経営の基本
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朝5時から2時間、レジは教えない|「0.3人分の仕事」をシニアに渡す業務分解——働く高齢者943万人、国も「業務単位で切り出す」と言い始めた【現役オーナー】

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厚生労働省が、2027年度から新しい事業を始めると報じられました。ハローワークの求人情報と、高齢者を活用した事例をAIで分析して、「シニアでもできる仕事」を洗い出し、企業に提案する。提案に出向くのは、シルバー人材センターの職員です(2026年9月22日・日本経済新聞)。

例に挙がっていたのは、学校でした。授業は教員が担い、行事の会場設営や片付けはシニアに任せる。仕事を丸ごとではなく、業務の単位で切り出す。国が、はっきりそう言い始めたことに、目が止まりました。

同じことを、ちょうど店で考えていたからです。セルフレジの記事で、「機械が減らしたのは0.3人分の仕事で、人は0.3人では減らせない」と書きました。削れる仕事の単位と、削れる人の単位が合っていない。あの記事は、そこで止まっていました。

続きがあります。人の単位のほうを、小さくすればいい。4時間のシフトを2時間にする。レジは教えない。掃除、ゴミの回収、フェイスアップ、少しの品出し——後回しになりがちな仕事だけを、朝5時からの2時間、シニアの方に任せる。時給は同じです。既存スタッフが避けがちな仕事だからこそ、同じ時給の価値があると思っています。

先に断っておくと、これはうちの店でこれから試そうとしている設計で、実績ではありません。ただ、知り合いのオーナーの店には、すでにその形があります。早朝の2時間だけ、店頭とトイレの掃除を徹底的にやってもらっている。日販の高い店ですが、いつもきれいです。

  • ニュース——国が「業務単位で切り出す」と言い始めた
  • 「0.3人のシフトは組めない」の続き——人の単位を、小さくする
  • レジを教えない、という設計——機械の壁を、店の側が外す
  • 後回しの仕事を、主役の仕事に
  • 既存スタッフが長く働ける店が、いちばんの人件費対策
  • 始める前に確認すること——契約・安全・保険・年金・求人

※厚労省の事業は2026年9月22日時点の報道(日本経済新聞)に基づき、詳細は今後公表される予定です。想定分野は学校・医療機関・保育施設と報じられており、小売業が対象に含まれるかは分かりません。高齢者の就業統計は総務省の推計(2026年9月発表)です。法律・保険・年金の記述は同日時点の一般的な内容で、個別の判断は社会保険労務士・年金事務所・労働局にご確認ください。店の設計は、うちの店(都内3店舗)でこれから試す段階のものです。知り合いの店や他業種の例は伝聞です。


本記事の位置づけ|省人化シリーズの続編「0.3人分の仕事を、2時間の人に渡す」業務分解編

本記事は、厚労省が「業務単位で切り出す」と言い始めたニュースの読み方・レジは1人で足りるのに2人入れている時間帯の2人目を分解する考え方(4時間→2時間・8人時→6人時のモデル)・レジを教えないという設計と、合う人・合わない人・後回しになる仕事の共通点(締め切りの有無)・既存スタッフの定着が最大の人件費対策である理由・始める前の確認点(契約・安全・保険・年金・求人・既存の時間は削らない)を、現役オーナーがこれから試す設計として整理した記事です。「フロントはカンボジアから」で書いた「機械が減らしたのは0.3人分で、人は0.3人では減らせない」の続きにあたり、以下の関連記事とあわせて読むと、人時の設計から採用、定着までの流れが揃います。

⏱️ 人時の設計

🚪 採用——壁と出口

🌙 夜勤・定着・清掃

「人時の設計 → 採用 → 夜勤・定着・清掃」の順で読むと、人の単位を小さくして、後回しの仕事を名前のある仕事として渡す視点が身につきます。

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第1章:ニュース——国が「業務単位で切り出す」と言い始めた

