賛成69%と46%|若い客は値段で動き、年配の客は「人」で動く——食品消費税1%の春、目的買いの人を「通う客」に変える宿題【現役オーナー】
食料品の消費税を1%に下げる法案に、賛成53%、反対41%。日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査(2026年9月18〜20日)の結果です。7月の調査では賛成48%でしたから、半数を超えてきました。
でも、レジに立つ人間として目が止まったのは、全体の数字ではありません。年代の差です。39歳以下は賛成69%。60歳以上は46%。同じ法案に、23ポイントの開きがあります。
これを読んでいて、思ったことがあります。年配のお客様は、これまでの習慣をあまり変えません。若いお客様は、その時いちばんコスパとタイパの良いものへ、柔軟に乗り換えていきます。だとすれば、2027年4月に税率が変わったあと、店の客層は一度変わって終わりではなく、日々変わっていくのではないか。
このシリーズでは、前編でレジとプライスカードの実務を、後編で外食という競合を書きました。今回は3本目、お客様の話です。誰が先に動いて、誰が動かないのか。
結論を先に書きます。うちの店で見ているかぎり、若いお客様は値段で動き、年配のお客様は「人」で動きます。そして、税率で来てくれた人は、税率が戻れば去っていきます。だから4月までの宿題は、値札の準備だけではありません。目的買いで来た人が、「通う客」に昇格できる店にしておくこと。私はそれを、入口を入ってすぐの棚から考え始めています。
- ニュース——賛成53%。ただし、年代で23ポイント違う
- 若いお客様は、値段で動く——そして、また動く
- 年配のお客様は、「人」で動く
- いちばん動くのは、オフィス立地——でも、測る物差しがない
- 4月までの宿題——目的買いの人を、「通う客」に昇格させる
- 2029年4月、税率が戻る日——税率で来た客は、税率で去る
※世論調査と制度の内容は2026年9月21日時点の報道に基づきます。法案は10月5日召集予定の臨時国会に提出される見込みで、成立して初めて確定します。お客様の動きについての記述は、私の店(3店舗)で見える範囲の傾向であり、年代で一律に決まるものではありません。制度そのものへの賛否は、この記事では扱いません。
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第1章:ニュース——賛成53%。ただし、年代で23ポイント違う
数字の整理
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査 | 日本経済新聞社・テレビ東京(2026年9月18〜20日) |
| 1%法案への賛否 | 賛成53%・反対41% |
| 7月の調査(1%案) | 賛成48%・反対44% |
| 39歳以下 | 賛成69% |
| 40〜50歳代 | 賛成57% |
| 60歳以上 | 賛成46% |
| これからの日程 | 10月5日召集予定の臨時国会に法案提出。成立すれば2027年4月から2年間 |
世論調査は「態度」であって、「行動」ではない
最初に断っておきます。この調査が聞いているのは、法案に賛成か反対かです。4月になったら買い物の仕方を変えるかどうか、ではありません。年代によって差がつく理由も、調査は聞いていません。
ですから、ここから先は調査の解説ではなく、レジから見た私の見立てです。制度の良し悪しも論じません。前編に書いたとおり、制度の評価は投票所で、準備は店で。店の人間にとって大事なのは、決まったときに誰がどう動くか、のほうです。
コンビニの客は、もう「若者中心」ではない
もうひとつ、前提を確認しておきます。「コンビニは若者の店」という印象は、数字の上ではもう過去のものです。大手チェーン(セブン-イレブン)が公表している来店客調査では、29歳以下の割合は2004年度の42%から、2023年度には22%へとほぼ半減。逆に、50歳以上は22%から37.7%へ増えました(報道による)。いまや、来店されるお客様の4割近くが50歳以上です。
一方で、1人あたりの使い方をみると、若い世代はいまもよく来てくださいます。2026年2月の民間調査(クロス・マーケティング、全国20〜69歳・1,100人)では、コンビニを週1回以上使う人は全体で45.9%。男性と20代では5割を超え、ほぼ毎日という人も多い。
