外食が「中食」に降りてくる日|9ポイント差が動かす業界地図と、降りてこられない店——昼の客単価400円のレジから【現役オーナー】
前回の記事(食品消費税1%を、コンビニのレジから読む)では、制度そのものと、レジやプライスカードの実務を書きました。今回はその続編——この9ポイントの差が、業界の地図を動かし始めているという話です。
食料品が1%になり、店内飲食(外食)が10%のまま据え置かれれば、その差は9ポイント。報道によれば、外食チェーン各社はすでに動き出しています。居酒屋「はなの舞」を展開するチムニーはテイクアウト対応店舗を全店の約3割から5割へ引き上げることを目指し、宅配専門のゴーストレストランのブランド拡大も検討。ロイヤルHDはロイヤルホストにテイクアウト専用メニューを導入し、時間がたっても品質を保ちやすい付け合わせへの変更を検討しているといいます。
これが意味することは、はっきりしています。2027年春、外食チェーンが一斉に「中食」に降りてくる。ファミレスと居酒屋のテイクアウトが、コンビニの弁当・総菜と同じ1%の土俵で並ぶのです。
でも——その話をする前に、私は店の近くの個人店の店主さんに、話を聞いてみました。返ってきたのは、報道とは少し違う声でした。「分かってはいても、うちは踏み切れない」。
そしてもうひとつ。この記事を書くために自店の数字を見直して、あらためて突きつけられたことがあります。12時から13時、100人のお客様がいらしても、客単価は400円未満になる日が多い——コンビニの昼は、すでに「食事の器」で勝負する場所ではなくなりつつあるのかもしれない、ということです。
- ニュース整理——9ポイント差が動かし始めたもの
- 「テイクアウトへ逃げる」の外側——降りてこられない店の話
- 昼の客単価400円——コンビニの昼の、正直な現在地
- 2027年春、何がぶつかるのか——武器の棚卸し
- 袋詰めスペースの前で食べる人たち——「実質イートイン」問題
- 加盟店が、いま聞いておくべきこと
※本記事は2026年8月6日時点の報道に基づきます。制度はまだ方針・法案の段階で、線引きの詳細は今後の税制改正大綱以降に示される見通しです。実務の判断は本部からの正式案内をお待ちください。
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第1章:ニュース整理——9ポイント差が動かし始めたもの
小売:レジ改修は「最低6カ月・数千万円」
まず小売側です。食品スーパー各社はレジと基幹システムの改修に動き出しており、ある大手は期間は最低で6カ月、費用は数千万円程度と見込んでいると報じられています。別の大手は、2027年4月に向けてすでにベンダーとの連携を始めたとのこと。
ここに、構造的な問題があります。2027年4月に間に合わせるには、逆算して2026年内には仕様が固まっている必要がある。しかしその前提となる線引きの詳細は、9月の与党税制改正大綱以降にしか出てこない。準備期間が、制度の側の都合で圧縮されているのです。前回の記事で「準備期間は実質半年強」と書きましたが、システム側から見ると、その厳しさはもっと具体的です。
外食:4団体が緊急メッセージ、そしてテイクアウトへ
より大きな変化は外食側で起きています。2026年7月14日、日本フードサービス協会など外食4団体(全国飲食業生活衛生同業組合連合会、日本飲食団体連合会、大阪外食産業協会と連名)が緊急メッセージを発信しました。要旨は、持ち帰り1%・店内10%と差を設けることに反対し、消費者に分かりやすい同じ税率を求めるというもの。外食は重要な食のインフラであり、税率差は外食を価格面で不利にし、雇用や飲食店経営、さらに川上の農林水産業にも影響が及ぶ、という主張です。
そのうえで、外食を対象外とするのであれば——として求めているのが、プレミアム商品券など消費者に直接届く支援、税抜き価格+税という表示の可能化、そしてレジ・システム改修費やキャッシュレス化に伴う事業者負担の軽減でした。ここは覚えておいてください。改修費の負担は、小売だけでなく外食にとっても重い。この一点が、第2章の話につながります。
そして声明を出しつつ、各社は現実的に動いています。それが冒頭のチムニーであり、ロイヤルHDです。制度に反対の声を上げながら、同時に制度に適応する準備をする——経営としては、まったく正しい両構えだと思います。
値上げは、止まらない