数字の整理

項目内容
事業開始2027年度(厚労省の概算要求6.9億円)
仕組みハローワークの求人情報と高齢者の活用事例をAIで分析→「シニアでもできる仕事」を洗い出す→シルバー人材センターの職員が企業を訪問し、業務の切り分けを提案
学校:授業は教員、行事の会場設営や片付けはシニア
想定分野学校・医療機関・保育施設
シルバー人材センターの登録者約68万人(2025年度末・定年延長の影響で減少傾向)
働く高齢者(65歳以上・2025年)943万人・22年連続の増加・就業者全体の13.8%
高齢就業者の最多業種卸売業・小売業131万人(次いで医療・福祉122万人)
就業率65〜69歳54.5%・70〜74歳36.2%

「丸ごと」ではなく「業務単位」

この事業で、いちばん大事なのは仕組みの細部ではなく、考え方です。「シニアに任せられる仕事はあるか」と聞かれると、多くの職場は「ない」と答えます。仕事を丸ごと一人分で考えるからです。でも「この仕事のうち、切り出せる業務はあるか」と聞かれれば、答えは変わる。学校なら、授業は無理でも、行事の設営と片付けはできる。

小売業が対象に含まれるかは分かりません。でも、考え方はそのまま使えます。むしろ小売の現場は、切り出しやすい業務の集まりです。品出し、清掃、フェイスアップ、ゴミの回収。働く高齢者の最多業種が卸売業・小売業(131万人)なのは、偶然ではないと思います。

コンビニは、遅れている

そして正直に言えば、コンビニはこの点で遅れています。「全員がレジに立てること」を入口にしてきたからです。スーパーには、品出しだけをされている方がたくさんいます。あの方たちはレジに立ちません。コンビニにも同じ形があっていいはずなのに、覚えることが30種類ある仕事の入口を、全員に通らせてきた。時給二極化の記事で書いた「機械操作の壁」は、店が作っていた壁でもあります。


第2章:「0.3人のシフトは組めない」の続き——人の単位を、小さくする

1人で足りるのに、2人入れている時間帯

うちの店には、こういう時間帯があります。夜勤から早朝にかけて。昼のピークが終わったあと。お客様の入りが少なく、レジは1人で足ります。それでも、2人入れている。

理由は、レジ以外の仕事があるからです。人の入りが少ない時間帯は、レジから離れる仕事を入れる時間帯でもある。掃除、ゴミの回収、フェイスアップ、品出し。1人だと、レジに縛られてこれが進まない。スタッフの不満も溜まるし、仕事の質も落ちる。だから、仕方なく2人。

はなぱぱ
はなぱぱ

夜勤から早朝にかけてと、昼のピーク後に、こういう業務を置きがちです。人の入りが少ない時間帯に、レジから離れる業務を入れるのが大体だと思います。1人で充分なんだけど、仕方なく2人入れているケースですね。人の入りが少ないということは、レジ応援が発生しにくいことにもつながるので、任せやすいかもしれません。

「仕方なく」の中身を、分解する

その2人目は、何をしているのか。分解してみます。まず、レジの応援。ただし人の入りが少ないので、めったに発生しません。セルフレジの記事の言葉を借りれば、2人目のレジの仕事は「0.3人分」あるかないか。残りは全部、売場の仕事です。

あの記事で書いたのは、この0.3人分を機械に渡す話でした。渡せませんでした。ピークの30分だけ人を減らすシフトは組めないからです。今回は、逆から考えます。0.3人分を削るのではなく、残りの0.7人分を、レジから切り離す

4時間を、2時間にする

すると、こうなります。レジは、もともと1人で足りていた。売場の仕事は、専任でやるなら4時間もかかりません。2時間あれば、店頭の掃除も、ゴミの回収も、フェイスアップも、一巡できる。

いま分解したあと
レジ1人×4時間1人×4時間
売場の仕事2人目が、レジの合間に(1人×4時間)専任で1人×2時間
人時8人時6人時
売場の仕事の進み方後回し。残る専任。終わる

差は2人時です。仮に朝と昼の2枠でこれができれば1日4人時、月に約120人時。10月からの都内の最低賃金1,280円で計算すると、月に約15万円になります。もちろんこれはモデルです。「仕方なく2人」の枠が毎日2つある店の場合で、実際は曜日と店で変わります。

でも、数字より大事なのは、表の最後の行です。人時が減って、しかも売場の仕事が「残る」から「終わる」に変わる。安くなって、良くなる。業務分解の値打ちは、ここにあります。