つまり、こういうことです。店の土台を支えているのは、年配のお客様。そして、数としては減ってきたけれど、来るとなれば頻繁に来るのが、若いお客様。その若い世代が、今回の減税をいちばん歓迎している。コンビニから少しずつ離れていた人たちが、戻ってくるきっかけになるかもしれない——この調査を、私はそう読みました。
問題は、その戻り方です。
第2章:若いお客様は、値段で動く——そして、また動く
先に来て、終わるとすっと引く
クーポン、アプリの特典、キャンペーン、値引きセール。店で何かを仕掛けたとき、先に反応するのは、いつも若いお客様です。情報が早い。計算も早い。得だと分かれば、その日のうちに来てくださいます。
そして、終わると、すっと引いていきます。これも毎回同じです。悪い意味ではありません。その時いちばん得で、いちばん手間のかからないものを選ぶ。コスパとタイパで決める買い物とは、そういうものです。
2019年の先例——2%で、支払い方が変わった
税率が変わるとき、若いお客様がどう動くか。実は、先例があります。
2019年10月、消費税が10%に上がったとき、国はキャッシュレス・ポイント還元事業を始めました(2020年6月までの9か月間)。フランチャイズのコンビニは2%還元で、大手各社はその場で2%を値引きする形を採りました。1,000円の買い物で20円。わずかな差です。
それでも、若いお客様の支払いは、この時期に一気に現金から切り替わったというのが、レジに立っていた実感です。経済産業省の数字でも、キャッシュレス決済の比率は2019年の26.8%から、2025年には46.3%まで伸びています(同じ物差しで比べた場合。2025年分から使われている新しい国内指標では58.0%)。
2%で支払い方を変えた人たちです。9ポイントの差を、見逃すとは思えません。
お金の計算に強い若い人が、増えている
もうひとつ、レジで感じている変化があります。投資に熱心な若い方が増えました。金融庁によると、少額投資非課税制度(NISA)の口座数は、2019年末の1,364万から、2025年末には2,821万へ。6年で約2倍です(年代別の内訳までは、ここでは追いません)。
お金の損得を日頃から計算している人は、税率の差にも敏感です。1%と10%の違いを、自分の財布の問題としてすぐに理解して、すぐに動く。世論調査で若い世代の賛成が高いのも、この「自分ごと」の感覚と無関係ではないと思っています。

クーポン、アプリ、キャンペーン、値引きセール——若い方が先に反応して、終わるとすっと引いていく。うちの店でも、まさにこのまんまです。最近は投資に熱心な若い方が増えたりして、マネーリテラシーの向上を強く感じます。こういう方たちは、税率の差にも敏感に動いてくる気がしますね。
いまの14円が、63円になる
では、4月に何が起きるのか。モデルで見ます。税抜700円の昼食を、店内で食べる場合と、持ち帰る場合です。
| 店内で食べる(10%) | 持ち帰る | 差 | |
|---|---|---|---|
| いま(持ち帰り8%) | 770円 | 756円 | 14円 |
| 2027年4月〜(持ち帰り1%) | 770円 | 707円 | 63円 |
いまの14円が、63円になる。月に20回なら約1,260円、1年で約1万5,000円の差です(税抜価格が同じで、店が本体価格を変えない場合のモデルです。実際には外食側が価格やメニューを変えてくる可能性があります)。
14円なら気にしなかった人も、63円なら気にします。そして、この差を最初に使いこなすのは、計算の早い若いお客様でしょう。昼を外食から持ち帰りへ。その受け皿のひとつが、コンビニです。
動く客は、一度では終わらない
ここからが、冒頭に書いた「日々変わっていく」の中身です。
値段で動く人は、一度動いて落ち着くわけではありません。相手が手を打つたびに、計算し直します。そして相手は、もう動き始めています。外食チェーンは持ち帰りを強化しています。料理宅配は店頭と同じ価格を打ち出しました。コンビニ業界でも、朝のセット割で客数を取りに行く動きが始まっています。
今週は外食の持ち帰りが得。来週は宅配のクーポンが得。その次はコンビニのセールが得。若いお客様は、そのたびに店を替えます。だから、4月1日に客層が入れ替わって、そこで落ち着くのではありません。4月1日から、入れ替わりが始まるのだと思っています。
