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定価販売の国に、値引きシールが増えている|日立の教訓「認知度16%」と、攻めと守りの発注——焼き魚弁当をカットしなかった話【現役オーナー】

hanapapa
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日立製作所が、白物家電事業を家電量販のノジマに売却します(2026年4月発表・1,100億円・報道ベース)。冷蔵庫や洗濯機の「日立」が、メーカーの手を離れる——それ自体が大きなニュースですが、私が釘付けになったのは、その手前にあったひとつの数字でした。

16%。

日立が事業を残すための最後の一手として2023年に導入した「指定価格制度」——量販店に店頭価格を指定して値引きを禁じ、代わりに売れ残りの返品に応じる仕組み——の、消費者認知度です(日経の2025年調査)。しかも16%の内訳は、「聞いたことがある」が12%で、内容を説明できる人はわずか4%だったといいます。

メーカーと量販店が60年代の「ダイエー・松下戦争」以来、何十年も価格の主導権を争ってきた。日立はついにその主導権を取り戻した。なのに——消費者は、その争いをほぼ知らなかった。指定価格で出した洗濯機は30万円を超え、お客様は値引きできる他社製品へ流れ、事業は成長軌道に戻らなかった。専門家の指摘は端的です。値引きなしで納得させる、独自の中身が足りなかった

これは家電の話に見えて、「値引きに頼らない売り方が成立する条件」の話です。そして——定価販売で成り立ってきたコンビニにとって、まったく他人事ではありません。

うちの業界の現実はこうです。ただでさえ利益率の低い商売なのに、値引きをすればさらに自分の首を絞める。でも、ある程度は値引きを前提に発注をしないと、売場を埋めて価値を引き出すことが難しくなってきている。この矛盾のあいだで、攻めと守りの発注をどうバランスさせるか——最終利益がいくら残るかは、そこにかかっています

  • ニュース整理——主導権を取り戻して、負けた話
  • コンビニは「定価販売の国」——だから他人事ではない
  • 値引きを「設計」する——見切りはピークの前に終わらせる
  • 焼き魚弁当を、カットしなかった話——店長との対話
  • PBとNB、クーポンの現在地——価格に見合う価値の実例
  • 攻めと守りのバランスに、最終利益はかかっている

※ニュースの内容は2026年8月13日時点の報道に基づきます。見切り・値引きの運用はチェーン・契約によってルールが異なります。本記事は一般的な考え方の整理であり、実務は必ずご自身のチェーンのルールに従ってください。


本記事の位置づけ|発注・売変シリーズの「値引きの設計と、定価で選ばれる棚」の実務記事

本記事は、見切りをピーク前に終わらせる設計・売れない商品をカットしない判断・PBとNBの使い分け・アプリクーポンの現在地を、日立の指定価格制度のニュースを入り口に、現役オーナーの実務で整理した解説記事です。以下の関連記事と組み合わせると、値引き・廃棄から価格の哲学・発注の育成まで全体像が掴めます。

🏷 値引きと廃棄の設計

⚖ 価格と価値を考える

🧭 売上の中身と、人を育てる発注

「値引きと廃棄の設計 → 価格と価値 → 売上の中身と育成」の順で読むと、値引きを場当たりでなく設計として使いこなす視点が身につきます。

🎥 この記事の要点を動画にまとめました(音声解説つき)。結論から知りたい方はまずこちらをどうぞ。

🎧 もっと深く:対話型の音声解説(約18分)
この記事をもとにAIが対話形式で深掘りした音声です(Gemini Notebook〈旧NotebookLM〉で生成)。運転中や作業中の「ながら聞き」にどうぞ。

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第1章:ニュース整理——主導権を取り戻して、負けた話

指定価格制度という「最後の一手」

経緯を短く整理します。日立は2009年3月期の巨額赤字以降、17年かけて事業を社会インフラへ入れ替えてきました。白物家電は「非中核」とされながらも、7,000人の雇用と創業の地の工場を抱える、最後の消費者向け事業。それを残すための一手が、2023年導入の指定価格制度でした。

店頭価格をメーカーが指定し、値引きを禁じる。代わりに売れ残りは返品に応じる(この返品応需とセットにすることで、独占禁止法上も成立する仕組みです)。狙いは、店頭の安売り合戦から抜けて利益率を高め、毎年わずかな改良品を出し続ける消耗戦をやめて、開発に時間と資金を回すこと。2020年に先行導入したパナソニックも、オンライン業者の安売り競争と一線を画せる利点を訴えてきました。筋の通った戦略です。