もうひとつ。帝国データバンクの集計では、1〜11月の累計値上げ品目が1万8,347品目に達し、年間では2025年の2万609品目を上回る可能性があるとされています。同社は減税について、値上げの主因はコスト要因なので、値上げ圧力を抑える効果は限定的になりうると指摘しています。
これは前回の記事で私が書いた「108円が107円になるだけかもしれない」という現場の実感と、同じことを別の角度から言っている数字です(消耗品費の記事で書いた資材インフレも、この1万8,347品目の背景にあります)。
第2章:「テイクアウトへ逃げる」の外側——降りてこられない店の話
近所の店主に、聞いてみた
「外食はテイクアウトへ逃げる」——報道の見出しは、そう読めます。でも、そこで名前が出るのはチムニーであり、ロイヤルHDです。では、私の店の近くにある個人経営の飲食店は、どうするのか。気になったので、直接聞いてみました。
話を聞いたのは、予約制の洋食店の店主さんです。お一人3万円ほどのコース料理を出す店で、店主さんと従業員1人の2人体制。近くでイベントやお祭りがあるときには、カレーなどを提供して出店することもある——つまり、やる気がないわけでは、まったくないのです。
それでも、返ってきた答えははっきりしていました。
大手やチェーン店は持ち帰りメニューの開発ができるかもしれない。でも個人経営の店は人数も限られているし、分かってはいても、持ち帰りの対応をすることはできない。
理由も、経営者の言葉として筋が通っていました。メニュー開発、それにかかる人件費。人を増やしたはいいが、持ち帰り需要があまり伸びない可能性も考えると、現状もギリギリで回しているのに、売上が下がると分かっていても、なかなか踏み切れない——。
「投資できる体力」があるかどうかで、差がつく
この言葉を聞いて、私はこの一連のニュースの本当の構図が見えた気がしました。
9ポイントの差は、消費者にとっては減税です。でも供給側から見ると、「テイクアウトに投資できる体力があるかどうか」で結果が分かれる仕組みでもある。
| 大手・チェーン | 個人経営店 | |
|---|---|---|
| メニュー開発 | 本部の商品開発部門が担える | 店主が営業しながらやるしかない |
| 人手 | 店舗数で吸収・専用オペを組める | 2人体制では回らない |
| 投資の失敗リスク | チェーン全体で分散できる | 一店に全部かかる |
| 結果 | 3割→5割へ拡大、専用メニュー導入 | 分かっていても、踏み切れない |
外食4団体が声明の中で「レジ・システム改修費の負担軽減」を求めていたのも、同じ構図です。制度が変わるときのコストは、規模の小さい事業者ほど重くのしかかる。党内からも「農家や小規模事業者への対策が見えない」という指摘が出ていると報じられていましたが、現場の店主さんの言葉は、まさにその中身でした。
私はここで、制度の是非を論じるつもりはありません(前回書いたとおり、それは投票所と国会の仕事です)。ただ、業界の地図が動くとき、動けるのは体力のある側だけだ——という事実は、同じ小さな商売をやる者として、書き留めておきたいと思いました。そしてこれは、私たち加盟店にとっても他人事ではありません。

店の周りの個人営業の飲食店の店主さんに話を聞いてみたんです。予約制の洋食屋さんで、店主さんと従業員1人。イベントやお祭りのときはカレーなんかを提供されるので、やる気がないわけじゃないんですよ。でも「大手やチェーン店は持ち帰りメニューの開発ができるかもしれないけど、個人経営の場合は人数も限られているし、分かってはいても持ち帰りの対応はできない」と。メニュー開発、人件費、人を増やしても需要が伸びない可能性——現状もギリギリで回しているのに、売上が下がるのが分かっていても踏み切れない、と。まぁ、そうだよね、と思いました。
第3章:昼の客単価400円——コンビニの昼の、正直な現在地
100人来ても、400円前後
さて、こちらの話をします。「外食が中食に降りてくる」と身構える前に、自分たちの昼が今どうなっているかを確認しておくべきだと思い、自店の数字を見直しました。
結果は、なかなか厳しいものでした。12時から13時、100人のお客様がいらしても、客単価は400円未満になる日が多いのです。だいたい400円前後で推移しています。
周辺の価格帯と並べてみます。
| 価格帯 | 備考 | |
|---|---|---|
| 自店の弁当 | 500円前後 | |
| 周辺の飲食店・弁当 | 500〜700円前後 | |
| 近くの弁当屋 | 500円未満 | ただし人数的に作れる数に限界があるように見える |