その2人時は、いまの人から削らない

ここで、大事な断りがあります。差の2人時は、いま4時間入っている人の時間を削って作るのではありません。本人の合意なしに労働時間を減らすことは、労働契約法上できません(第6章⑦)。それに、第5章で書くとおり、既存スタッフの時間を削ってシニアを入れたら、定着どころか逆です。

作り方は2つです。

  • 次に空いたときに、2時間で募集する:いまの人が辞めたとき、あるいは新しく募集するとき、その枠を4時間ではなく2時間の専任として設計する。人時が減るのは、この道です
  • いまの人の2時間を、ピークへ回す:閑散帯で余っている2時間を、セルフレジの記事で「削れない」と書いたピークの0.3人分に充てる。人時は減りませんが、同じ人時で、ピークの穴と閑散帯の後回しの、両方が埋まります

先ほどの月約15万円は、前者のモデルです。後者は人件費が下がるわけではありませんが、こちらのほうが多くの店の現実に近いと思います。

人の入りが少ない時間帯だから、任せられる

もうひとつ、この時間帯だからこそ、という点があります。人の入りが少ない=レジの応援が発生しにくい。つまり、レジを教えていない人を置いても、困る場面が起きにくい。「レジができない人がいても回る時間帯」が、ちょうど「後回しの仕事が溜まっている時間帯」と重なっている。この重なりが、この設計の土台です。


第3章:レジを教えない、という設計——機械の壁を、店の側が外す

壁は、レジにあった

時給二極化の記事で、こう書きました。コンビニは覚えることが30種類あって、ご年配の応募者の方は機械操作でつまずくことが多い。だから面接で「スマホは使えますか」と聞き、難しそうなら役所の公園清掃などをおすすめしていた——と。

あれは、全員が同じ入口を通る前提の話でした。レジができなければ、コンビニでは働けない。そういう入口です。でも、その入口を通らない仕事を、店の側で作ってしまえばいい。レジは、教えない。それだけで、機械の壁は、その人の前から消えます。

朝5時か、昼13時から、2時間

考えている枠は、こうです。

  • :5時か6時ごろから、2時間
  • :13時か14時ごろから、2時間
  • 仕事:店頭・店内の掃除、ゴミの回収、フェイスアップ、軽い品出し
  • レジ:教えない。お客様に声をかけられたら、レジの人を呼ぶ

朝の枠は、夜勤明けの店を整える時間です。昼の枠は、ピークで崩れた売場を戻す時間です。どちらも、人の入りが少なく、崩れが溜まっている。

深夜1時からの、もうひとつの枠

もうひとつ、使い道があります。深夜1時か2時ごろから2時間、夜勤の休憩の交代要員として入ってもらう。

ここには、法律の前提があります。休憩は、仕事から離れて自由に使える時間でなければなりません(労働基準法)。夜勤が1人の店で、この意味での休憩をきちんと確保するには、休憩のあいだ店に立つ人が要る——どの店にも共通する課題です。この枠は、その役です。

だからこそ、ここは朝・昼と違います。休憩中にお客様が来たら、対応するのはこの人です。最低限のレジは、覚えてもらうことになります。それに、深夜は時給に割増がつく(22時から5時までは25%以上)。深夜の仕事は敬遠されがちですが、「少しでも稼ぎたい」という方には向いている。ですからこの枠は、本人の要望があれば。そして、朝か昼の枠で店に慣れてからです。

順番にすると、こうなります。

  1. 面接で「2時間で足りますか」を聞く
  2. 朝か昼、レジなしの2時間から始める
  3. 希望があれば、慣れてから深夜の休憩枠へ(最低限のレジ・割増あり)
はなぱぱ
はなぱぱ

5時6時ごろから、13時14時ごろから、2時間くらいが必要になるかと思います。1時2時ごろから夜勤の休憩時間にあてる、というのもあり。ただ、そこは深夜割増で時給が変わるので、少しでも稼ぎたい、最低限のレジは覚える、という要望があれば考えます。どちらにしても、朝か昼の時間で経験してからのほうが良さそうです。実は、レジなしの短時間をおすすめしたことは、これまでにもあるんです。でも、長い時間働きたいというご要望で、結局レジを覚えてもらわなくちゃいけなくなる、という流れでした。

