ステルス値上げ、9割が実感。その不満はレジに来る|値上げのほうが圧倒的に売りやすい——見た目そのままで中身だけ減った商品は、発注を絞る【現役オーナー】
「値段据え置きなんですが、量が少し減っちゃいました」
いま、私の店では、量が減った商品について、こちらから先にこう声をかけることがあります。返ってくるのは、「仕方ないよねー」です。
でも、物価が上がり始めたころは、違いました。「小さくなった?」「量が減った?」。そう言われることがいちばん多かったのは、あのころです。ストレスを店にぶつけるような言い方も、多かった。
値段はそのままで、中身が減る。いわゆるステルス値上げを、9割の人が実感しているという調査があります。気づくのは「店頭で手に持ったとき」がいちばん多い。気づく場所は、店の棚の前です。
売る側として、はっきり言えることがあります。値上げのほうが、圧倒的に売りやすい。 値段が上がった商品は、買うときに判断できます。でも、容器もパッケージもそのままで中身だけ減った商品は、買うときには分かりません。分かるのは、買ったあと。そして、その不満は、メーカーより店に来ることのほうが多いのではないか、と感じています。
だから私の店では、見た目そのままで中身だけ減った商品は、発注を抑えたり、扱うのをやめたりします。それでも不満を言われたら、腑に落ちなくても謝る。ステルス値上げを、レジの内側から書きます。
- ニュース——ステルス値上げは9割が実感、気づくのは「店頭」
- 「小さくなった?」から「仕方ないよねー」へ
- 値上げのほうが、圧倒的に売りやすい
- 気づいたお客様は、どう動くか——替える、買わない、来なくなる
- その不満は、メーカーより店に来る
- 見た目そのままで中身だけ減った商品は、発注を絞る
- 先に伝える。それでも来たら、謝る
※調査はマクロミルの「ステルス値上げ」の調査(2026年9月17日公開)とその報道、値上げの品目数は帝国データバンクの調査(2026年9月30日発表)、日本の制度は政府の答弁書(2025年6月)、フランスの制度はフランス経済・財務省の案内に基づきます。店の話は、私の店(3店舗)での実感で、メーカーのお菓子・飲み物・日用品などの話です。2026年10月27日時点の情報です。
第1章:ニュース——ステルス値上げは9割が実感、気づくのは「店頭」
9割が実感、気づくのは「店頭で手に持ったとき」
マーケティングリサーチ会社のマクロミルが、2026年9月17日に「ステルス値上げ」の調査を公開しました。全国の18〜79歳を対象に、8月31日〜9月1日にインターネットで聞いたものです。10月には、日本経済新聞と日経MJも、この調査を取り上げました。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| ステルス値上げを実感している | 90.2%(「頻繁に感じる」は46.1%) |
| 気づくタイミング(いちばん多い) | 店頭で手に持ったとき 55.0% |
| 気づくタイミング(次に多い) | 開封したとき 46.6%、実際に食べている・使っているとき 42.4% |
| 量のほかに、ステルス値上げと感じる変化 | サイズ・厚みの縮小 49.7%、具材の減少 37.2% |
| ステルス値上げがきっかけで、買う商品を替えた・買い控えた | 72.1% |
| 仕様の変更による、企業イメージの悪化(計) | 64.7% |
※マクロミルの調査の公開ページに基づきます。報道によると、調査の対象は3,000人です。
注目したいのは、いちばん多いのが「店頭で手に持ったとき」だということです。開けたときでも、食べたときでもない。棚から商品を取った、その瞬間です。
報道が伝えた、もう3つの数字
公開ページにない数字も、報道(マイナビニュース)が伝えています。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 気づきやすい商品 | スナック菓子 59.7%、チョコレート・クッキー・ビスケット 49.4%、せんべい・米菓類 36.7% |