| 自店の12時台の客単価 | 400円前後 | 100人来店してもこの水準の日が多い |
つまり——弁当は500円前後で置いてあるのに、昼のピークの客単価はそれを下回っている。これが何を意味するか。お昼にいらっしゃるお客様の多くは、弁当を買っていないということです。
「食事の器」の勝負から、半分降りている
前に書いた「食事キャンセル」の記事(レジで増えている、バナナ・サラダチキン・ゆで卵・栄養補助バーの500円未満のかごの話)と、この数字は完全につながっています。昼のコンビニは、すでに「一食まるごと」を売る場所ではなくなりつつある。おにぎり1個とお茶。パンとコーヒー。バーとヨーグルト。そういう「軽く済ませる」需要が、レジの主流になっている。
一方で、体を使う現場仕事のお客様は、変わらず1,000円ほど買っていかれます。つまりコンビニの昼は、400円で済ませる層と、1,000円使う層の両端でできていて、外食のテイクアウトが狙ってくるであろう500〜1,000円の「しっかりした一食」ゾーンは、実はもう主戦場ではなくなっている——これが自店の現在地です。

うちの弁当は500円前後、周りのお店も大体500円から700円前後です。近くの弁当屋さんは500円未満で販売していますが、人数的に作れる数には限界が来ているように見えます。ただ、うちの12時から13時の客単価は、100人来店があっても400円未満になる日が多くて、大体400円前後で推移しているんです。現場仕事の方は1,000円ほど買っていかれますけど、全体としてはそういう数字。この現実を知らずに「外食が来る」と身構えても、たぶん的を外すなと思いました。
安い店には、作れる数の限界がある
もうひとつ、大事な観察を書いておきます。近くの弁当屋さんは500円未満で頑張っていますが、人数的に作れる数に限界が来ているように見えるのです。
これは、価格競争の相手を見るときの重要な視点です。安さで勝負する店は、たいてい供給量で勝負できない。作り手の人数が上限になるからです。一方コンビニは、店で作らないぶん、量と時間(24時間・欠品しない)を担保できる。第2章の個人店の話と合わせると見えてくるのは——外食も弁当屋も、規模の制約から自由ではないということです。
第4章:2027年春、何がぶつかるのか——武器の棚卸し
同じ1%の土俵に、誰が立つのか
では、2027年春の構図を整理します。同じ1%の土俵に並ぶのは、コンビニの弁当・総菜、スーパーの惣菜、そして外食チェーンのテイクアウトです。
| 外食チェーンのテイクアウト | コンビニの弁当・総菜 | |
|---|---|---|
| 強み | 調理力・出来立て感・ブランド・単価の高さ | 立地・24時間・待たない・欠品しにくい |
| 価格帯 | 中〜高(店の価格から降りてくる) | 低〜中(400〜700円) |
| 弱み | 店舗数と立地の密度・営業時間・オペ負荷 | 出来立て感・調理の幅 |
| 買われる場面 | 「今日はちょっといいものを」 | 「早く・近く・確実に」 |
こう並べると、正面衝突というよりすみ分けに近いのが分かります。ロイヤルホストのテイクアウトが1,000円台なら、それは400円で済ませたい人の選択肢ではない。逆に「今日はちゃんとしたものを食べたい」という日には、コンビニの弁当より魅力的でしょう。
ドラッグストア戦の教訓——同じ土俵で戦わない
この構図、実は既視感があります。ドラッグストアとの競合の記事で書いた話とそっくりなのです。あのときの結論は、「安さで追いかけず、相手がいない場所(開いている時間・できたて・近さ)を磨く」でした。
外食のテイクアウトに対しても同じです。調理力で勝負しない。単価で背伸びしない。私たちの土俵は、朝6時にも夜11時にも開いていて、待たずに買えて、400円でも1,000円でも用が足りる——時間と確実性です。むしろ第3章で見たとおり、外食が降りてくるゾーンと、うちの昼の主戦場(400円前後)は、そもそもズレている。
ただし、油断できない点が2つ
とはいえ、楽観だけでもいられません。注意点が2つあります。
ひとつは、「たまの贅沢」需要の流出。給料日後や金曜日に、いつもより少し良いものを選ぶお客様がいます。1%が効いて外食のテイクアウトが手を伸ばしやすい価格になれば、この「上振れの日」が持っていかれる可能性がある。コンビニの弁当・総菜のなかで、「今日はちょっといいものを」に応える一段上の商品があるかどうかが効いてきます。