正直に書く——この枠は、全員には合わない

吹き出しの最後に、うまくいかなかった話が入っています。レジなしの短時間を、応募者の方におすすめしたことは、これまでにもあります。でも、「もっと長く働きたい」というご要望で、結局レジを覚えてもらう流れになりました。

年金だけでは足りない、しっかり稼ぎたい——という方には、2時間は短すぎます。この枠が合うのは、「少し働きたい」方です。体を動かしたい。朝の習慣にしたい。年金があるので、少しの上乗せでいい。そういう方は、943万人の中に確かにいます。65〜69歳の半分以上が働いている時代です。

だから、募集の紙には、時間も、レジがないことも、はっきり書く。育てて、送り出す記事で「何が身につくか」を書くべきだと書きましたが、この枠は逆で、「何をしないか」を書くことが、ミスマッチを防ぎます。


第4章:後回しの仕事を、主役の仕事に

「やりたくない」とは言わない。でも、残る

任せる仕事の中身です。うちで残りがちなのは——店頭の掃き掃除、駐車場のゴミ、ゴミ箱の回収と袋替え、トイレ、什器やケースの拭き上げ、フェイスアップ、菓子や日用品の軽い品出し。

スタッフは、これを「やりたくない」とは言いません。でも、残る頻度が高い。なぜか。

後回しになる仕事の、共通点

考えてみると、共通点があります。誰も待っていないのです。レジには、お客様が待っている。納品には、時間が決まっている。でも、トイレの掃除は、誰も待っていない——次にトイレを使うお客様が来るまでは。

だから、いつも最後になる。やる必要があるのは、誰もが分かっている。分かっていても、締め切りのある仕事に押し出される。「後回し」は怠慢ではなく、締め切りの有無で決まる順番です。

業務分解の軸は、ここにあると思います。難しさで分けるのではなく、締め切りの有無で分ける。締め切りのある仕事(レジ・納品・発注)は既存スタッフに。締め切りのない仕事は、専任の人に。その人にとっては、2時間のシフトそのものが締め切りになります。

知り合いの店——早朝2時間で、店頭とトイレを徹底する

知り合いのオーナーの店に、その形があります。早朝の2時間だけ、店頭と店内の掃除、お客様にお貸しするトイレの掃除を、徹底的にやってもらう。それだけの人です。

その店は、日販の高い店です。日販が高いほど、レジと品出しに追われて、掃除は後回しになる。それなのに、いつもきれいです。深いところまで踏み込んで聞いたわけではありません。でも、後回しになる仕事を、後回しにできない人に渡している——その構造は、外から見ても分かります。

はなぱぱ
はなぱぱ

直接やりたくないとは言わないんですけど、残っている頻度の多い仕事、というのはあります。知り合いのオーナーの店は、日販の高い店ですが、いつもキレイです。早朝の2時間ほど、店頭店内の掃除、貸し出しトイレの掃除など、やる必要があるのが分かっていても、レジや品出しに追われて後回しになって結局やらない、という仕事を徹底的にやってもらっているそうです。深いところまで踏み込んでは聞いていないんですけどね。

スーパーの品出し専任、新聞の再配達

同じ形は、ほかの業種にもあります。スーパーの品出しだけをされている方。あの方たちはレジに立ちません。新聞配達の現場でも、配送漏れの再配達をシニアの方が担っている、と聞きます。本配達の人がやると、本業が遅れる。専任なら、一件ずつ確実に回れる。

どれも、「仕事を丸ごと」ではなく「業務の単位」で渡しています。国が言い出したことは、現場では、もう始まっていました。

任せる仕事は、「格下」ではない

ひとつ、書いておきたいことがあります。店頭とトイレは、お客様が最初に見る場所です。棚がどれだけ整っていても、入口が汚れていれば、その店の印象はそこで決まる。揚げ物の足元の汚れを「小さな掃除」で防ぐ話も書きましたが、あれも、締め切りのない仕事をどう回すかの話でした。

後回しになっているのは、どうでもいい仕事だからではありません。締め切りがないだけで、店の顔を作る仕事です。それを、主役として渡す。だから時給は、同じです。レジを覚えないから安い、とはしません。新しく入る人と同じ時給から始めます。