| 値上げのとき、どちらがいいか | 値段が上がっても量を保ってほしい 53.0%、量が減っても値段を保ってほしい 47.0% |
| 値段を保つための仕様の変更で、許せないもの | 容器の底上げ・二重構造化 59.6%、原材料のグレードダウン 52.5%、具材の減少 50.2% |
※2026年9月17日のマイナビニュースの報道に基づきます。
9月の値上げは4,965品目、「実質値上げ」も数に入る
値上げそのものも、続いています。帝国データバンクの調べでは、主な食品メーカー195社の飲食料品の値上げは、2026年9月が4,965品目で、今年いちばん多い月でした。10月も3,153品目。今年の合計は、判明している分だけで2万187品目となり、2年続けて2万品目を超えました(9月30日の発表)。
この数には、値段を据え置いて内容量を減らす「実質値上げ」も含まれています。値札が変わる値上げと、値札が変わらない値上げ。お客様の財布から見れば、どちらも値上げです。
第2章:「小さくなった?」から「仕方ないよねー」へ
いちばん言われたのは、物価が上がり始めたころ
量が減ったことを、店で言われる。それは今も変わりません。ただ、言われ方は変わってきました。

物価が上昇するようになったころが、いちばん「小さくなった?」「量が減った?」の声が多かったですし、ストレスを店側に吐くような物言いも多かったです。今は、こちらから「値段据え置きなんですが、量が少し減っちゃいました」って声をかけても、「仕方ないよねー」と返されるようになりました。
| 時期 | 店で聞こえる言葉 |
|---|---|
| 物価が上がり始めたころ | 「小さくなった?」「量が減った?」。ストレスを店にぶつけるような言い方も多かった |
| 今 | こちらから量が減ったと伝えると、「仕方ないよねー」 |
カテゴリーで、差はない
調査では、気づきやすい商品のトップはスナック菓子でした。でも、店で言われる商品に、カテゴリーの差はありません。もう、ほぼ全商品で、値上げか少量化がされているからです。このカテゴリーの商品だから言われて、別のカテゴリーだと言われない、なんてことはない。
値上げは「いつものこと」になってきた
酒税の記事とたばこの記事で、10月1日の値上げのあと、「値上がりしましたね」と声をかけても、仕方ないと受け入れている方が多い気がする、と書きました。鶏の記事では、プライスカードが変わるたびに「何でも値上がりするね」という声が多い話を書いています。
値上げも、量の見直しも、お客様の中で「いつものこと」になってきているのだと思います。だから、こちらから伝えれば、「仕方ないよねー」で受け止めてもらえる。問題は、こちらが伝える前に、お客様が気づいたときです。
第3章:値上げのほうが、圧倒的に売りやすい
買うときに分かるか、買ったあとに分かるか
値上げと、量を減らすのと、売る側としてはどちらが売りやすいか。答えは、はっきりしています。

圧倒的に、値上げのほうが売りやすいです。値上げやパッケージが小さくなった場合は、購入するときに、買う・買わないの判断ができます。でも、容器やパッケージはそのままで内容量が減ったパターン、成分表示などで記載されただけのものは、購入するときに判断できない。後から、クレームというか、不満を現場にぶつけられるんです。騙しのような販売方法は、現場にもストレスがたまります。
3つの変わり方を、並べてみます。
| 変わり方 | 買うときに分かるか | 不満が出るのは |
|---|---|---|
| 値段が上がる | 分かる(値札が変わる) | 買う前。買うか買わないかを、お客様が自分で決められる |
| パッケージが小さくなる | 分かる(見た目が変わる) | 買う前。同じく、お客様が自分で決められる |
| 容器もパッケージもそのままで、中身だけ減る | 分からない(表示の数字だけが変わる) | 買ったあと。そして、その不満が店に来る |
お客様の答えは半々、売る側の答えははっきり
調査では、値上げのとき「値段が上がっても量を保ってほしい」が53.0%、「量が減っても値段を保ってほしい」が47.0%でした。お客様の答えは、ほぼ半々です。量が減ってもいい、という人も、半分近くいる。