第3章:年配のお客様は、「人」で動く
物でも、値段でもなく
では、年配のお客様はどうか。うちの店で見ているかぎり、年配の方は、物や値段で動くというより、人で動いている印象です。
いつもの人がいるから。会話ができるから。安心して買い物に行けるから。店を選ぶ理由として、こちらのほうが、値段より先に来ている気がします。
思い当たる場面は、いくつもあります。セルフレジを入れても、年配のお客様は私たちを呼んでくださいます。レジで時間がかかって「ごめんね」とおっしゃる方に、混む時間帯をお伝えすると、そこから関係が始まります。年配の方にとって、店は商品を買う場所であると同時に、知っている人がいる場所なのだと思います。

うちの場合、年配の方は、物や値段で動くというより、人で動く印象です。いつもの人がいるから、会話ができるから、安心して買い物に行けるから。そっちが優先な気がします。
キャッシュレスが、教えてくれること
第2章で、若いお客様は2%の還元で支払い方を変えた、と書きました。年配のお客様は、どうだったか。
年配の方のキャッシュレスが進み始めたのは、ここ最近です。それも、得だから始めたというより、現金決済ができない場面に遭遇して、必要に迫られてようやく使い始めた、という方が多い印象です。
同じキャッシュレスでも、きっかけがまるで違います。若い方は「得」で動いた。年配の方は「必要」で動いた。得では、動かなかったのです。

若いお客様のキャッシュレス化は、一気に進んだ気がします。年配のお客様は、ここ最近ようやく進み始めたくらいの印象ですね。現金決済ができない場面などに遭遇して、やっと使い始めた感じがします。
「高い」と思いながら、来てくださっている
さきほどの民間調査には、もうひとつ興味深い数字があります。コンビニで買い物をして「思ったより高い」と感じたことのある人は、全体で76.2%。それが男性50〜60代と女性40〜60代では、8割を超えるのです。若い世代より、中高年のほうが「高い」と感じている。
それでも、年配のお客様は来てくださいます。高いと感じているのに来る。ということは、値段以外の理由で来ているということです。近いから。開いているから。そして、知っている人がいるから。
だとすれば、60歳以上の賛成が46%にとどまるのも、レジからは不思議に見えません。値段で店を選んでいない人にとって、7ポイントの減税は、買い物の仕方を変える理由になりにくい。もちろん、これは私の見立てです。調査は理由を聞いていませんし、財源や社会保障への心配、2年後に税率が戻ることへの不安など、別の理由も十分に考えられます。
決めつけないために
ここまでを、表にまとめます。
| 若いお客様 | 年配のお客様 | |
|---|---|---|
| 動くきっかけ | 値段と手間(コスパ・タイパ) | 人と安心 |
| 動く速さ | 早い。終わるとすっと引く | ゆっくり。必要に迫られてから |
| キャッシュレス | 還元をきっかけに、一気に | ここ最近ようやく。現金が使えない場面に遭遇して |
| 4月の税率変更 | 先に動く。その後も動き続ける | 買い物の仕方は、ほぼ変わらない |
| 店がやること | 通う理由を用意する | いつもの人、いつもの場所を守る |
念のために書いておくと、これはうちの店で見える傾向であって、年代で決まる話ではありません。会話を楽しみに来てくださる若い方もいますし、値段をしっかり見ている年配の方もいます。ただ、傾向として知っておくと、4月に何を準備するかが変わってきます。
第4章:いちばん動くのは、オフィス立地——でも、測る物差しがない
昼の選択肢が多い場所ほど、計算が働く
うちは3店舗ありますが、4月以降、いちばん客層が動くのはオフィス立地の店だろうと見ています。
理由は3つあります。昼の選択肢が多い(外食、弁当店、宅配、コンビニ)。働く若い人が多い。そして、昼食は毎日のことなので、1回63円の差が積み上がる。選択肢が多くて、回数が多い場所ほど、計算が働きます。
ただし、流れてくる先はコンビニだけではありません。出前、宅配、外食の持ち帰りにも分散します。オフィス立地の店にとって4月は、追い風であると同時に、いちばん激しい取り合いの始まりでもあります。
住宅立地は静か。でも、何もしなくていいわけではない