第5章:既存スタッフが長く働ける店が、いちばんの人件費対策

削るのは、時給ではなく人時

人件費削減、と書くと、時給を下げる話に聞こえます。違います。時給は同じ。削れるのは人時(第2章の8人時→6人時)と、もうひとつ——辞める人を減らすことで浮く、採用と教育のコストです。

1人の時間帯の不満は、「1人」より「終わらない」から来る

1人の時間帯で溜まる不満の正体を、考えてみます。お客様が少ないなら、レジは1人で回る。しんどいのは、レジの合間に売場の仕事を進めようとして、進まないことです。中途半端に手をつけて、お客様が来て中断して、また戻って——終わらない。次のシフトの人が来て、「まだやってないの」という顔をされる。この積み重ねが、不満になります。

売場の仕事が専任の人のものになれば、レジの人はレジに集中できる。「残っている仕事」を気にしながら立たなくていい。それが、既存スタッフに長く働いてもらう方向につながる、と考えています。時間帯によって「定着」の仕組みは違うと書きましたが、人の入りが少ない時間帯の定着は、この「終わらなさ」を解くことだと思います。

辞めない分が、いちばん大きい

覚えることが30種類ある仕事です。1人辞めれば、募集して、面接して、30種類を教え直す。育つには時間がかかり、その時間が、そっくり人件費です。人件費は「一番効く数字」ですが、いちばん効くのは、時給でも人時でもなく、辞めない人の数だと思っています。

2時間の専任が1人入って、既存スタッフが1人、1年長く働いてくれたら。この2つを比べれば、答えは明らかです。

はなぱぱ
はなぱぱ

既存スタッフのやりたがらない業務をお任せして、ストレスを緩和して、既存のスタッフに長い期間働いてもらう。その方向で人件費を下げていくのも、ありなんじゃないかと思っています。既存スタッフが避ける仕事なので、同じ時給の価値はあると思います。

面談で、「残っている仕事」を聞く

10月の面談を、この確認に使うつもりです。項目をひとつ足します。「いちばん残りがちな仕事は、何ですか」。その答えが、2時間の枠に渡す仕事のリストになります。


第6章:始める前に確認すること——契約・安全・保険・年金・求人

ここからは、実務です。2026年9月22日時点の一般的な内容で、個別の判断は専門家にご確認ください。

① 契約の形——直接雇用が基本

厚労省の事業はシルバー人材センターを通す設計ですが、センター経由には契約の形があります。請負は、仕事を請け負ってもらう形で、発注者(店)は指揮命令ができません。派遣なら店が指示できますが、月10日程度・週20時間未満という枠があります。センターによっては、直接雇用への職業紹介も行っています。

毎日2時間、店のスタッフと同じ場所で、店の指示のもとで働いてもらうなら、直接雇用が素直です。うちも直接雇用で考えています。センターは、人を探す窓口として使える可能性があるので、お近くのセンターに確認してみてください。

はなぱぱ
はなぱぱ

シルバー人材センターは使ったことがありません。直接雇用で考えています。

② 安全——2026年4月から、努力義務に

改正労働安全衛生法(2026年4月1日施行)で、高年齢労働者の労災防止に必要な措置をとることが、事業者の努力義務になりました。背景にある数字は重いです。60歳以上は雇用者の19.1%ですが、休業4日以上の死傷災害の30.0%を占めます。

線引きを、先に決めておきます。脚立の上段に手を伸ばす品出し、飲料のケース、凍った駐車場、濡れた床、深夜の外作業。「軽い品出し」の「軽い」は、ここで決まります。任せる仕事のリストと同じくらい、任せない仕事のリストが要ります。

③ 保険——2028年10月に、週10時間が境目

  • 労災保険:労働時間に関係なく適用されます。2時間でも同じです
  • 雇用保険:いまは週20時間以上が対象(65歳以上も対象)。2028年10月1日から、週10時間以上に広がります。2時間×週5日=10時間は、ちょうど境目です
  • 社会保険(厚生年金・健康保険):週20時間未満なら加入の対象になりません