もうひとつは、デリバリーとの合わせ技。ゴーストレストランやデリバリー強化は、立地の不利を配送で埋める動きです。「近さ」というコンビニ最大の武器は、配送に一部代替されうる——ここは中長期の論点として、頭に入れておきたいところです。
第5章:袋詰めスペースの前で食べる人たち——「実質イートイン」問題
イートインがなくても、食べる人はいる
前回の記事で、イートインの税率差(現行2ポイント→9ポイントに拡大の可能性)を書きました。「うちはイートインがないから関係ない」と思われた方に、自店の観察をお伝えします。
うちの店には、基本的にイートインスペースはありません。それでも——袋詰めスペースなどを使って、外回りのサラリーマンの方などが手早く食事を済ませていくことは、普通にあります。年代も職種も、まんべんなく。
制度は「イートイン設備の有無」や「購入時の意思確認」で線を引こうとします。でも現場の実態は連続的です。設備としてのイートインはなくても、実質的にその場で食べる行為は起きている。差が2ポイントなら、この曖昧さは誰も気にしません。でも9ポイントになったとき、この曖昧なゾーンをどう扱うのか——制度設計の側が、現場の連続性をどこまで見てくれるかが問われます。
現場としての構え
正直に言えば、店にできることは多くありません。前回書いたとおり、購入後の行動を店が追うことは現実的に不可能ですし、「そこで召し上がるなら10%です」と言って回るのは接客として成立しません。
だから構えはこうです。①制度の運用ルールが出たら、その通りに案内する。②それ以上のことは店の責任範囲ではないと、スタッフに明確に伝えておく。スタッフが板挟みで苦しまないように線を引いておくことが、店長・オーナーの仕事だと思っています。ルールが出る前に自主的に厳しい運用を始めても、トラブルを増やすだけです。

うちは基本的にイートインはないんですが、袋詰めスペースなどを使って、外回りのサラリーマンの方が手早く済ませることはよくあります。年代も職種も、まんべんなくですね。イートインがある店の問題だと思われがちですけど、実際には「設備はないけど食べている」というグレーな部分が、どこの店にもあると思うんです。差が9ポイントになったとき、そこがどう扱われるのか。運用ルールが出るまでは、こちらから騒がずに待つしかないですね。
第6章:加盟店が、いま聞いておくべきこと
「最低6カ月・数千万円」を、自分の店の言葉に翻訳する
小売大手の「レジ改修は最低6カ月・数千万円」という数字は、コンビニ加盟店にとって他人事ではありません。チェーン全体のシステム改修費が、最終的にどう扱われるのか——ここは早めに確認しておく価値があります。
私の理解では、コンビニのPOS・基幹システムの改修は本部主導・本部負担で進むのが通例です。ただ、これだけの規模の改修になると、加盟店側に何らかの負担や作業(機器の入れ替え作業、営業時間中の切替対応、スタッフ教育など)が発生する可能性はある。「たぶん本部がやってくれる」で済ませず、案内が出たときに負担の主体と範囲を確認する——それだけのことです(本部との向き合い方は本部とのうまい付き合い方、SV・本部対応の記事もどうぞ)。
質問リスト(案内が出たら聞く)
- システム改修の費用負担の主体と、加盟店に発生する作業は何か
- イートイン・実質イートインの運用ルール(申告制か、レジ操作をどう分けるか、スタッフはどこまで確認するのか)
- 価格表示の運用(プライスカードの交換方法・支給の有無・作業時期)
- 切替日前後の営業オペレーション(何時に何を切り替えるのか)
- 2年後の「戻し」を見据えた運用(往復2回になる前提の設計になっているか)
そして、9月の税制改正大綱
前回の記事で5つの定点(閣議決定・法案成立・制度詳細・本部案内・事業者対策)を挙げました。そのうち制度詳細の分岐点が、9月の与党税制改正大綱です。線引き(対象品目・イートインの扱い)が、ここでようやく見えてくる。外食のテイクアウト強化も、小売のシステム仕様も、すべてこの後に本格化します。9月——それが次の節目です。
そのあいだ、やることは変わらない
制度の行方を待つあいだ、店でやることは今までと同じです。昼の客単価が400円前後だという現実を直視して、その400円のお客様に選ばれ続けること。そして「今日はちょっといいものを」の日にも応えられる品揃えを、少しずつ育てておくこと。外食が降りてくる春が来ても、商圏に合わせた売場づくりと、毎日の売上づくりの基本が効くことに変わりはありません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「9ポイント差」とは何のことですか?
