くない)
- ただしその「正解」は選ばない——正解に見える構造自体が承継意欲を削ぐ問題
- 家族承継の最大のリスクは税でなく関係=境界線の喪失(実話:承継前に離婚に至った例)
- 成立する形=親族外承継(契約満了を意思決定の締切に使う)・複数店法人・「完結」も事業計画
- 実務=特例計画の提出は承継の実行ではない。可能性があるなら税理士に相談し「出せる状態」を
次のアクション
- [ ] 自分の店の法人形態と株式の状況(誰が何株)を一度整理する
- [ ] 承継の選択肢(家族・店長・譲渡・完結)を、感情込みで一度書き出してみる
- [ ] 可能性が少しでもあるなら、顧問税理士に特例承継計画(期限2027年9月末)の相談をする
- [ ] 家族承継を考える場合、仕事と家庭の境界線のルールを承継設計とセットで話し合う
- [ ] 親族外承継を考える場合、候補者に期限つきで率直に選択肢を伝える
- [ ] 契約の残り期間から逆算した「出口の年表」を作る(更新判断・投資回収・承継決断の締切)
- [ ] 年末の税制改正大綱(新制度の中身・賃上げ税制・投資減税)をチェックする
このブログ内の関連記事
出口と承継を考える
FC契約の構造を知る
数字と市場の現実
参考|公式情報
- 中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置):制度の要件・特例承継計画の一次情報
- 国税庁|非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例:現行の「猶予と免除」の公式解説
- 事業承継・引継ぎ支援センター(中小機構):親族承継・第三者承継を無料で相談できる公的窓口
- 日本フランチャイズチェーン協会(JFA):コンビニ業界の統計・業界情報
- よろず支援拠点|経営相談:出口設計・資金計画を相談できる無料の公的窓口
事業承継税制のニュースを読みながら、考えていたのは税金のことではなく、店長の顔と、子どもの顔でした。
継がせたいと言えない事業。それでも15年、誇りを持ってやってきた事業。この矛盾は、たぶん私だけのものではありません。全国の同業の50代・60代が、同じ二つの顔を思い浮かべながら、答えを出せずにいる。今回の税制が本当に問うているのは、納税のタイミングではなく——この事業は、次の誰かに手渡したくなる形をしているか。その宿題は、国と本部と、私たち自身に、三等分で出されているのだと思います。
うちは、完結を選びました。店長には期限つきで選択肢を渡し、契約の終わりから逆算して、きれいに締める準備をする。寂しい選択に見えるかもしれません。でも、終わりを決めた事業は、最後の日まで手を抜けない事業でもあります。
継ぐ人も、譲る人も、締める人も。出口から逆算した今日は、いつもより少し、真剣です。