60年争って、たどり着いた場所

価格の主導権をめぐる争いは古く、1960年代の「ダイエー・松下戦争」——メーカー希望価格を下回る値付けをしたダイエーへの出荷停止に始まる30年の製販抗争——は、消費者の支持を得たダイエー側の勝利に終わりました。主導権は量販店へ移り、その量販店もやがてオンライン業者に脅かされ、そして今回、日立はメーカーとして主導権を取り戻した——のに、成長軌道には戻せませんでした。

指定価格の洗濯機は30万円超。お客様は、値引きできる他社製品へ流れました。近畿大の大内秀二郎教授は「値引きなしで納得させる独自の製品開発が十分でなかった」と指摘しています。そして認知度16%(説明できる人は4%)という数字が示すのは、もっと残酷な事実です。

作り手と売り手が価格をめぐって争っているあいだ、お客様は値札しか見ていなかった。

主導権がどちらにあるかは、お客様には関係ない。その価格以上の価値があるかどうかが、すべてだった——この教訓を胸に、うちの売場の話に降りていきます。


第2章:コンビニは「定価販売の国」——だから他人事ではない

定価で選ばれ続けてきた業態

コンビニは、まさに定価販売で成り立ってきた業態です。スーパーより高いことをお客様は知っていて、それでも「近い・速い・確実」という価値に対して定価を払ってくださる。ドラッグストア競合の記事で書いたとおり、この「価格以外の価値」こそがコンビニの土台でした。言ってみれば、コンビニは業態まるごと指定価格制度のようなものなのです。

その国に、値引きシールが増えている

ところが近年、その定価の国の風景が変わりつつあります。見切りシール。アプリクーポン。ロス削減目的の値引き販売の広がり。ひとつひとつには合理的な理由があります(食品ロス削減は社会の要請でもあります)。でも引いて見れば——定価を支えてきた価値が、少しずつ薄まっている局面とも読めます。

そしてここに、経営の板挟みがあります。

  • 値引きは、首を絞める——ただでさえ利益率の低い商売です。粗利30%の商品を2割引けば、利益はほぼ消えます
  • でも、値引きを前提にしないと棚が埋まらない——おにぎりの記事で書いたとおり、販売数量が戻らない今、廃棄ゼロを狙って発注を絞れば棚はスカスカになり、痩せた売場は次の来店を削ります。売場を埋めて価値を引き出すには、ある程度の値引き(見切り)を織り込んだ発注が要る
  • 店を小さくすることはできない——売場が広すぎるなら縮めれば、という理屈は、現実には毛頭無理な話です。什器も契約も動かせない以上、埋めるしかない

つまり問いは「値引きするか、しないか」ではありません。「なし崩しの値引き」に流されるか、「設計された値引き」で攻めるか——です。


第3章:値引きを「設計」する——見切りはピークの前に終わらせる

うちの見切り運用

うちの店の見切り(値引き販売)の考え方を、具体的に書きます。対象は弁当・おにぎり・日配・パン——賞味期限のある中食カテゴリーです。

核心はタイミングにあります。値引きを始めるのは、その商品の賞味期限の前に訪れる、最後の販売ピークの前。たとえば0時廃棄のおにぎりで、最後のピークが18〜19時なら——18時前に値引きを完了できる体制を作っておく。

なぜか。いちばんお客様がいる時間に、値引きされた状態で棚に並んでいてこそ、売り切れるからです。ピークが過ぎてから慌てて貼るシールは、もう見る人がいない。同じ20円引きでも、貼る時刻で結果がまるで違う。見切りは「最後の手段」ではなく、最後のピークという「最後のチャンス」に商品を再出発させる作業なのです。

金額は20円引き・20%あたりから始めて、ピーク後に残ってしまった場合に値引き率を上げていく——段階設計です。最初から深く引かない。浅い値引きで最後のピークにぶつけ、それでも残ったぶんだけ深くする。

副次効果——「棚の後ろ取り」への抑止力

この運用には、面白い副次効果があります。お客様の中には、賞味期限の新しいもの(棚の後ろの商品)から手に取る方が一定数います。それ自体は責められない行動ですが、店側から見ると、期限の近い商品ばかりが残っていく。