食料品の消費税が1%になる一方、店内飲食(外食)は10%のまま据え置かれる場合の税率差のことです。現行の軽減税率では持ち帰り8%・店内10%の2ポイント差ですが、これが9ポイントに広がる見込みで、外食が価格面で不利になる構図が生まれます(2026年8月6日時点の方針段階の話です)。
Q2. 外食チェーンは、具体的にどう動いていますか?
報道によれば、居酒屋「はなの舞」のチムニーはテイクアウト対応店舗を全店の約3割から5割へ引き上げることを目指し、宅配専門のゴーストレストランのブランド拡大も検討。ロイヤルHDはロイヤルホストにテイクアウト専用メニューを導入し、時間がたっても品質を保ちやすい付け合わせへの変更を検討しています。
Q3. 外食業界は減税に賛成しているのですか?
2026年7月14日、日本フードサービス協会など外食4団体が緊急メッセージを発信し、持ち帰りと店内で税率差を設けることに反対、消費者に分かりやすい同じ税率を求めました。対象外とされる場合は、プレミアム商品券などの直接支援、税抜き価格+税の表示可能化、レジ・システム改修費などの事業者負担軽減を要望しています。
Q4. 個人経営の飲食店も、テイクアウトを始めるのですか?
多くは難しいと見ています。私が話を聞いた近隣の予約制洋食店(店主と従業員1人の2人体制)は、「大手はメニュー開発ができるかもしれないが、個人経営では人数が限られ、分かっていても踏み切れない」と話していました。メニュー開発の手間と人件費、需要が伸びない場合のリスク、そして現状でもギリギリの運営——制度対応にはそれ自体に体力が要るのです。
Q5. コンビニの弁当は、外食のテイクアウトに負けませんか?
価格帯と買われる場面が違うため、正面衝突というよりすみ分けに近いと考えています。外食テイクアウトの強みは調理力・出来立て感・ブランドで、価格帯は中〜高。コンビニの強みは立地・24時間・待たない・欠品しにくいことで、価格帯は400〜700円が中心です。ドラッグストア競合と同じく、同じ土俵で戦わないのが基本方針になります。
Q6. それでも警戒すべき点はありますか?
2つあります。ひとつは「たまの贅沢」需要の流出——給料日後などに少し良いものを選ぶ日に、外食テイクアウトが選ばれる可能性です。「今日はちょっといいものを」に応える一段上の商品が自店にあるかが効きます。もうひとつはデリバリーとの合わせ技で、配送によって「近さ」という強みが一部代替されうる点です。
Q7. 昼の客単価が400円前後というのは、低くないですか?
低いです。ただ、これが自店の現実です。12時〜13時に100人来店があっても客単価400円未満の日が多い。弁当を500円前後で置いていても、多くのお客様は「軽く済ませる」買い方をされている、ということです。一方で現場仕事のお客様は1,000円ほど買われるので、昼は「400円層」と「1,000円層」の両端でできている、というのが実感です。
Q8. イートインがない店でも、税率の問題は起きますか?
起きうると考えています。私の店にイートインスペースはありませんが、袋詰めスペースなどで手早く食事を済ませる方は実際にいます。制度は設備の有無や意思確認で線を引きますが、現場の実態は連続的です。差が9ポイントになったとき、この曖昧なゾーンがどう扱われるかは、制度詳細の注目点のひとつです。
Q9. レジやシステムの改修費用は、加盟店の負担になりますか?
コンビニのPOS・基幹システムは本部主導・本部負担で改修されるのが通例ですが、規模が大きいだけに、機器入れ替えの作業や切替対応、スタッフ教育など店側の作業が発生する可能性はあります。「たぶん本部が」で済ませず、案内が出た時点で負担の主体と範囲を確認しておくことをおすすめします。
Q10. 次に何を見ておけばいいですか?