でも、売る側の答えは、はっきりしています。値上げのほうが、圧倒的に売りやすい。この差は、値段と量のどちらが大事か、では説明できません。分かれ目は、買うときに分かるか、買ったあとに分かるかです。量が減ってもいい人も、減ったことを知ったうえで買うなら、納得して買える。知らずに買って、あとで気づくと、不満になる。
6割が「許せない」のは、見た目で分かりにくくする変化
調査で、値段を保つための仕様の変更のうち、「許せない」がいちばん多かったのは、容器の底上げ・二重構造化(59.6%)でした。中身が減ったことを、見た目で分かりにくくする変化です。
見た目で分かりにくくする変化が、いちばん許されていない。騙しのような販売方法は現場にもストレスがたまる、という売場の実感と、同じ向きの数字だと思います。
分かりやすい値段は、自分で決められる
ニトリの記事で、「358円の物を30円引き」は響かず、「125円の物を100円」は響く、と書きました。お客様は、分かりやすい値段に反応します。
値上げも、同じだと思います。値札が上がるのは、うれしいことではありません。でも、分かりやすい。分かりやすいから、お客様が自分で「買う」「買わない」を決められる。決めたのが自分なら、あとから不満は残りにくい。
第4章:気づいたお客様は、どう動くか——替える、買わない、来なくなる
替える>買わない>来なくなる>気にしない
量が減ったことに気づいたお客様は、そのあとどう動くのか。

別の商品に替える、買わなくなる、来店動機を失う、気にしない。体感だと、この順かなーって思います。
| 順 | お客様の動き | 店から見ると |
|---|---|---|
| 1 | 別の商品に替える | 売れる商品が、ほかの商品に移る |
| 2 | その商品を買わなくなる | その商品の売上が消える |
| 3 | 来店動機を失う | 店に来る理由が、ひとつ減る |
| 4 | 気にしない | 変わらない |
調査でも、ステルス値上げがきっかけで、買う商品を替えたり買い控えたりした人は、72.1%でした。私の体感でも、いちばん多いのは替えることです。ユニクロの記事で、お菓子のように代わりがきく商品は、値段が上がると低価格の商品に寄っていく、と書きました。量が減ったときも、まず起きるのは、同じ「替える」です。
重いのは、3番目
3番目の「来店動機を失う」は、ほかの2つと重さが違います。
1番目と2番目は、まだ店に来てくれている動きです。グミの記事で、チョコが高くなって、本当はチョコが欲しいお客様がグミを選ぶ話を書きました。替える先が店の中にあれば、売上は店に残ります。
でも、来店の動機を失うと、店に来る理由そのものが減ります。「近いから」以外の理由の記事で、お客様がその店を選ぶ理由を3つ言えるか、と書きました。あの商品があるから寄る。その「あの商品」の中身が、黙って減る。店に来る理由のひとつが、静かに消えていきます。
調査では、ステルスの仕様の変更で企業のイメージが悪くなる、という答えが64.7%ありました。ただ、レジに立っていると、不満が向かう先は、メーカーだけではありません。
第5章:その不満は、メーカーより店に来る
気づく場所は、店の棚の前

メーカーに不満をぶつけるより、店にぶつけるほうが多いんじゃないかなーって思います。メーカー側がどれだけ対応しているかは、わからないですけど。
調査で、ステルス値上げに気づくタイミングのトップは「店頭で手に持ったとき」(55.0%)でした。気づくのは、店の棚の前です。そして、そこにいるのは、メーカーの人ではなく、店の人です。
量を決めたのは、店ではありません。でも、お客様から見れば、その商品を売っているのは店です。不満は、いちばん近くにいる人に向かいます。
日本では、明示するかどうかは事業者の判断
では、量が減ったことは、誰が知らせるのか。日本には、決まった仕組みはありません。
2025年6月、ステルス値上げについての国会議員の質問に、政府が答弁書で答えています。商品の容量や重量を変えたときに、その旨の表示を求めるガイドラインは「承知していない」。容量や重量の変更を明示するかどうかは、「事業者の判断に委ねられる」。