ところが、期限の近い商品に20円引きのシールが貼ってあると——手前の商品に、手に取る理由が生まれるのです。「新しさ」対「20円」の選択肢が提示され、手前から売れていく。見切りは廃棄を減らすだけでなく、棚の回転の順序を整える道具でもある。ここまで含めて「設計」だと思っています。

はなぱぱ
はなぱぱ

値引きのタイミングは、その商品の賞味期限前に訪れる、最後のピークの前です。0時廃棄のおにぎりで最後のピークが18時から19時なら、18時前に値引きを完了できる体制づくり。20円・20%あたりから始めて、ピーク後に残ってしまった場合に率を上げていく感じですね。それと、賞味期限の新しいもの——棚の後ろの商品から手に取るお客様も一定数いるので、見切りはその防止にも効いてくるんですよ。手前の商品に、選ばれる理由がつくので。


第4章:焼き魚弁当を、カットしなかった話——店長との対話

ある日の、店長からの報告

「攻めと守り」の判断は、日々こういう形でやってきます。ある日、店長から届いた報告です(一部要約)。

米飯:西京焼きのお弁当、白飯、オムライスは、数は少ないですが金額が高いため廃棄高となりました。焼き魚のお弁当は動きが良くないため、カットしました。気温も上がり、冷やし麺・サラダ・サンドイッチなど手軽にさっぱり食べられるものへ数量を調整して発注していきます。

完璧な「守り」の判断です。廃棄高の出た高単価弁当を切り、季節に合わせて軽い商品へシフトする。データも見ているし、季節も読んでいる。発注担当として、何も間違っていません

私の返信——「カットではなく、数量を抑えて継続」

それに対して、私はこう返しました(こちらも要約です)。

とても良い視点で分析できていると思います。ただ、現在うちの大きいサイズのお弁当は、どうしてもボリューム系が中心になっています。そのため、焼き魚や西京焼きなどの幕の内系は、お客様にとって選択肢として必要なカテゴリーだと考えています。毎日廃棄が出るようでは見直しが必要ですが、少ない発注数でも継続して品揃えすることには意味がある。継続することで「こういうお弁当が欲しかった」という新たなお客様を獲得できる可能性もあります。すぐにカットするのではなく、まずは数量を抑えながら販売を継続し、動向を確認していきましょう。

棚の幅は、「定価で選ばれる価値」の部品

なぜカットに待ったをかけたのか。ここが、日立の教訓とつながるところです。

売れない商品を切るのは、守りとして正しい。でも、ボリューム系ばかりの弁当棚から幕の内系が消えたとき、「あっさりした弁当が欲しい」お客様にとって、うちの店は『選択肢のない店』になります。その方は文句を言いません。黙って、別の店に行くだけです。認知度16%の話と同じで——お客様は店側の事情(廃棄高・値入れ)を知らないし、関係がない。棚に欲しいものがあるかどうかが、すべてなのです。

値引きなしで納得させる中身。コンビニにとってそれは、独自開発の洗濯機ではなく、「今日も欲しいものがあった」という棚の幅と鮮度です。だから、攻め(=枠を守る発注)は、単品の損益だけでは判断できない。単品では赤字でも、棚としては黒字——そういう商品が、確かにあるのです。

もうひとつ、この対話で大事にしたのは伝え方です。頭ごなしに「戻せ」ではなく、まず「とても良い視点」と分析を認めてから、判断の軸(選択肢の維持・最小ロット継続・動向確認)を渡す「一緒に考える」育成法で書いたとおり、答えではなくレンズを渡せば、次からは店長が自分で「これは切っていい商品か、枠として残す商品か」を考えられるようになります。

はなぱぱ
はなぱぱ

店長の判断も、守りとしては正しいんですよ。廃棄高が出ている高単価弁当を切って、季節に合わせて軽いものに振る——発注の教科書どおりです。ただ、幕の内系が棚から消えると、「ああいうお弁当が欲しい」お客様にとって、うちは選択肢のない店になってしまう。だから「カット」ではなく「数量を抑えて継続」。うちの店長たちは日々こうやって悪戦苦闘しながら報告と相談をくれるので、こちらも判断の理由ごと返すようにしています。この積み重ねが、たぶん棚の実力になっていくんだと思います。


第5章:PBとNB、クーポンの現在地——価格に見合う価値の実例

PB圧勝の棚で、「おかめ納豆」は倒れない

記事は、ノジマの製販一体やヤマダの自前開発強化を「小売がメーカーになる動き」と伝えていました。その意味では、コンビニは製販一体の大先輩です。PB(プライベートブランド)は棚の主役になって久しい。