9月の与党税制改正大綱です。対象品目やイートインの扱いといった線引きの詳細は、ここで初めて具体化する見通しで、外食のテイクアウト戦略も小売のシステム仕様も、この後に本格化します。それまでは慌てず、本部からの案内を待ち、自店の昼の数字を把握しておく——それが現実的な構えです(本記事は2026年8月6日時点の情報に基づきます)。
まとめ:土俵が変わっても、立っている場所は変えない
持ち帰り1%・店内10%の9ポイント差が、業界の地図を動かし始めました。小売はレジ改修に「最低6カ月・数千万円」を見込み、外食4団体は税率差に反対する緊急メッセージを出しつつ、チムニーはテイクアウト対応を3割→5割へ、ロイヤルHDは専用メニューへと適応を進めています。2027年春、外食チェーンが一斉に中食へ降りてくる——けれど近隣の予約制洋食店の店主さんの答えは「分かってはいても踏み切れない」でした。制度対応には、それ自体に体力が要る。そして自店の12時台は、100人来ても客単価400円前後。コンビニの昼はすでに「一食まるごと」の勝負から半分降りていて、外食が狙う価格帯とはズレている。だから構えはドラッグストア戦と同じ——調理力で競わず、単価で背伸びせず、時間と確実性という自分の土俵を磨く。警戒すべきは「たまの贅沢」需要の流出とデリバリーの合わせ技だけ。次の節目は9月の税制改正大綱です。土俵の絵は変わっても、私たちが立っている場所は変えない——それが、地図が動く時代のいちばん強い足腰だと思います。
この記事の要点
- 持ち帰り1%・店内10%の9ポイント差が業界地図を動かし始めた(2026年8月6日時点・方針段階)
- 小売のレジ改修は「最低6カ月・数千万円」=仕様確定は26年内必要なのに線引きは9月大綱以降
- 外食4団体が7月14日に緊急メッセージ=税率差に反対、改修費など事業者負担の軽減も要望
- チムニーはテイクアウト3割→5割、ロイヤルHDは専用メニュー=反対しつつ適応する両構え
- 近隣の予約制洋食店(2人体制)は「分かっていても踏み切れない」=制度対応には体力が要る
- 9ポイント差は消費者への減税だが、供給側では「投資できる体力の差」を広げる
- 自店の12時台は100人来ても客単価400円前後=昼は「一食まるごと」の勝負ではなくなりつつある
- 外食テイクアウトの価格帯とコンビニの主戦場(400円層)はズレている=正面衝突よりすみ分け
- 警戒点は2つ=「たまの贅沢」需要の流出と、デリバリーによる「近さ」の代替
- 次の節目は9月の与党税制改正大綱=線引きが見えて初めて全てが本格化する
次のアクション
- [ ] 自店の12時〜13時の客数と客単価を1週間分、実数で確認する
- [ ] 昼のかごの中身を観察し、「軽く済ませる層」と「しっかり食べる層」の比率をつかむ
- [ ] 周辺の飲食店・弁当店の価格帯を歩いて確認する(500円未満・500〜700円・1,000円超)
- [ ] 「今日はちょっといいものを」に応える一段上の商品が自店にあるか点検する
- [ ] 本部案内が出たら聞く質問リストを作る(改修負担・イートイン運用・表示・切替・戻し)
- [ ] 袋詰めスペース等での飲食の実態を把握し、運用ルールが出るまでは現状維持と決めておく
- [ ] 9月の与党税制改正大綱のニュースにアンテナを立てる
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参考|公式情報
本記事は2026年8月時点の政府方針・業界報道に基づく解説です。税率の確定内容・対象の線引き・外食産業の統計は、下記の公式情報でご確認ください。
予約制の洋食店の店主さんは、話の最後に笑っていました。イベントの日にカレーを出すのは楽しいけれど、毎日はできない、と。3万円のコースを2人で作り続けている人が、400円の弁当の土俵に降りてくることは、たぶんこの先もありません。
それでいいのだと思います。あの店にはあの店の土俵があり、私たちには私たちの土俵がある。制度が変わると、土俵の絵が描き替えられます。でも、自分がどこに立っているかは、自分で決めていい。
昼の12時、うちのレジには400円のかごが並びます。おにぎりとお茶。パンとコーヒー。急いでいる人の、静かな昼ごはん。9ポイントの差がどう転んでも、あの人たちが「早く・近く・確実に」を必要としていることは変わりません。
地図が動く春が来ても、私たちはたぶん、いつもの場所に立っています。