逆に、年配のお客様が多い住宅立地の店は、比較的静かだと思います。人で動くお客様は、税率では動かないからです。
ただし、静かだから何もしなくていい、ではありません。こちらの店でやるべきことは、変えないことです。4月に向けて売場を動かすとき、年配の常連さんの「いつもの場所」まで動かしてしまうと、値段では動かなかった人が、不便で離れていきます。日用品の棚を削って失敗した話も、尖らせる時は足元に注意する、という話も、同じ教訓でした。
レジに、年代の集計はない
ここで、正直に書いておくことがあります。「客層が変わった」を、うちの店は数字で測れません。レジに、年代の集計がないからです。
ポイントカードやアプリの会員情報なら、年代は分かります。でも、全員が持っているわけではありません。持っている人だけを見ても、店全体の動きは分からない。結局、頼りになるのは、スタッフの感覚と、売れ筋の変化です。

やはりオフィス立地のほうが効きやすいのかなと思います。出前、宅配、テイクアウトにも分散しそうですけどね。レジでの年代集計はないので、客層の変化は感覚値になりそうです。あとは売れ筋の変化などから。ポイントカードの登録状況で年代は判別できますが、全員が持っているわけじゃないので、ある程度しか役に立たないんです。
測れないものを、どう見るか——定点を5つ
測れないなら、見る場所を決めておきます。4月以降、私が見ようと思っている定点は5つです。
- 昼(11〜13時)の客数と、弁当・麺類・サラダの販売数:外食から流れてくる人は、まずここに出る
- 夕方から夜の、惣菜と冷凍食品:夕食を外食から切り替える動きは、ここに出る
- 買上点数:目的買いの人は、1〜2点で帰る。客数が増えて点数が下がるなら、目的買いが増えている
- キャンペーンが終わった翌週の落ち方:落ち方が大きくなるほど、値段で動く人の割合が増えている
- 見慣れない顔が、2回目、3回目と来ているか:数字には出ない。週に1度、スタッフに聞く
酒税の記事にも書きましたが、制度が変わった直後の1か月では、何も分かりません。しかも今回は、お客様が動き続けます。一度見て決めるのではなく、見続けて、決め直す。それが4月以降の基本の構えになります。
第5章:4月までの宿題——目的買いの人を、「通う客」に昇格させる
税率は、国がくれた集客商品
値引きの目玉商品を仕掛けると、客数は増えます。でも、目玉だけを買って帰る人が多く、当日の損得だけで見ればペイしません。それでもやるのは、その日に来た人が、明日以降も来てくれるかもしれないからです。集客商品は、当日ではなく明日で回収するものです。
今回の減税は、これに似ています。いわば、国がくれた集客商品です。来店のきっかけにはなります。でも、きっかけだけでは、通う理由になりません。限定商品を目当てに来た人が、お目当てだけを買って、その後に続かなかったのと同じことが、もっと大きな規模で起きるはずです。
だから、問いはこうなります。目的買いで来た人を、どうやって「通う客」に昇格させるか。これが、4月までの宿題です。
目的買いの人は、脇目も振らない
やっかいなのは、目的買いの人は、店の中をほとんど見ないことです。朝のお客様が脇目も振らずに買っていくのと同じで、目的の棚へまっすぐ行って、まっすぐレジへ来る。どれだけ売場を作り込んでも、視界に入らなければ、ないのと同じです。
では、その人の視界に、必ず入る場所はどこか。入口を入ってすぐの棚です。どんなに急いでいる人も、ここだけは通ります。
入口を入ってすぐの棚から、考える
ですから私は、4月に向けた店の設計を、この場所から考え始めています。まだ検討の途中ですが、見ている観点は4つです。
- 「もう1品」になるか:昼に来る人が増えるなら、弁当の隣にもう1品。できれば1%の対象になる食品で、買う理由を重ねる
- 来るたびに変わるか:目的の物だけ買うなら、ネットでいい。店に来る意味は、探していなかった物に出会うこと。入口の棚が毎回同じなら、2回目は見てもらえない
- 値段以外の話ができるか:ここを値引き品の置き場にすると、値段で来た人を、値段でつなぎとめるだけになる。それでは税率が戻った日に、一緒に去っていく
- 常連さんの邪魔をしないか:入口は、年配のお客様も通る場所。通路を狭くしない、いつもの動線をふさがない

目的買いに来た人が、通う店に昇格できるような店舗設計を、どのようにしていくか。それが4月までの課題になりますね。まずは、入口を入ってすぐの棚の展開商品の検討から始めます。