実際、うちの棚でもPBは強い。当然安いので、圧倒的にPBを選ぶお客様が多いです。でも——全部がPBに置き換わるかというと、そうはならない。たとえば「おかめ納豆」。あれはPBでどうにかできるレベルの話ではありません。知名度、味、価格——どれをとってもPB泣かせです。安いPB納豆が隣に並んでいても、指名で選ばれ続ける。

これこそ、日立の教訓の裏返しの実例だと思うのです。価格に見合う価値——というより、価格差を無効化するほどの価値——を持った商品は、値引き合戦の外側で生きられる。NBメーカーの立場で言えば「ブランドを磨き続けた商品だけが、PBの時代を生き残る」。棚を預かる私たちの立場で言えば、PBで利益を取り、本物のNBで信頼を取る——両方あってこその棚です。

クーポン客の変化——「一直線化」が教えてくれること

もうひとつ、値引きをめぐる現在地として書いておきたいのが、アプリクーポンのお客様の変化です。

以前は、買い物のついでにクーポンが使えるなら1点追加——という使われ方が中心でした。常連さんのちょっとしたお得。ところが今は、クーポン対象の商品だけを買いに来る方が明らかに増えました。ついで買いは全くせず、目的の商品に一直線に行き、それだけを持ってくる。極端な例では、店に入ってきてレジでクーポン画面を出し、「この商品どこにありますか」と聞いて、それだけ持って帰る——そんな場面すらあります。

正直、「このやり方がどうなのか」と思うことはあります。ただ、お客様を責める話ではありません。物価高の中で、皆さん真剣に家計を守っている。責めるのではなく、構造として理解しておくべきなのです。すなわち——値引きが来店理由になると、ついで買いが死ぬ6月の業界統計の記事で見た「ついで買いカテゴリーの落ち込み」と、クーポン客の一直線化は、同じ時代の絵です。値引きで客数を買うことはできる。でもその客数は、昔の客数と同じ中身ではない——ここを見誤ると、販促の損益は合わなくなります。

はなぱぱ
はなぱぱ

PBは当然安いので、圧倒的にそちらを選ぶお客様が多いです。でも「おかめ納豆」なんかは、PBでどうにかできるレベルの話じゃない。知名度、味、価格、どれをとってもPB泣かせですね。それとクーポンは、以前は買い物のついでに1点追加みたいな使われ方だったのが、今は対象商品だけを買いに来る方がとても多い。店に入ってきてレジでクーポンを出して、「この商品どこにありますか」と聞いて、それだけ持って帰る——このやり方がどうなのかとも思いますけど、それが今のリアルなんですよね。


第6章:攻めと守りのバランスに、最終利益はかかっている

発注→売変→廃棄は、ひとつながりの設計

ここまでの話を、一枚につなげます。

  • 攻めの発注:売場を埋め、選択肢の幅を守り、機会損失を取りにいく。焼き魚弁当を最小ロットで残すのも攻め
  • 守りの発注:廃棄高を見て絞る。季節と客層で構成を変える。店長の判断も守り
  • 売変(値引き):攻めた分の着地装置。最後のピーク前に、段階設計で。なし崩しではなく計画的に(売変に「予算」を持たせる考え方は売変予算の記事に書きました)
  • 廃棄:それでも残った分。ゼロを狙わず、投資とのバランスで許容する

発注・売変・廃棄は別々の作業ではなく、「攻めた球を、どこで着地させるか」というひとつながりの設計です。攻めだけなら廃棄が利益を食う。守りだけなら棚が痩せて客数が減る。最終利益がいくら残るかは、この振り子をどの位置で止めるかにかかっている——毎日、全店で、この調整をやっているのがコンビニ経営です。

見切り待ちのお客様への、私の感覚

最後に、見切りシールの向こう側にいる方の話を。見切り待ちのお客様は、一定数います。シールの時間をなんとなく知っていて、その頃に来てくださる方。

正直な感覚を書くと——私はその方たちを、雑には扱えないと思っています。だってその方たちは、廃棄になるはずだった商品を、食べてくださる方なのです。店にとっては廃棄ロスの圧縮であり、社会にとっては食品ロスの削減であり、その方にとっては家計の防衛。誰も損をしていない。定価で買ってくださる方が店の土台であることは間違いない。でも、見切りシールの商品を選ぶ方も、この店の大事なお客様です。どちらのお客様にも、同じ顔で「ありがとうございます」と言える店でありたい——値引きの設計の最後には、その気持ちを置いています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 日立の白物家電のニュースの要点は?