内容量そのものは、食品であれば表示のルールで書くことになっています。だから、量が変わったことは、表示の数字には出ています。でも、表示の数字が変わっただけでは、買うときに判断できない。それが、現場の実感です。
フランスでは、知らせるのは売場の役目
海外には、知らせる役目を売場に置いた国があります。
フランスでは2024年7月から、量が減って、値段が変わらないか上がった商品について、食品や日用品を扱う売場面積400平方メートル超の店に、お知らせを出すことを義務づけました。商品のすぐ近くに、「この商品は、量がXからYに減り、単位あたりの値段が○%(または○ユーロ)上がりました」という内容を、量が変わった商品の販売が始まってから2か月のあいだ掲示します。
フランスの経済・財務省は、この売り方を、合法ではあるものの、値上がりが買う時点では気づきにくい、と説明しています。お知らせを置く場所は、商品のすぐ近く。買う前に分かるように、ということです。
日本の店に、その決まりはありません。それでも、私の店では、こちらから先に声をかけることがあります。
第6章:見た目そのままで中身だけ減った商品は、発注を絞る
トラブルの原因になるから、数を絞る
では、店は、ステルス値上げの商品をどう扱っているのか。私の店では、容器やパッケージはそのままで内容量が減ったパターンの場合は、発注を抑えたり、採用をやめたりします。トラブルの原因になるからです。
(「採用」は、その商品を店で扱うと決めることです)
値上げした商品なら、お客様は値段を見たうえで買えます。でも、見た目そのままで中身だけ減った商品は、売れるほど、あとから不満が来る場面も増えます。だから、数を絞る。扱うのをやめることもあります。
「置かない」も、店の判断
セリアの記事で、「ないものは競合他社で買ってもらえばいい」は、コンビニにも要る、と書きました。商品をやめる判断は、ふつうは売れ行きや廃棄で決めます。でも、中身の減り方も、やめる理由になります。お客様の不満は、売れ行きの数字には出ないからです。
適正な値上げの記事では、変えられない外側を受け入れて、変えられる内側に集中する、と書きました。商品の量を決めるのは、メーカーです。店には変えられません。店が変えられるのは、何をどれだけ置くかと、どう伝えるかです。
第7章:先に伝える。それでも来たら、謝る
先に伝えると、「仕方ないよねー」
第2章の話に戻ります。後から気づかれると、不満は店に来ます。こちらから先に伝えると、今は「仕方ないよねー」と返ってくる。
「値段据え置きなんですが、量が少し減っちゃいました」。この一言は、フランスの売場のお知らせと、同じ役目をしているのだと思います。お客様が、買うときに知ることができる。知ったうえで買うなら、それは、お客様が自分で決めた買い物です。
不満を言われたら、謝る
それでも、後から不満を言われることはあります。そのとき、スタッフはどう答えるのか。

腑に落ちないけど、謝るしかないかなーって。
量を減らしたのは、店ではありません。だから、腑に落ちない。それでも、お客様から見れば、その商品を売ったのは店です。だから、謝るしかない。
言い方が強いときの受け止め方と、店長やオーナーが盾になる話は、店の空気を守る記事に書いています。腑に落ちないまま謝る役目を、スタッフだけに背負わせないことも、店の仕事だと思います。
店にできる3つのこと
| やること | 中身 |
|---|---|
| ① 先に伝える | 量が減った商品は、こちらから声をかける(「値段据え置きなんですが、量が少し減っちゃいました」) |
| ② 発注を絞る | 容器やパッケージはそのままで中身だけ減った商品は、発注を抑える。扱うのをやめることもある |
| ③ 謝る | それでも不満を言われたら、腑に落ちなくても謝る |
量は、店では変えられません。でも、お客様が買うときに知ることができるかどうかは、店でも少し変えられます。
よくある質問(FAQ)
Q1. ステルス値上げとは、何ですか?