若い人の「通う理由」、年配の人の「通う理由」
若いお客様を「通う客」にするのは、会話ではないかもしれません。声をかけられたくない方もいらっしゃいます。若い方に効くのは、たぶん、速いこと、確実にあること、そして来るたびに何かあることです。安さでは戻らない客数を、近さという「時間」で取り戻すと書いたのも、同じ考えでした。タイパで店を選ぶ人には、時間で応える。
年配のお客様の「通う理由」は、人と安心でした。
並べてみると、気づくことがあります。どちらも、値段ではないのです。値段は来るきっかけを作りますが、通う理由を作るのは、いつも値段以外のものです。常連のお客様が自然に定着する店の共通点も、突き詰めれば同じところに行き着きます。
変更は、1つずつ
最後に、進め方です。4月に向けてやりたいことは、いくつも浮かびます。でも、店の改善は1つずつしかできません。プライスカードの貼り替えだけでも、前編に書いたとおり大仕事です。だから入口の棚の検討は、いまから始めます。4月が来てからでは、遅いのです。
第6章:2029年4月、税率が戻る日——税率で来た客は、税率で去る
戻しの日は、店頭では一斉値上げに見える
この減税は、2年間の限定です。前編の第5章に書いたとおり、2029年4月に税率が8%へ戻る日、店頭では食品全部が一斉に値上がりしたように見えます。
世論調査では、この「2年後に戻す」方針への反対が、賛成を上回る結果がいくつも出ています(時事通信の9月の調査では、反対56.9%・賛成23.9%と報じられました)。本当に戻るのか、延長されるのか。それは政治が決めることで、店には分かりません。店にできるのは、戻る前提で準備しておくことだけです。
動く客は、また動く
税率が戻れば、第2章の表は逆向きに動きます。63円だった差は、14円に戻る。持ち帰りの得は、ほとんど消えます。
そのとき、値段で来た人は、値段で去ります。税率で来た客は、税率で去る。これは、薄情でも何でもありません。キャンペーンが終われば引いていく——若いお客様がこれまで何度も見せてくれた動きが、もう一度起きるだけです。
2年間の仕事
だから、この2年間の仕事は、はっきりしています。値段で来てくれた人に、値段以外の理由をひとつ渡しておくこと。2029年4月に店に残るのは、その2年のあいだに「通う客」になった人だけです。
そのお手本は、実は、毎日店に来ています。年配の常連のお客様です。値段では動かず、「高い」と思いながらも、人と安心で店を選び続けてくださっている。人が最後に何で店を選ぶのかを、年配のお客様は、ずっと前から見せてくれています。いま値段で動いている若いお客様も、いつか同じ理由で店を選ぶようになる。私はそう思っています。
答え合わせの約束
この記事に書いたことは、まだ見立てです。2027年4月以降、第4章の5つの定点——昼の客数、夕方の惣菜、買上点数、キャンペーン後の落ち方、見慣れない顔の2回目——を見て、この見立てが当たっていたかどうか、この記事に追記します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 食品消費税1%の法案について、世論調査の結果は?
日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査(2026年9月18〜20日)では、食料品の消費税を1%に下げる法案に賛成53%、反対41%でした。7月の調査では1%案への賛成は48%(反対44%)で、半数を超えました。年代別では39歳以下が賛成69%、40〜50歳代が57%、60歳以上が46%と、若いほど賛成が多くなっています。法案は10月5日召集予定の臨時国会に提出される見込みで、成立して初めて確定します(2026年9月21日時点の報道)。
Q2. なぜ若い世代ほど賛成が多いのですか?
調査は理由を聞いていないため、確かなことは言えません。レジから見た私の見立てでは、若いお客様は値段と手間(コスパ・タイパ)で買い物を決める傾向が強く、税率の差を自分の財布の問題としてすぐに理解するからだと考えています。2019年のポイント還元事業では、2%の還元をきっかけに若いお客様のキャッシュレス化が一気に進みました。投資に熱心な若い方が増えるなど、お金の計算に強い人が増えている実感もあります。
Q3. 食品の消費税が1%になると、コンビニの客層は変わりますか?