週20時間の壁の記事で1シフト4〜5時間という答えを書きましたが、2時間の枠は、その壁のずっと手前にあります。

④ 年金——短時間なら、減らない

働くと年金が減る仕組み(在職老齢年金)の対象は、厚生年金に入って働く人です。2時間の短時間で厚生年金に入らなければ、この減額は関係ありません。2026年4月から基準額は月65万円に上がりましたが、そもそも対象外です。応募される方がいちばん気にする点なので、募集や面接で伝えられるようにしておきます(個別のケースは年金事務所へ)。

⑤ 求人——年齢ではなく、仕事を書く

60歳以上に限定した募集は、法律上の例外として認められています(上限年齢は付けられません)。でも、書くべきは年齢より仕事です。「朝5時から2時間・レジなし・店頭の掃除と品出し・時給はほかのスタッフと同じ」。この一行で、合う人が来て、合わない人は来ない。

⑥ 面接——聞くことが、変わる

「スマホは使えますか」は、この枠では要りません。代わりに聞くのは、次の4つです。

  • 2時間で足りますか(長く働きたい方には、正直に別の枠の話をする)
  • 朝5時に来られますか。通勤の手段は
  • 立ち仕事2時間と、しゃがむ動作は大丈夫ですか
  • そして、こちらから先に伝える。重い物と脚立は、お願いしません

採用・面接の実践ガイドで書いた「仲間」の見極めは変わりません。変わるのは、見極める仕事の中身だけです。

⑦ 既存スタッフの時間は、削らない

2時間の枠を作るために、いま働いている人の時間を減らす——これは、やってはいけないことです。労働時間や賃金などの労働条件を、本人の合意なく不利益に変えることは、労働契約法でできません。シフト制でも、決めていた日数や時間を店の都合で一方的に減らすことは問題になり得る、と厚労省の留意事項に書かれています。

枠は、第2章に書いたとおり、次に空いたときに2時間で募集するか、いまの人の2時間をピークへ回して作る。既存スタッフに長く働いてもらうための設計で、その人の時間を削ったら、本末転倒です。

答え合わせの約束

この記事は、設計の段階で書いています。実際に募集して、2時間の枠が回り始めたら——朝の店頭がどう変わったか、既存スタッフの様子がどう変わったか、そして人時が本当に減ったか——この記事に追記します。


よくある質問(FAQ)

Q1. 厚生労働省の新しい事業とは、何ですか?

2027年度から、ハローワークの求人情報と高齢者の活用事例をAIで分析し、「シニアでもできる仕事」を洗い出して企業に提案する事業です。シルバー人材センターの職員が企業を訪問し、業務の切り分けを提案します。例として、学校で授業は教員が担い、行事の会場設営や片付けはシニアに任せる形が挙げられています。想定分野は学校・医療機関・保育施設で、概算要求は6.9億円、センターの登録者は約68万人です(2026年9月22日時点の報道)。小売業が対象に含まれるかは分かっていません。

Q2. 働く高齢者は、どのくらいいますか?

総務省の推計(2026年9月発表)で、65歳以上の就業者は2025年に943万人。22年連続の増加で、就業者全体の13.8%です。就業率は65〜69歳で54.5%、70〜74歳で36.2%。業種別では卸売業・小売業が131万人で最多、次いで医療・福祉が122万人です。小売はすでに、シニアがいちばん多く働いている業種です。

Q3. 「0.3人分の仕事」とは何ですか?

セルフレジの記事で使った言葉で、機械が減らせるのはピーク時の一部の人時(0.3人分)だが、人は0.3人では減らせない、という話でした。今回はその続きで、レジは1人で足りるのに仕方なく2人入れている時間帯の2人目を分解すると、レジの応援はごくわずかで、残りは売場の仕事です。その売場の仕事だけを、専任の2時間に切り出すのが今回の設計です。

Q4. どの時間帯に、2時間ですか?

朝5時か6時ごろから2時間、または昼13時か14時ごろから2時間です。どちらもお客様の入りが少なく、レジの応援が発生しにくい時間帯で、しかも後回しの仕事が溜まっています。もうひとつ、深夜1時か2時ごろから2時間、夜勤の休憩の交代要員として入ってもらう使い方もあります。休憩は仕事から離れて自由に使える時間でなければならず(労働基準法)、1人の夜勤でそれを確保するには、休憩のあいだ店に立つ人が要るからです。この枠だけは最低限のレジを覚えてもらう必要があり、深夜割増もつくので、本人の希望があれば、朝か昼の枠で慣れてからと考えています。

Q5. なぜレジを教えないのですか?