値段を据え置いたまま、内容量を減らすなどして、実質的に値上げすることです。マクロミルの調査では、量のほかに、サイズや厚みの縮小、具材の減少も、ステルス値上げと受け止められています。帝国データバンクの値上げの品目数にも、値段を据え置いて内容量を減らす「実質値上げ」が含まれています。
Q2. ステルス値上げを実感している人は、どのくらいいますか?
マクロミルの調査(2026年9月17日公開)では、90.2%が実感しています。気づくタイミングは「店頭で手に持ったとき」が55.0%でいちばん多く、「開封したとき」46.6%、「実際に食べている・使っているとき」42.4%が続きます。
Q3. ステルス値上げに気づかれやすい商品は、何ですか?
報道によると、スナック菓子が59.7%でいちばん多く、チョコレート・クッキー・ビスケットが49.4%、せんべい・米菓類が36.7%でした。ただ、私の店では、言われる商品にカテゴリーの差はありません。ほぼ全商品で、値上げか少量化がされているからです。
Q4. 値上げと、量を減らすのと、どちらが売りやすいですか?
売る側としては、圧倒的に値上げです。値上げやパッケージが小さくなった場合は、買うときに、買う・買わないの判断ができます。容器やパッケージはそのままで内容量が減った商品は、買うときに判断できず、後から不満を現場にぶつけられます。
Q5. 量が減ったことに気づいたお客様は、どう動きますか?
私の体感では、別の商品に替える、買わなくなる、来店動機を失う、気にしない、の順です。マクロミルの調査でも、ステルス値上げがきっかけで、買う商品を替えたり買い控えたりした人は72.1%でした。このうち、店に来る理由そのものが減るのは、来店動機を失うときです。
Q6. ステルス値上げの不満は、誰に向かいますか?
メーカーより、店にぶつけられることのほうが多いのではないかと感じています。気づくタイミングのトップは「店頭で手に持ったとき」で、そこにいるのは店の人です。量を決めたのは店ではなくても、お客様から見れば、売っているのは店です。
Q7. 量を減らしたことを、知らせる決まりはありますか?
日本では、容量や重量の変更を明示するかどうかは、事業者の判断に委ねられています(2025年6月の政府の答弁書)。内容量そのものは、食品であれば表示のルールで書くことになっています。フランスでは2024年7月から、売場面積400平方メートル超の店に、量が減った商品のすぐ近くでのお知らせが義務づけられています。
Q8. ステルス値上げの商品を、コンビニの店はどう扱っていますか?
私の店では、容器やパッケージはそのままで内容量が減った商品は、発注を抑えたり、扱うのをやめたりします。トラブルの原因になるからです。値上げした商品なら、お客様は値段を見たうえで買えますが、中身だけ減った商品は、買うときに判断できません。
Q9. 量が減ったことで不満を言われたら、どうしますか?
腑に落ちなくても、謝ります。量を減らしたのは店ではありませんが、お客様から見れば、その商品を売ったのは店だからです。後から気づかれる前に、こちらから「値段据え置きなんですが、量が少し減っちゃいました」と伝えると、今は「仕方ないよねー」と返ってきます。
Q10. この記事の情報の出典は?