変わると見ています。ただし、一度変わって落ち着くのではなく、日々入れ替わっていくと考えています。値段で動くお客様は、外食の持ち帰り強化、宅配の値下げ、他店のセールなど、相手が手を打つたびに計算し直して店を替えるからです。2027年4月1日は客層が入れ替わる日ではなく、入れ替わりが始まる日だと思っています。
Q4. 店内飲食と持ち帰りの差は、いくらになりますか?
税抜700円の昼食で計算すると、いまは店内770円(10%)と持ち帰り756円(8%)で14円の差です。2027年4月以降は持ち帰りが707円(1%)になり、差は63円に広がります。月20回なら約1,260円、年間で約1万5,000円です。税抜価格が同じで、店が本体価格を変えない場合のモデルであり、実際には外食側が価格やメニューを変える可能性があります。
Q5. 年配のお客様は、何で店を選んでいますか?
うちの店で見ているかぎり、物や値段よりも「人」です。いつもの人がいるから、会話ができるから、安心して買い物に行けるから。キャッシュレスも、得だからではなく、現金決済ができない場面に遭遇して必要に迫られてから使い始めた方が多い印象です。民間調査でも、コンビニを「思ったより高い」と感じる人は中高年のほうが多く、それでも来てくださるのは値段以外の理由があるからだと考えています。
Q6. コンビニの客層は、若い人が中心ではないのですか?
数字の上では、もう違います。大手チェーンが公表している来店客調査では、29歳以下の割合は2004年度の42%から2023年度には22%へとほぼ半減し、50歳以上は22%から37.7%へ増えました(報道による)。一方で、1人あたりの利用頻度は若い世代のほうが高く、2026年の民間調査では20代の5割超が週1回以上利用しています。土台を支えるのは年配のお客様、頻繁に来るのは若いお客様、という二層で見るのが実態に近いと思います。
Q7. いちばん影響を受けるのは、どんな立地の店ですか?
オフィス立地だと見ています。昼の選択肢が多く、働く若い人が多く、昼食は毎日のことなので1回の差が積み上がるからです。ただし流れる先はコンビニだけでなく、出前、宅配、外食の持ち帰りにも分散します。年配のお客様が多い住宅立地は比較的静かだと思いますが、その店でやるべきことは、常連さんの「いつもの場所」を変えないことです。
Q8. 客層の変化は、どうやって測りますか?
うちの店のレジには年代の集計がなく、正確には測れません。ポイントカードやアプリの会員情報で年代は分かりますが、持っている人だけのデータなので限定的です。そこで定点を5つ決めています。①昼の客数と弁当・麺類・サラダの販売数②夕方から夜の惣菜と冷凍食品③買上点数④キャンペーン終了の翌週の落ち方⑤見慣れない顔が2回目、3回目と来ているか(週に1度スタッフに聞く)。1か月では判断せず、見続けて決め直します。
Q9. 目的買いのお客様を常連にするには、何から始めればいいですか?
入口を入ってすぐの棚からです。目的買いの人は目的の棚へまっすぐ行ってまっすぐレジへ来るので、必ず視界に入るのは入口すぐの場所だけだからです。観点は4つ。①弁当などの「もう1品」になるか②来るたびに変わるか③値段以外の話ができるか(値引き品の置き場にしない)④年配の常連さんの動線を邪魔しないか。値段は来るきっかけを作りますが、通う理由を作るのは値段以外のものです。
Q10. この記事の情報の出典は?