日立製作所が2026年4月、白物家電事業を家電量販のノジマへ売却すると発表しました(報道ベースで1,100億円・雇用7,000人)。事業を残すための一手だった「指定価格制度」(値引き禁止+返品応需)は、指定価格の洗濯機が30万円を超えてお客様が他社へ流れ、成長軌道に戻せませんでした。制度の消費者認知度は16%、内容を説明できる人は4%にとどまったと報じられています。

Q2. 指定価格制度とは何ですか?

メーカーが量販店の店頭価格を指定して値引きを禁じ、代わりに売れ残りの返品に応じる仕組みです(返品応需とセットにすることで独占禁止法上も成立します)。パナソニックが2020年、日立が2023年に導入しました。安売り合戦から抜けて利益率を高め、開発に資金を回す狙いでしたが、消費者には「価格以上の価値があるか」だけが判断基準でした。

Q3. 家電の話が、なぜコンビニに関係あるのですか?

コンビニは定価販売で成り立ってきた業態——いわば業態まるごと指定価格のような商売だからです。日立の教訓「価格の決定権ではなく、価格に見合う中身が勝敗を分ける」は、定価を支える価値(近さ・速さ・品揃え・鮮度)を磨き続けられるかという、私たちの日常の問いそのものです。

Q4. コンビニの見切り(値引き)は、いつやるのが良いのですか?

私の店では「賞味期限前に訪れる、最後の販売ピークの前」に完了させます。0時廃棄のおにぎりで最後のピークが18〜19時なら、18時前に値引き完了。いちばんお客様がいる時間に値引き状態で並んでいてこそ売り切れるからです。20円・20%程度から始め、ピーク後に残った分だけ率を上げる段階設計にしています。※運用ルールはチェーンにより異なります。

Q5. 値引きシールに、廃棄削減以外の効果はありますか?

あります。棚の後ろ(賞味期限の新しいもの)から取るお客様は一定数いますが、期限の近い手前の商品にシールが貼られると「新しさ」対「値引き」の選択肢が生まれ、手前から売れていきます。見切りは廃棄を減らすだけでなく、棚の回転の順序を整える道具でもあります。

Q6. 売れない商品は、すぐカットすべきですか?

単品の損益だけでは判断しないことをおすすめします。私の店では、廃棄が出ていた幕の内系弁当を「カット」ではなく「数量を抑えて継続」にしました。ボリューム系ばかりの棚から幕の内が消えると、あっさりした弁当が欲しいお客様にとって「選択肢のない店」になるからです。単品では赤字でも、棚としては黒字——選択肢の幅そのものが来店理由という商品はあります。

Q7. PBとNBは、どう使い分ければいいですか?

価格ではPBが圧倒的に選ばれますが、すべてがPBに置き換わるわけではありません。「おかめ納豆」のように、知名度・味・価格のどれをとってもPBが太刀打ちできないNBは、指名で選ばれ続けます。PBで利益を取り、本物のNBで信頼を取る——両方そろってこその棚だと考えています。

Q8. アプリクーポンは、店にとってプラスですか?

功罪両面あります。以前は「買い物のついでに1点追加」でしたが、今は対象商品だけを目的に来店し、それだけを買って帰る方が増えました。値引きが来店理由になると、ついで買いが生まれにくくなる——クーポンで買った客数は、以前の客数と同じ中身ではない、という前提で販促の損益を見る必要があります。

Q9. 見切り待ちのお客様には、どう接すればいいですか?

私は「雑には扱えない大事なお客様」だと考えています。廃棄になるはずだった商品を買ってくださる方であり、店の廃棄ロス圧縮・食品ロス削減・ご本人の家計防衛のどれにも適う存在です。定価のお客様も見切りのお客様も、同じ顔で「ありがとうございます」と言える店でいたいと思っています。

Q10. 結局、値引きとどう付き合えばいいのですか?