ステルス値上げの実感・気づくタイミング・量のほかの変化・買い替えや買い控え・企業イメージは、マクロミルの調査の公開ページ(2026年9月17日公開)に基づきます。気づきやすい商品・値上げのときの希望・許せない仕様の変更は、2026年9月17日のマイナビニュースの報道に基づきます。値上げの品目数は帝国データバンクの「食品主要195社」価格改定動向調査(2026年9月30日発表)、日本の制度は衆議院の質問主意書に対する政府の答弁書(2025年6月27日)、フランスの制度はフランス経済・財務省の案内に基づきます。店の話は、私の店(3店舗)での実感です。
まとめ:見えない値上げの不満は、店に来る
値段はそのままで中身が減るステルス値上げは、9割(90.2%)が実感していて、気づくのは「店頭で手に持ったとき」がいちばん多い。私の店で「小さくなった?」「量が減った?」と言われることがいちばん多かったのは、物価が上がり始めたころで、ストレスを店にぶつけるような言い方も多かった。今は、こちらから伝えると「仕方ないよねー」と返ってくる。言われる商品に、カテゴリーの差はありません。売る側としては、値上げのほうが圧倒的に売りやすい。値上げやパッケージの縮小は、買うときに判断できる。でも、容器もパッケージもそのままで中身だけ減った商品は、買うときに判断できず、不満は後から店に来る。気づいたお客様は、替える、買わない、来店動機を失う、気にしない、の順に動き、店に来る理由そのものが減るのは、来店動機を失うときです。日本では、量の変更を明示するかどうかは事業者の判断で、フランスは売場にお知らせを義務づけました。店にできるのは、先に伝える、発注を絞る、それでも来たら謝ること。量は店では変えられません。でも、お客様が買うときに知ることができるかどうかは、店でも少し変えられます。
この記事の要点
- ステルス値上げは9割(90.2%)が実感。気づくのは「店頭で手に持ったとき」が最多の55.0%(マクロミル)
- 9月の飲食料品の値上げは4,965品目で今年最多。数には、値段据え置き・内容量減の「実質値上げ」も入る(帝国データバンク)
- 「小さくなった?」「量が減った?」と言われたのは、物価が上がり始めたころがいちばん多かった
- 今は、こちらから量が減ったと伝えると「仕方ないよねー」。言われる商品にカテゴリーの差はない
- 売る側としては、値上げのほうが圧倒的に売りやすい。値上げやパッケージの縮小は、買うときに判断できる
- 容器もパッケージもそのままで中身だけ減った商品は、買うときに判断できない。不満は後から現場に来る
- 気づいたお客様は、替える>買わない>来店動機を失う>気にしない(体感)。来店動機を失うと、店に来る理由そのものが減る
- 不満は、メーカーより店にぶつけられることのほうが多いと感じる。気づくタイミングの最多も「店頭で手に持ったとき」
- 日本では、量の変更を明示するかは事業者の判断(政府の答弁書)。フランスは2024年7月から売場でのお知らせを義務づけた
- 店にできるのは、先に伝える、見た目そのままで中身だけ減った商品の発注を絞る、それでも来た不満には謝ること
次のアクション
- [ ] 量が減った商品を、品出しとレジのスタッフで共有する
- [ ] お客様に伝える一言をそろえる(例:「値段据え置きなんですが、量が少し減っちゃいました」)
- [ ] 容器やパッケージはそのままで中身だけ減った商品は、発注の数を見直す
- [ ] 値段が上がった商品と、中身が減った商品を分けて、売れ方の変化を見る
- [ ] お客様が替える先の商品が、自分の店の棚にあるかを確かめる
- [ ] 量の不満を言われたときの受け止め方を、スタッフと話しておく
- [ ] 腑に落ちないまま謝ったスタッフに、店長やオーナーがひと声かける
このブログ内の関連記事
値上げを、お客様はどう受け止めているか
- 営業利益率19%のユニクロと、「価値を変えずに上げた値段に客は戻らない」|値引きでロスを減らすのはありがたい。でも、コンビニの役割は高くても満足してもらうこと