コンビニは覚えることが30種類あり、ご年配の応募者の方は機械操作でつまずくことが多いためです。全員が同じ入口(レジ)を通る前提をやめて、レジを使わない仕事を店の側で作れば、機械の壁はその人の前から消えます。ただし、この枠は「少し働きたい」方に合う設計で、しっかり稼ぎたい方には短すぎます。過去にレジなしの短時間をおすすめしても、長く働きたいというご要望で結局レジを覚えてもらった経験があるので、募集の段階で時間とレジがないことをはっきり書きます。

Q6. 任せる仕事は、具体的に何ですか?

店頭の掃き掃除、駐車場のゴミ、ゴミ箱の回収と袋替え、トイレ、什器やケースの拭き上げ、フェイスアップ、菓子や日用品の軽い品出しです。共通点は「誰も待っていない」こと。レジや納品のような締め切りがないため後回しになりますが、どうでもいい仕事ではなく、店の顔を作る仕事です。逆に、脚立の上段、飲料のケース、凍った駐車場、深夜の外作業は任せません。

Q7. 時給は下げますか?

下げません。ほかのスタッフと同じ時給から始めます。既存スタッフが避けがちな仕事だからこそ、同じ時給の価値があると考えています。人件費で削れるのは時給ではなく、人時(モデルでは1枠あたり8人時→6人時)と、既存スタッフが長く働いてくれることで浮く採用・教育のコストです。また、2時間の枠を作るために既存スタッフの時間を削ることもしません。本人の合意なく労働時間を減らすことは労働契約法上できず、定着の面でも本末転倒だからです。枠は、次に空いたときに2時間で募集するか、いまの人の2時間をピークへ回して作ります。

Q8. シルバー人材センターは使えますか?

使えますが、契約の形に注意が要ります。請負は店が指揮命令できず、派遣は月10日程度・週20時間未満の枠があります。センターによっては直接雇用への職業紹介も行っています。毎日2時間、店の指示のもとで働いてもらうなら直接雇用が素直で、私の店も直接雇用で考えています。センターは人を探す窓口として相談してみる価値があります。

Q9. 安全や保険で、気をつけることは?

改正労働安全衛生法(2026年4月1日施行)で、高年齢労働者の労災防止措置が事業者の努力義務になりました。60歳以上は雇用者の19.1%ですが、休業4日以上の死傷災害の30.0%を占めます。任せない仕事の線引きを先に決めてください。保険は、労災保険が時間に関係なく適用され、雇用保険は2028年10月1日から週10時間以上に広がります(2時間×週5日がちょうど境目)。社会保険は週20時間未満なら対象外で、在職老齢年金による年金の減額も、厚生年金に入らなければ関係ありません。個別の判断は専門家にご確認ください。

Q10. この記事の情報の出典は?

厚労省の事業は2026年9月22日の日本経済新聞の報道、高齢者の就業統計は総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」(2026年9月)、シルバー人材センターの契約形態は厚生労働省の適正就業ガイドライン、改正労働安全衛生法は厚生労働省の公表資料、雇用保険の適用拡大は改正雇用保険法(2024年成立)、在職老齢年金は政府広報、募集時の年齢制限の例外は厚生労働省の資料に基づきます。店の設計は私の店でこれから試す段階のもので、知り合いの店と他業種の例は伝聞です。