「なし崩しの値引き」と「設計された値引き」を区別することです。発注(攻めと守り)→売変(ピーク前・段階設計)→廃棄(投資として許容)をひとつながりの設計として持ち、値引きは攻めた発注の着地装置と位置づける。最終利益は、この振り子をどの位置で止めるかで決まります。本記事のニュース内容は2026年8月13日時点の報道に基づきます。


まとめ:値札の隣に、棚がある

日立は指定価格制度で価格の主導権を取り戻しましたが、事業は成長に戻らず、白物家電はノジマへ——制度の認知度は16%、説明できる人は4%でした。教訓は「価格の決定権ではなく、価格に見合う中身が勝敗を分ける」。定価販売の国・コンビニにとって、これは日常の問いです。利益率の低い商売で値引きは首を絞める。でも値引きを織り込んだ発注をしないと、棚が痩せて価値そのものが崩れる。だから答えは設計です。①見切りは「最後のピークの前」に完了させ、20円・20%からの段階設計で(棚の後ろ取りへの抑止という副次効果も)②売れない商品は単品損益で即カットせず、「選択肢の幅=定価で選ばれる価値の部品」として最小ロット継続も選ぶ(焼き魚弁当の対話)③PBで利益・本物のNBで信頼④クーポンの一直線化=値引きが来店理由になるとついで買いが死ぬ、を織り込む⑤見切り待ちのお客様は、廃棄を防いでくれる大事なお客様。攻めの発注と守りの発注、そして売変と廃棄はひとつながりの設計であり、最終利益がいくら残るかは、その振り子をどこで止めるかにかかっています

この記事の要点

  1. 日立は指定価格制度で価格の主導権を取り戻したが、成長に戻せず白物家電をノジマへ売却(2026年4月発表)
  2. 制度の認知度は16%・説明できる人は4%=主導権争いは消費者に届いていなかった
  3. 教訓=価格の決定権ではなく「価格に見合う中身」が勝敗を分ける
  4. コンビニは定価販売の国=業態まるごと指定価格。定価を支える価値の摩耗は他人事でない
  5. 値引きは首を絞める。でも値引き前提の発注がないと棚が痩せる=問いは「設計するかどうか」
  6. 見切りは「最後のピーク前」に完了・20円20%からの段階設計・棚の後ろ取り抑止の副次効果
  7. 単品赤字でも棚として黒字の商品がある=焼き魚弁当は「カット」でなく「最小ロット継続」
  8. PBで利益、本物のNB(おかめ納豆級)で信頼——両方そろって棚
  9. クーポン客の一直線化=値引きが来店理由になると、ついで買いが死ぬ
  10. 発注→売変→廃棄はひとつながりの設計。最終利益は振り子をどこで止めるかで決まる

次のアクション

  • [ ] 自店の見切り開始時刻が「最後のピークの前」に設定されているか確認する
  • [ ] 値引きを段階設計(浅く始めて残った分だけ深く)に変えられないか検討する
  • [ ] 廃棄高を理由にカットした商品のうち、「選択肢の幅」を担っていたものがないか見直す
  • [ ] 最小ロットで枠を残す候補(幕の内系など客層の受け皿商品)を店長と話し合う
  • [ ] クーポン販促の売上を「ついで買いがあったか」まで含めて振り返る
  • [ ] PB化された棚で、指名買いされ続けているNBを把握し、欠品させない
  • [ ] 売変と廃棄を「発注の着地装置」として月次でセットで振り返る

このブログ内の関連記事

値引きと廃棄の設計

価格と価値を考える

売上の中身と、人を育てる発注

参考|公式情報


60年におよぶ製販の主導権争いの結末が、認知度16%——お客様は、争いではなく値札を見ていました。でも、私たちはもうひとつ知っています。お客様が見ているのは、値札だけではない。値札の隣の、棚そのものです。

今日も18時前に、見切りのシールが貼られます。それは敗北の白旗ではなく、最後のピークに商品を再出発させる、設計された一手です。幕の内弁当は、今日も2つだけ発注されています。売れ残るかもしれない。でも、あの棚の幅が「この店に来れば何かある」を支えている。

攻めて、守って、着地させる。その振り子の先に、最終利益と——そして「今日も欲しいものがあった」というお客様の一日が、かかっています。

定価の国の店主として、今日も振り子の真ん中に立ちます。

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はじめまして、はなぱぱです。 コンビニ経営に携わって13年。 店舗での経験や経営者としての苦労、従業員教育の工夫などをまとめています。 経営者や店舗責任者はもちろん、従業員の方にもわかりやすく役立つ情報を発信していきます。
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