- 358円の30円引きより、125円を100円に|安くすれば何倍も売れる。でも、ついで買いはついてこない——ニトリの価格哲学と、ギバーの店
- 10月の酒税一本化で、コンビニのビール棚はどう変わる?|駆け込みは起きない。起きるのは「定番の決め直し」——9月の準備と10月の棚替え実務
- 2026年10月たばこ値上げ|加熱式中心の対象銘柄・新価格まとめとコンビニ「9月の買いだめ需要」対応
- 鶏肉260万トンで2年連続の首位|部活帰りは、揚げ物からサラダチキンへ——レジから見える鶏の時代は、安さより健康で動いている
替える、買わない、来なくなる
- グミがなぜ売れるのか|「本当はチョコが欲しい」物価高が変えた菓子需要と働く世代の噛み応えグミ
- 日販が5万円上がると、店は崩れ始める|京急ストア社長「駅前にあぐらをかいていた」——「近いから」以外の理由を3つ言えるか
- 物価高時代のコンビニ戦略|来店数×即買い設計で勝つ【2026年版】
置く判断と、謝る現場
- AI発注で空いた1日1時間は、人件費に回る|「ないものは競合他社で買ってもらえばいい」は、コンビニにも要る——セリアに学ぶ、置かない勇気とやめる判断
- 適正な値上げをしないことは、人を安く使うことにつながる|物価高時代の「価格・粗利・賃金」の地続きの構造
- 理不尽な言葉が飛ぶ現場で、店の空気を守る|コンビニ接客の「負の連鎖」を断ち「感謝の連鎖」をつくる仕組み
- コンビニ接客の考え方|「お客様は神様」の誤解・カスハラ問題・対等な接客を現役オーナーが解説
参考|公式情報
- マクロミル|「ステルス値上げ」で72%が買い控え・他社切替経験あり。企業に求められる“脱ステルス”対応:2026年9月17日公開。全国の18〜79歳に8月31日〜9月1日にインターネットで調査。ステルス値上げの実感は90.2%(「頻繁に感じる」46.1%)、気づくタイミングは「店頭で手に持ったとき」55.0%が最多、切り替えや買い控えは72.1%、企業イメージの悪化・計は64.7%
- 帝国データバンク|「食品主要195社」価格改定動向調査―2026年10月(PDF):2026年9月30日発表。10月の飲食料品の値上げは3,153品目で、2026年内では9月(4,965品目)に次いで2番目に多い。2026年の判明分は2万187品目で2年連続の年2万品目台。価格据え置き・内容量減による「実質値上げ」も対象に含む
- 衆議院|いわゆるステルス値上げの実態把握及び制度的対応に関する質問に対する答弁書(2025年6月27日):容量や重量を変えたときにその旨の表示を求めるガイドラインは「承知していない」、変更を明示するかどうかは「事業者の判断に委ねられる」。消費者物価指数には、価格が同じでも容量の減少を反映している
- 消費者庁|食品表示基準(平成27年内閣府令第10号・PDF):容器包装に入れた一般用加工食品を売るときの表示事項(第3条・横断的義務表示)。内容量は、計量法の特定商品は同法の規定により、それ以外の食品は内容重量・内容体積・内容数量で表示する
- フランス経済・財務省|réduflation(量の減った商品の値上がり)を知らせる新しい義務(2024年7月4日):2024年7月1日から、売場面積400㎡超の店に、量が減って値段が変わらないか上がった商品のすぐ近くで、「量がXからYに減り、単位あたりの価格が○%(○ユーロ)上がった」旨を、販売開始から2か月掲示する義務。この売り方は合法だが、買う時点では値上がりに気づきにくいと説明
値札が変われば、お客様は自分で決められます。買うか、買わないか。
でも、中身だけが変わると、決めるのは、買ったあとになります。そして、その気持ちは、いちばん近くにいる店に届く。
だから、先に伝える。見た目そのままで中身だけ減った商品は、数を絞る。それでも届いた不満には、腑に落ちなくても謝る。量を決めるのは店ではないけれど、お客様の前に立っているのは、店だからです。