世論調査は日本経済新聞社・テレビ東京(2026年9月18〜20日)、2年後に税率を戻す方針への賛否は時事通信の9月の調査の報道に基づきます。キャッシュレス決済比率とポイント還元事業は経済産業省、少額投資非課税制度(NISA)の口座数は金融庁、来店客の年齢構成は大手チェーンの来店客調査(報道による)、コンビニの利用頻度と価格感覚はクロス・マーケティングの2026年2月の調査です。お客様の動きについての記述は、私の店で見える範囲の傾向です。
まとめ:値段は来るきっかけを作る。通う理由は、値段以外が作る
食品消費税1%の法案は賛成53%・反対41%。でも年代で見ると、39歳以下は69%、60歳以上は46%と、23ポイントの差があります。うちの店で見ているかぎり、若いお客様は値段で動き、年配のお客様は「人」で動きます。若い方はクーポンにもキャンペーンにも先に反応して、終わるとすっと引く。2019年のポイント還元では、2%の差で支払い方を一気に変えました。年配の方は、いつもの人がいるから、会話ができるから、安心できるから来てくださる。キャッシュレスも、得ではなく必要で動きました。2027年4月、店内飲食と持ち帰りの差は14円から63円へ(税抜700円のモデル)。先に動くのは若いお客様で、しかも相手が手を打つたびに計算し直すので、客層は一度変わって終わりではなく、日々入れ替わっていきます。いちばん動くのはオフィス立地。ただしレジに年代の集計はなく、定点を決めて見続けるしかありません。そして税率で来た客は、税率で去る。2029年4月に店に残るのは、2年のあいだに「通う客」になった人だけです。だから4月までの宿題は、目的買いの人が通う客に昇格できる店にしておくこと——私は、入口を入ってすぐの棚から考え始めています。
この記事の要点
- 食品消費税1%法案は賛成53%・反対41%。39歳以下69%・60歳以上46%と、年代で23ポイントの差(報道ベース)
- 世論調査は「態度」であって「行動」ではない。年代差の理由も聞いていない=ここから先はレジからの見立て
- コンビニの来店客は高齢化している(29歳以下は約20年で42%から22%へ・50歳以上は37.7%へ)。土台は年配、頻度は若い世代
- 若いお客様は値段で動く=キャンペーンに先に反応し、終わるとすっと引く。2019年は2%の還元で支払い方を変えた
- 年配のお客様は「人」で動く=いつもの人、会話、安心。キャッシュレスも得ではなく必要で動いた
- 店内と持ち帰りの差は14円から63円へ(税抜700円のモデル・月20回で約1,260円)
- 動く客は一度では終わらない=4月1日は入れ替わりの日ではなく、入れ替わりが始まる日
- いちばん動くのはオフィス立地。レジに年代集計はない=定点5つを見続けて、決め直す
- 宿題は、目的買いの人を「通う客」に昇格させること=入口を入ってすぐの棚から考える
- 税率で来た客は、税率で去る。値段は来るきっかけを作り、通う理由は値段以外が作る
次のアクション
- [ ] 自店の客層を「値段で動く人」と「人で動く人」の二層で見直してみる
- [ ] 直近のキャンペーンで、終了の翌週に客数と販売数がどれだけ落ちたかを確認する
- [ ] 入口を入ってすぐの棚に、いま何を置いているかを書き出す(値引き品の置き場になっていないか)
- [ ] 入口の棚の候補を、「もう1品」「来るたびに変わる」「値段以外の話ができる」の3点で考える
- [ ] 年配の常連さんの「いつもの場所」と動線を確認し、4月に向けた変更で動かさないと決める
- [ ] 4月以降に見る定点5つ(昼の客数・夕方の惣菜・買上点数・キャンペーン後の落ち方・見慣れない顔の2回目)を店長と共有する
- [ ] 週に1度、スタッフに「最近、見慣れないお客様は増えたか。また来ているか」を聞く習慣を作る
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参考|公式情報
- 経済産業省|2025年のキャッシュレス決済比率を算出しました:キャッシュレス決済比率(新しい国内指標で58.0%)と、指標の見直しの一次情報
- 金融庁|NISA口座の利用状況に関する調査結果(令和7年12月末時点):NISA口座数の一次情報
- セブン&アイ・ホールディングス|国内コンビニエンスストア事業(コーポレートアウトライン):来店客の年齢別構成比と来店頻度の公表データ
- クロス・マーケティング|コンビニエンスストアに関する調査(2026年):利用頻度と、「思ったより高い」と感じる人の年代差
- 国税庁|消費税の軽減税率制度:店内飲食と持ち帰りで税率が分かれる制度の公式ページ
税率が変わる日は、カレンダーに書いてあります。お客様が変わる日は、どこにも書いてありません。
4月1日、値札の数字が少し小さくなって、見慣れない顔が少し増える。その人たちは、計算して来てくれた人です。計算が変われば、また別の店へ行きます。それを薄情だとは思いません。賢い買い物とは、そういうものです。
だから店の仕事は、計算の外側に、理由をひとつ置いておくことです。入口を入ってすぐの棚に、今日の発見を。レジには、いつもの人を。
値段は、国と本部が決めます。通う理由は、店が作ります。