まとめ:人の単位を小さくすれば、0.3人分の仕事は渡せる

厚労省が2027年度から、AIで「シニアでもできる仕事」を業務単位で切り出して企業に提案する事業を始めます。働く高齢者は943万人、最多の業種は小売業です。うちの店には、レジは1人で足りるのに仕方なく2人入れている時間帯があります。2人目の仕事を分解すると、レジの応援はごくわずかで、残りは掃除・ゴミの回収・フェイスアップ・軽い品出し。誰も待っていないから後回しになる仕事です。それを、朝5時か昼13時からの2時間、レジを教えずにシニアの方に任せる。8人時が6人時になり(1枠あたり)、後回しの仕事が「残る」から「終わる」に変わり、既存スタッフはレジに集中できる。時給は同じです。避けられがちな仕事だからこそ、同じ時給の価値がある。この枠は「少し働きたい」方に合う設計で、しっかり稼ぎたい方には短すぎるので、募集には「何をしないか」まで書きます。深夜の休憩枠は、休憩を自由に使える時間にするための交代要員で、慣れてから、希望があれば。2時間は、いまの人の時間を削らずに、次の募集か、ピークへの振り替えで作ります。始める前の確認は、契約(直接雇用が基本)、安全(2026年4月から努力義務・任せない仕事のリスト)、保険(2028年10月から雇用保険は週10時間以上)、年金(短時間なら減らない)、求人(年齢ではなく仕事を書く)、そして既存の時間を削らないこと。知り合いの店は、早朝2時間の専任で、日販が高いのにいつもきれいです。業務分解の軸は、難しさではなく、締め切りの有無。人の単位を小さくすれば、機械に渡せなかった0.3人分の仕事は、人に渡せます。

この記事の要点

  1. 厚労省が2027年度からAIで「シニアでもできる仕事」を業務単位で切り出し、企業に提案する事業を開始(報道ベース・小売が対象かは未確定)
  2. 働く高齢者943万人・22年連続増・最多業種は卸売業・小売業131万人(総務省)
  3. 「0.3人のシフトは組めない」の続き=人の単位を小さくする。4時間の2人目を、2時間の専任に
  4. レジは1人で足りるのに2人入れている時間帯(早朝・昼ピーク後)=レジ応援が少なく、後回しの仕事が溜まる時間帯
  5. モデル:1枠あたり8人時→6人時。朝昼2枠なら月約120人時。しかも売場の仕事は「残る」から「終わる」へ
  6. レジは教えない=機械の壁を店の側が外す。ただし「少し働きたい」人向け。募集には「何をしないか」を書く
  7. 深夜の休憩枠は、休憩を「自由に使える時間」にするための交代要員=最低限のレジ+割増。希望があれば、朝か昼で慣れてから
  8. 後回しになる仕事の共通点は「誰も待っていない」=業務分解の軸は難しさでなく締め切りの有無
  9. 時給は同じ。既存スタッフの時間も削らない(合意のない不利益変更は不可)。2時間は次の募集で作るか、いまの人の2時間をピークへ回す
  10. 確認点=契約(直接雇用)・安全(努力義務・任せない仕事)・保険(2028年10月に週10時間)・年金(短時間なら減らない)・求人(仕事を書く)・既存の時間は削らない

次のアクション

  • [ ] 自店で「レジは1人で足りるのに2人入れている」時間帯を書き出す
  • [ ] その時間帯の2人目の仕事を、レジの応援と売場の仕事に分解し、2時間の枠を「次の募集で作る」か「いまの人の2時間をピークへ回す」かを決める
  • [ ] 残りがちな仕事(店頭・駐車場・ゴミ箱・トイレ・什器・フェイスアップ・軽い品出し)をリストにする
  • [ ] 任せない仕事(脚立・飲料ケース・凍結・濡れた床・深夜の外作業)を先に決める
  • [ ] 募集文を「朝5時から2時間・レジなし・仕事の中身・時給は同じ」の形で書いてみる
  • [ ] 面接で聞く4つ(2時間で足りるか・5時に来られるか・立ち仕事としゃがむ動作・重い物は頼まないと伝える)を用意する
  • [ ] 10月の面談に「いちばん残りがちな仕事は何か」を1項目足す

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参考|公式情報


レジには、待っている人がいる。納品には、決まった時間がある。店の前の掃き掃除には、誰も待っていない。だから、いつも最後になる。

朝5時。誰にも急かされずに、店の前を掃く人がいる。2時間だけ。その2時間が、あとの22時間の、店の顔を決める。

0.3人分の仕事は、機械には渡せなかった。でも、2時間の人には渡せる。同じ時給で、名前のある仕事として。

国が「業務の単位で切り出す」と言い始めた。店は、朝5時の2時間から始めます。

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経営者
はじめまして、はなぱぱです。 コンビニ経営に携わって13年。 店舗での経験や経営者としての苦労、従業員教育の工夫などをまとめています。 経営者や店舗責任者はもちろん、従業員の方にもわかりやすく役立つ情報を発信していきます。
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